最近はもっぱらTwitterで医学の情報を集めるのが手っ取りばやいと思います。
一方で、特に有名な先生とか、フォロワー数の多い先生がつぶやいていると、つい中身の吟味をさぼってしまいがちです。。
さて、最近は
経口レムデシビル(VV116)がニルマトレルビル-リトナビル(パキロビッド®)に非劣性だし副作用も少ない!
といった内容が飛び交っていました。
それこそ、特に有名な先生とか、フォロワー数の多い先生がつぶやいていたので、正直自分もいいじゃん、いこうよVV116 !!!!と思っていました。
で、今日科内の抄読会で読んで、問題点を指摘されて、やっぱり医学の内容は吟味しないといけないなあ、なんて反省したので共有です。
めんどい人は最後だけ読んでください。
(NEJM 2023; 388:406-417)
天下のNEJMです。
VV116は上記の通り、1日目 1回600mg 1日2回⇀以降は1回300mg 1日2回で計5日間投与のようです。
重症化リスクありの成人で、軽症から中等症のCovid-19に対してnoninferiority, observer-blinded, randomized trial.
プラセボが用意できず、二重盲検にはできなかった。
メインアウトカム:
28日以内での、臨床的改善までの主要時間
二次アウトカム:重症化数、全死亡数、症状の変化、検査陰性までの時間など。
結果
VV116 (384人) vs パキロビッド®(387人)
両群でワクチン接種は75.5% vs 76.0%と、ワクチン接種者は多めに対象になっている。
メインアウトカム
症状改善までの日数(中央値)は、4.0日 vs 5.0日 (HR1.17 (1.02–1.36))でパキロビッド®への非劣性が示された。(なんなら優越性がある)
二次アウトカム
他は省略します。重要なのは、重症化数+死亡数は0 vs 0
有害事象
全有害事象、大きな有害事象ともにVV116 が少ない。
パキロビッド®に非劣性だけど。。
さて、この結果をみて、「経口レムデシビルはパキロビッド®と同等の効果があるうえに副作用も少ない」と言っていいでしょうか?
確かにこの情報だけみると非劣性は示されたかと思います。
ワクチン接種の状況もリアルワールドをある程度反映できていると思います。
しかしながらそれはあくまで臨床改善までの時間において、です。
そもそもパキロビッド®は、リスクの高い Covid-19患者に対して、別に早く治ってほしいから処方するわけではありません。
重症化、死亡率を下げるから処方しているはずです。
残念ですが今回のデータでは、経口レムデシビルがハードアウトカムの改善をするかは不明です。(0なので同等に防ぐ可能性もあるが、そもそも今回の群は重症化しない患者層かもしれない。)
だから、これをみてもまだ処方すべきかは不明です。
とりあえずよさげなデータを出しておいて、ここから死亡率や重症化率の非劣性を示していくのかと思います。
まとめ
経口レムデシビル(VV116)は、パキロビッド®に比べて臨床症状改善までの時間は同じくらい。有害事象も少ない。パキロビッド®はリトナビルのせいで他薬剤との相互作用がうざい。経口レムデシビルが使えるならそっちがいい!
でも、肝心の死亡リスク・重症化リスクも改善するかは今後のデータ待ち!
こんなところですかね。
てかこれで合ってるよね?結構レベル高げな医者も褒めてたから逆にこの解釈間違ってんじゃねえかと不安になるレベルです。。
勉強になりました。内容間違ってても知りません!!
ではまた。
結論:Twitterでフォロワー数多い臨床ガチ勢に見える人たちが本気出したらまあまあなデマでも信じる人多そう。