2024/04/29

投稿日 2024/04/29

ベンゾジアゼピン中毒に対するフルマゼニルって使う?

スミヨシです。



ベンゾジアゼピンの急性中毒、地域によって見る頻度は様々だと思います。

自分は札幌にいたときはそれなりに頻度の高い疾患と認識していました。

若年者が多いと思いますが、ときおり高齢者の服薬管理ミスなども見た印象です(急性中毒というよりただ飲んだだけかもですが)


で、付き添いの人がいて、実際に飲んだところを目撃されていたり、空のPTPシートが見つかったりすれば話が早いのですが、そうでない場合には一応は意識障害の鑑別にはなるので、どうしたものか困る際もしばしばありました。


そんな折、フルマゼニル(ベンゾジアゼピンの拮抗薬)を使用することで起きれば、その間に病歴を聞いたりして、また起きたという事象そのもので鑑別できる、というのを見て少し投与していた時期もありました。

もちろんそこで目を覚ましたからと言って、ベンゾジアゼピンとフルマゼニルの半減期を考えると、また寝ますので、帰したりはできませんが。


ただ、あるときにERでフルマゼニルを使用するのは野蛮だ!と言っている先生がいて、なんとなく使用しなくなりました。


私レベルの救急の関わり方だとあまりフルマゼニルがなくても困らないのですが、野蛮なのかどうか調べてみました。


ベンゾジアゼピン中毒に対するフルマゼニル

Should a benzodiazepine antagonist be used in unconscious patients presenting to the emergency department?

Resuscitation.2007 Jul;74(1):27-37.


薬物中毒の疑いで、意識障害を呈した患者に対し、フルマゼニルvsプラセボを投与された研究のレビュー

⇀7件のRCTの466人の患者

GCSはフルマゼニル群で有意に改善 (Relative benefit 4.99, 95% CI 3.14—7.92)

死亡などの有害事象はなかった。

ただフルマゼニル群でanxiety  (RR 2.84, 95% CI 1.28-6.30)、other side effects (RR 3.73, 95% CI 2.078-6.73)が多かった。

検査前確率が高ければ意識レベルの改善は得られそうで、その際に病歴など聞くことができる利益を考えると、有害事象を上回るメリットがあるのかなあ、なんて思っちゃいました。

ただ、有害事象はn数が少なくて有意差が出なかった感もあります。


Adverse Events Associated with Flumazenil Treatment for the Management of Suspected Benzodiazepine Intoxication--A Systematic Review with Meta-Analyses of Randomised Trials

(Basic Clin Pharmacol Toxicol.2016;118:37-44. )

こちらもメタ分析

13件のtrial、フルマゼニル(n=498)とプラセボ(n=492)

ちなみに先述のものは全て含まれています!

ただこの研究は有害事象そのものにフォーカスを当てています。


有害事象

フルマゼニル(27.7%, 138/498) vs プラセボ(9.6%, 47/492) 

(RR: 2.85; 95% CI: 2.11–3.84; p < 0.00001) 

で、フルマゼニル群が有意に多い

とくにagitation, anxiety, gastrointestinal symptomsが多かった。


重篤なものは12例と2例でこれもフルマゼニル群が多い

フルマゼニル群は痙攣3例、上室性頻脈が4例、Multiple ventricular beatsが1例、頻脈が3例、血圧低下が1例

プラセボは上室性頻脈が2例


特に痙攣に関して、フルマゼニルそのものというよりはもともとてんかんがあって、抑制が解除されパターンや、ベンゾ依存→離脱が起きて痙攣を誘発する、みたいなことが考えられているようです。


まとめ

ベンゾジアゼピンの急性中毒に関して、フルマゼニルは意識レベル改善をもたらす可能性が高い。

でも有害事象があるので、リスクベネフィットを考える。

私はどうするかというと、vitalや様子が落ち着いていて、窒息の危険が無さそうならわざわざフルマゼニルを投与しないかもしれません。。

髄膜炎や脳炎ではないことはお祈りでしょうか。。

MRIまでとるかは状況次第ですね。


あと、使うなら0.2mgなんだと思いますが、病院にあるのが0.5mgだとすると投与量がオーバーになるリスクがあります。

正直投与量とか覚えてられないので、そういった点からも、使用をためらってしまいそうです。

そもそも日本においては「長期間ベンゾジアゼピン系薬剤を投与されているてんかん患者」に禁忌ですので注意。

野蛮かどうかは主観だと思います。

ではまた。


結論:Googleでアニキセートと検索したらアネキセートに誘導されるけど、イモートキセートと検索したら誘導されないので注意されたし。