スミヨシです。
札幌にいたときにくらべて、関西にいると梅毒の陽性者が多いように感じます(私が関西に来てから感染症診療しはじめたというバイアスやそもそも全国的に増えているからという理由はあると思います)。
ただ、梅毒の診療って独学だと結構難しい印象です。
一般的な市中病院でみる感染症が得意な総合内科医であっても梅毒は苦手、という先生もいらっしゃいますよね。
多くは皮膚科の先生や、泌尿器科の先生が診ていただいている疾患と思いますが、治療がうまくいかない、というご紹介を受けることもしばしば経験します。
昔、外来で「梅毒を治療してもRPRが8倍以下になりません」というご相談がありました。
梅毒の治療効果判定
諸説あるのかもしれませんが、基本的には症状とRPRの数字をみての判断になります。
RPRは経時的に低下していきますが、低下のスピードはかなりゆるやかです。
早期梅毒は1年以内、後期梅毒は2年以内にRPRが4分の1以下になっていれば治療成功、と判断します。
(MMWR Recomm Rep.2021;70:1-187.)
冒頭の患者は、プロベネシド無しの内服治療で、このdoseのこの治療期間が適切であるかは不明ですが、RPR自体は速やかに下がっていますし、症状も消失しているので、そもそも治療失敗の要素がなさそうに見えます。
そもそもRPRの評価が早すぎですね。
標準治療(ステルイズ®)で治療しなおす?というのも浮かびましたが、現時点で治療失敗の証拠はないので、経過観察としました。
梅毒治療判定はRPR8倍以下とは?
「RPRが8倍以下にならない」が何から来ているのか調べてみました。
検索してみると、「梅毒治療判定はRPR8倍以下」という文言をHPに書いているクリニックが少なからずありそうです。
クリニックのホームページって他のクリニックの丸パクリとかしてるのかな、なんて疑念も浮かぶほどです、、
色々しらべると、日本産婦人科学会が出している「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2020(https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf)」にそれらしき記載がありました。
曰はく、「治療については,STS の定量値が 8 倍以下を継続することと臨床症状がなくなったことで治癒と判定する」と記載があります。
クリニックのホームページたちはそれを基にしているかもしれません。
丸パクリ疑惑をかけてすみません。。
上記の引用元は不明でした。
日本に住んでいるので日本のガイドラインに従っていれば問題ない、という意見もあるかもしれませんが、不要な通院と採血、治療がされかねないので、ここは修正されればいいのにな、と思いました。
梅毒の治療っていろいろと定まっていなくて面白いと感じますが、明確に根拠を突き止められないので難しいですね。私の意見もアメリカのガイドラインが正しい、日本のはダメ!みたいな思想に裏打ちされている可能性もあるので、そこに注意ですね。
ではまた。
結論:RPRと調べると出てくるゲーマーがいるのだが、最近検索上位になってきていて、いつか梅毒の情報が埋もれてしまわないか心配している。