スミヨシです。
なんでも、昔トマトは毒があると思われていたようです。
しかしながら、その理由は食器に含まれる鉛がトマトの酸に溶け出した→鉛中毒を発症していた、とのことです。
恥ずかしながら初耳でした。
まさか食器が原因で鉛中毒になるとは。
で、同時に新たなクリニカルクエスチョンが発生しました。
「それなら現代でもそれなりに鉛中毒いるんじゃね?」
トマト側は品種改良がなされたようですが、食器には今も鉛が含まれているものがあるかと思います。
ただ、後日まとめようかと思いますが、鉛中毒はそれなりに珍しい病気です。
福知山にいた際にはある理由で鑑別にあげていましたが、日本全体ではそうそう見ない疾患のはず。
そこで、食器が誘因の鉛中毒があるのか調べてみました。
血中鉛高値の危険因子
(Biomed Res Int.2017;2017:4934198. )
中国・泰州市の3-6才の2018人の小児が対象
まず、集団の血中亜鉛濃度の中央値は4.6µg/dL
※CDCは小児鉛血中濃度3.5µg/dL以上を高値とみなしている
⇀10µg/dLを超える亜鉛濃度をもつ群の危険因子をしらべた。
母親の教育レベル、父の職業、化粧への暴露(母の頬にキスをするから?)、住宅の床などがある
その中に「Decorative tableware」の記載がある [p=0.0247 95%CI of OR1.110 (1.013–1.215)]
もともと鉛汚染地域ではあるが、食器による影響はあるのかもしれない。
実際に食器が原因の鉛中毒はある?
ひとまず食器が血中鉛を上昇させうるというのはわかりました。
じゃあ、実際にそれで発症するような、特に成人はいるのかしらべてみました。
Case 12-2014 — A 59-Year-Old Man with Fatigue, Abdominal Pain, Anemia, and Abnormal Liver Function
(NEJM.2014;370:1542-50. )
NEJMのケースレポートで見つけました。
当然この流れなので鉛中毒なのですが、なかなか難しいプレゼンでしたので是非目を通していただければと思います。
「MCVの低い腹痛は鉛中毒を疑う」
というパールを脱しない私好みの症例です。
さて59歳男性の鉛中毒(910µg/dL)なのですが、自宅で勤務している方で、高層ビルに住んでいる、パートナーは血中鉛の上昇無しという方で暴露源として患者のみ使用する食器が調べられました。
⇀これらを検査したところ、マグカップの1%、スプーンの50%が鉛で構成されていた、とのこと。
よく調べさせてくれましたね。。
というわけで確定では無いですが食器が原因で鉛中毒になりうる、というものでした。
日本での鉛をつかった食器は??
ここまで調べて、ある事実に気が付きました。
どうやら2008年に食品衛生法が改正され、日本の陶磁器や調理器具などの鉛・カドミウム溶出量が厳格になったようです。
日本の食器ではあまり鉛中毒は起こさないかもしれません。
まとめ
日本では食器による鉛中毒は起こさないかも。
ただし、輸入品の食器・陶磁器には注意が必要
ではまた。
結論:毒が無かろうとトマトはまずい