2026/09/12

投稿日 2026/09/12

虫垂炎の血液培養でEnterococcusが生えたときに術後の抗菌薬治療期間は延ばすべき?




スミヨシです。

皆さんの施設では虫垂炎の入院の際に血液培養は採取するでしょうか。

ぶっちゃけ様々だと思ってます。
正直虫垂炎で血液培養採らなかったから痛い目見たことある経験をもつ先生はかなり少ないと思います。
ただもちろん、痛い目は患者と他の医師が負担した可能性もありますが。

自分は虫垂炎の菌血症は患者がよくなってたら治療せずともいいかなとも思ってました。

以前

若い男性患者、虫垂炎術前に血液培養
→術後数日で帰宅
→血液培養でEnterococcus faecalis1セット陽性検出

ということがありました。
※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。

術前はセフメタゾールで、腸球菌に効果のある抗菌薬投与は無し。
本人は発熱もなく症状改善したために帰宅。
CRPも術後改善して0.5程度。

これを呼び戻して治療するかどうか、というので悩みました。

ここら辺、整理してみました。

そもそも虫垂炎で血液培養は必要?


抗菌薬投与前には全例血液培養!といいがちな内科医も多いと思いますが、さすがに虫垂炎で全例血液培養はいらないだろうなと思ってます。
これはむしろ外科の先生に同意を得られやすいと思ってます。

IDSAの腹腔内感染のガイドラインでは腹腔内感染疑いの場合、
免疫不全、低血圧・多呼吸・意識変容、耐性菌リスクもない場合ルーチンで血液培養を採らないことを提案しています。

発熱に低血圧・多呼吸・意識変容を伴う場合や、耐性菌の同定が治療を変えうる場合、腹腔内膿瘍などは、採取を推奨です。

虫垂炎の血液培養陽性率と抗菌薬


Blood culture positivity in patients with acute appendicitis: A propensity score-matched prospective cohort study

虫垂炎815例のうち血培を評価できた271例中33例、12%が陽性。
ただし、全員から採取できているわけではないので注意。

複雑性虫垂炎で血培陽性だったものの、術前抗菌薬と虫垂切除だけで治療され臨床的に追加治療の必要がないと判断され、その後の診療録の確認でも合併症や感染再発を認めなかった例が記載あります。

腸球菌は、Enterococcus aviumの1株のみ


Drawing blood in vain? Reassessing routine preoperative blood cultures for acute appendicitis

16歳以上の急性虫垂炎患者を対象とした後ろ向きコホート研究

術前血培を採取した1,741例中66例で病原菌が検出され、そのうち33.3%では術後抗菌薬が投与されていなかった。

少なくとも、血培陽性でも術後抗菌薬を追加せずに経過した患者はいるわけです。


でもまあ大体の菌は大体でまあいいかなとも思うんですけどね。
やっぱり腸球菌は結構気持ち悪いなあなんておもいました。

ご存じE. faecalis菌血症では、感染性心内膜炎のリスクがあるわけです。

E. faecalis菌血症344例中90例に心内膜炎
人工弁、陽性ボトル数の多さ、感染源不明などが危険因子

なわけです。

いや、もちろん今回は虫垂炎なんですけどねっ
治療しなかったらIEになっちゃうんじゃないかとか悩むわけです。


治療するなら、2週間必要?


合併症のない腸球菌菌血症331エピソードで、4–10日間と11–18日間の治療を比較
⇀120日以内の死亡・菌血症再発・骨関節感染の複合アウトカムは両群とも23%で差なし。

ただし、この研究は、48時間以内に適切な抗菌薬が開始されなかった症例を除外しています。持続菌血症や感染源制御不良なども除外対象です。

セフメタではなくてアンピシリンスルバクタムだったらなあとか思いましたが術前に入ってるのはあんまりみたことないですねー。

この患者について


ここまで調べてぴったりとはまるデータは無さそうかなと。
データが無いなら2週間点滴治療というのが無難なんでしょうが、これはいかにもオールドスタイルの感染症医っぽくて微妙だなあとも思いました。

そもそもが血液培養とらなくてもよかった症例でしたし、とってなければ術後経過も良好で特に問題は無かった人なので、多分呼び戻しはしてないと思います。
血液培養をとってしまったがために抗菌薬投与することが本当に患者にとって意味のあるものかは不明と判断しました。
判断しました。判断はしましたが、細菌性腸炎の際のカンピロバクター菌血症とかとはちがってやはり治療しないのが気持ち悪すぎました。

患者は外来に来てもらって諸々相談し、アモキシシリン内服2週間処方しました。

片手落ち感はあるんですけどね!!
点滴しないのなら内服しないとかもありだったのかなあとかも思いますが。

まとめ

虫垂炎での血液培養採取はそもそも全例には要らないかも
虫垂炎でE.faecalis菌血症の場合に治療した方がいいか、治療期間を延ばすべきかは分からない。

なんだこのまとめ

ではまた。

結論:虫唾が走るをはずっと虫垂炎の時みたいな痛みと憎しみみたいな意味でとらえてたけど漢字違うことを今日知った。