スミヨシです。
先日書き上げた Letter to the editorですが、無事rejectされました!!
残念ですねー。。
普通の論文と違い、じゃあ次どこに出すかなあなんてこともないのでお蔵入り確定です。
でもまあ、それだと辛いし、日本は島国でローカル語だし、公開してもよいと自己判断しましたので、ここで供養させてください。
Single-Site Sampling versus Multisite Sampling for Blood Cultures: a Retrospective Clinical Study
(J Clin Microbiol.2022;60:e0193521. )
(※データ修正のあり→J Clin Microbiol.2022;60:e0118022. )
ワンセンテンスで、血液培養を単回穿刺で取るのと、複数回穿刺でとるのでは、単回穿刺の方が培養陽性率が高い、という内容です。
ストックホルムの救急外来での血液培養
2016年9月から1年間→MSSで採取
2017年9月から1年間→SSSで採取
両者のデータを比較し、血液培養陽性率、単一セット数(1セットしかとれなかった割合)、コンタミ率、複数菌の割合などメインアウトカム
MSSでは28.66%が1セットだけの採取になってしまった。
SSSでは4.31%が1セット
血液培養陽性率はMSS(17.76%) < SSS (19.56%)
2セット採取できたもので比較すると、ほぼ同じ。
MSSの陽性率が低いのは2セットとれなかったものが多いから、と。
MSSとSSSの2セットとれたものでの比較
血液培養陽性率やコンタミ率など同等
血液採取量もSSSが適切、というものがあったがこれは割愛。
というわけでこれらをもって、単一穿刺でとったほうが、複数セットとる率があがり、血液培養陽性率は高い、コンタミ率は同等、との結果。
コンタミ率は同等?
この論文を読んで自分が疑問に思ったのが、「特にSSSでのコンタミ率は過小評価になっているのではないか」ということでした。
他にもいろいろとツッコミどころの多い内容でしたが。。
実はデータの中に、陽性になった菌の割合が出てきます。
それがこちら。
特にCNSの真の菌血症が多いんですよね。
SSS群では、陽性になった菌種の中で、表皮ブドウ球菌が5%、その他CNSが4.1%と、約9.1%がCNSの菌血症だったことになります。
そんなに救急外来でCNSの菌血症をみるでしょうか。。
この表をつかってCNSだけのコンタミ率を計算すると、
MSS:64.8%(218/336)
SSS:55.0%(293/533)
このコンタミ率はみなさんどう思われるでしょうか?
僕は結構低すぎると考えております。
血液培養のCNSは約82%がコンタミというデータがあります。
(The clinical and prognostic importance of positive blood cultures in adults. Am J Med. 2010,123:819-28.)
まして、くどいですが、今回は救急外来で採取した血液培養です。CNS菌血症を起こすカテ感染などはあまり入っていないセッティングのはずです。
特に単回穿刺では、穿刺の際にコンタミネーションしてしまった際に、同じ針ないしは検体を2セットのボトルに分けるので、同一菌のコンタミがセットをまたいで起きてしまうリスクがあります。
しかしながら本研究でのコンタミの定義は、「血液培養ボトルの1本または2本にCoNSやS. epidermidisを含む特定の細菌が存在し、他培養で検出がないこと」
です。
つまり、3本以上陽性の際には、コンタミのカウントはされていない、ということになります。
もちろん臨床で2セット陽性の際に両方コンタミネーション、なんて判断をするのは結構まれだと思います。
しかし今回は単回穿刺の研究で、そのリスクをはらんでおり、本当はコンタミネーションだったはずのCNSが真の菌血症でカウントされており、そのカウントがSSSでは特に多い可能性があるため、実はSSSの血液培養陽性率は実際には低いのではないか、という仮説がたちます。
コンタミネーション率の過小評価の可能性があることが本研究の重要なlimitationかもしれない、ということをLetterで送りました。
が・・・・・駄目っ・・・・・!
まあ、論文出てから時間経ってますしねー。
内容がとんちんかんでは無かったと信じています。
今回はダメでしたが、Letterを送ることでいろいろと勉強になりました。
めげずにがんばりたいですね。
ではまた。
結論:「医学論文の読み方 2.0」がLetterの書き方に全振りしててオススメ