アルコール中毒の患者、私はこれまで札幌、京都、大阪と働いてますので、ままみる、とくに救急外来でみることが多い疾患です。
ふと、思い出すことがあって調べてみました。
※症例は実際の症例を参考にデータや背景を変更してます。
------------------------------------------
20歳男性
午前2時か3時、飲み会でつぶれて友人の通報で救急搬送
具体的な量は定かでは無いが、たくさんお酒を飲んだらしい
JCS20 BP 95/60 HR 110 BT 36.5
採血、頭部CTでは意識障害の原因となるものはない。
外傷はなくFAST陰性
推定エタノール濃度は350くらい
嘔吐と水様便の失禁がある
-----------------------------------------------
まあ、アルコール中毒っぽいですよね。
で、この時私はおもったわけです。
「急性アルコール中毒で水様便って珍しいな」と。
正直、嘔吐まみれになっていたり、尿失禁のある方は多いですが、便失禁かつ水様便ってあまり見慣れない状況でした。
これはもしかして腸炎なのでは?
そして入院する腸炎は抗菌薬の適応かもしれない!
スミヨシ「便培養だしていいですか?」
こわい看護師さん「は?」
スミヨシ「いや、えー」
こわい看護師さん「は?」
スミヨシ「家族に電話します!!!!迎えにきてもらいますね!!!」
こわい看護師さん「いや帰れないでしょ」
スミヨシ「はい!!!入院で!!!」
正直、今考えても便培養は出さないよなあと思います。
この患者がカンピロバクターとして、治療対象になるかというと経過観察でしょうし。
検査有無にかかわらず接触予防でよいでしょう。
水様便が続くなら起きてから病歴聞けばよいですし。
ただ、急性アルコール中毒の患者は下痢をする、というパールは自分の中になかったので一応調べてみました。
急性アルコール中毒と下痢
とりあえず、UpToDate®の「Ethanol intoxication in adults」の症状の項目を見てみました。
なんとそこには「下痢」という言葉はありません。
でも、尿失禁や便失禁もない。。
Consensusにも聞いてみました。
んー
これは起こすです!
完!!
まあ、アルコール依存の人は慢性下痢起こすし、急性でも起こしていいわな。。
------
次の日。
まあ、とくに波乱もなく改善し、退院になりました。
実臨床はこんなもんです。
劇的な診断がつくことは稀です。
でもそれでいいのです。
急性アルコール中毒の診断でよかったのだと思います。
ただ、本人曰く、
「はじめて沖縄料理を食べた」
という病歴がとれました。
ひやりとしました。
結果的には違ったのですが、ある疾患が鑑別から抜けている、と気づきました。
沖縄料理を食べた後の急性症状
そりゃまあ窒息だのなんだのあるかもしれませんが、やはりアナフィラキシーが鑑別ですかね(もちろん急性アルコール中毒も)。
とくに、沖縄料理のアナフィラキシーといえば、ジーマミ豆腐によるものがあがります。
ジーマミ豆腐、おいしいですよね。
もちもちしてて、粘り気があって、食べ応えがあって。
ところが、ジーマミ豆腐の原材料には落花生、つまりピーナッツが含まれます。
そういうわけで、沖縄県が啓発するくらいには、
ジーマミ豆腐によるアナフィラキシーは(私の中で)クリニカルパール化しています。
今思うと皮疹があったかどうかの確認とかしてないなあ。
血圧も低値だったし、消化器症状もあった点からはアナフィラキシーは鑑別だったかもしれません。
まとめ
・「アルコールを摂取したあとに具合が悪い」患者の中には急性アルコール中毒だけではなく、アナフィラキシーがいるかもしれない。
・とはいえ、急性アルコール中毒での水様便は珍しく無いかも
じゃあ、どんな時疑うんや!と言われると困りますね。
バイタルおかしい時とか皮疹ある時とか。
自分の言語化能力の低さに辟易とします。
水様便があるから疑うかといわれると実際微妙でしょうね。
いろいろ隠れてる可能性があるから、急性アルコール中毒は舐めるな、というのが本質かもしれません。
ではまた。
結論:ジーマーミとかジーマミーではなくジーマミと書く事で、逆に地元感が出る