スミヨシです。
新年度が始まりましたが、初期研修医ぶりに転勤のない春を迎えました。
今年度もがんばります。
私自身はあまり馴染みがないのですが、移植患者や免疫抑制患者への感染を防ぐための食事制限は一般的に行われていると思います。
例えば日本造血・免疫細胞療法学会の造血幹細胞移植後の感染管理 第4版には、
「食肉類・魚介類・卵の生食は禁止する。サルモネラ・カンピロバクター・病原性大腸菌・腸炎ビブリオ・ノロウイルス等に食品汚染の可能性がある。生食の解禁の時期に関しては明らかなエビデンスはないもの、2007年CDCガイドラインでは、同種移植後では免疫抑制剤中止以降、自家移植後3ヶ月以降の案が提示されている。ただし、最終的には主治医の判断に基づくと記載されている」
と記載があります。
以前、免疫抑制患者のサルモネラ感染がありました。
細胞性免疫不全はサルモネラ感染のリスクです。
で、その患者さんは生卵を食べる習慣があり、今後その患者の食習慣をどうするか、卵を禁止しなければならないのか、という話題になりました。
・・もちろん禁止したほうがいいのでしょうが、それでも何かしらの数字は言えないといけないなと思いました。
どれくらいの卵がサルモネラ汚染している?
農林水産省のホームページに興味深い記載がありました。
(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/kekka/keiran/keiran_sal_06.html)
以下引用
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市販鶏卵のサルモネラ汚染状況調査(令和2年度)
1,870点の鶏卵(1点あたり鶏卵20個)を購入し、卵殻と卵内容に分けて、サルモネラの調査を行いました。卵殻については6点(0.3%)からサルモネラ(うち1点はSalmonella Enteritidis)が分離され、卵内容については1点(0.05%)からS. Enteritidisが分離されました。混合した20個の鶏卵のうち1個が汚染されていたと仮定すると、卵内容がS. Enteritidisに汚染された市販鶏卵の割合は0.0027%程度(37400個に1個の割合)と試算されました。
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そもそもサルモネラは殻についているので、実際に黄味に菌がいるのはさらに少ないのだと思います。
この確率どおりとするなら、毎日1個生卵を食べておおよそ100年に1回サルモネラに感染した卵に当たってしまう計算でしょうか。
そしてもと準パチプロを名乗っていた私は知っています。
この世にはパチンカーしか知らない法則があることを。
それは、
「天井を加味しなければどんな大当たり確率であってもその回転数以内にあたる確率は63%強」
なのです!!
どういう意味か!(以下省略可能)
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パチンコには大当たり確率が機種によって設定されています。
私の時代では(2015年くらいまで)、多くの機種が100分の1から400分の1のスペックでした。
そういったスペックで、分母より多くの回数を抽選している状況、いわゆる「ハマり」の状態は少し嫌なものなのです。
100分の1のスペックなら100回で、400分の1のスペックなら400回で当たってほしい・・!
その確率はいかがなものか、というのをパチンコガチ勢なら否応なしに知っているわけです。
100分の1を100回抽選して当たる確率と400分の1を抽選して当たる確率はどちらもまあ、63%強なわけです。
37400分の1の確率を37400回抽選して当たる確率は63%強となるのです。
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そういうわけで単純な計算上はサルモネラも毎日1個生卵を食べると、100年以内に感染するのは63%程度となるわけです。
とまあ、罹患した際のデメリットを考えなければ、少なくも見えますし、1回なった人がもう1回罹患する確率は結構低いよなあ、なんて思いにもなります。
むしろ保存が長くできてしまう、ワインやチーズのサルモネラだったり、ペットからの感染がリスクが高いかもなあとすら感じます。
(無論、罹患を許容していいということではないですし、数学上は罹患した人もしていない人も今後感染する確率はかわらないはずです!)
あと、この数字は多分新鮮な卵の話なので、時間が経った卵は話が別かもしれません。
ちなみに米国では20,000分の1個と推定されております
(Int J Food Microbiol. 2000;61:51. )
温泉卵はサルモネラのリスクになる??
生卵ラブな人たちは怒るかもしれませんが、私は思うわけです。
正直、生卵より温泉卵のほうがおいしくね??
卵かけご飯すら温泉卵派の私にとっては生卵が摂取できなくても温泉卵が食べられるならいいかなあと思うわけです。
東京都衛生局の「卵のはなし」によると、サルモネラは70℃、1分間の加熱で死滅するようです。
(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/tamago/files/tamago_no_hanasi.pdf)
で、いわゆる半熟卵は各種サイトおよびYouTubeを見てみると、どうやら沸騰したお湯で7-8分、というのが一般的でしょうか。
実際に卵黄の中まで十分加熱されているかは不明ですが、少なくとも殻についた菌体は消毒可能かもしれません。
まとめ
・サルモネラに感染した生卵はおおよそ2-4万に1個
・温泉卵は理論上、サルモネラ感染のリスクを下げそう
どうしても卵食べたくてほっといたら生卵を食べかねない人なら少しでもリスクを下げるために誘導する価値はあるかもしれません。
この意見は所属組織ではなく、私個人の意見なのであしからず。
また、患者さんにすすめるかどうかは慎重に議論ください。
結論:温泉卵を本当に温泉のお湯でつくるとレジオネラのリスクがあがるかもしれない