スミヨシです。
内科外来をしていると浮腫を主訴に来院される患者さんにしばしば出会います。
腎不全や薬剤性、DVTなどあることもあります。
しかし原因もよくわからず、原発性リンパ浮腫や特発性浮腫だろうか、と思っても決め手がなく、患者に説明するのも難しいこともあります。
このまえ、浮腫の患者さんの診察の際に、福知山で習ったシリーズの一つ、Stemmer signを久々に思い出したので共有です。
Stemmer sign
福知山の師匠からはこちらの表記で習ったので。
Stemmerは人名です。
リンパ浮腫の患者において、第2or第3足趾の基節骨の皮膚がつまめないことを発表した、とのこと。
(Vasa. 1976;5:261–262.)
これが転じて上記所見がある場合にはStemmer sign陽性、リンパ浮腫を示唆する所見として使用されています。
上記の写真で
A:陰性
B:陽性:リンパ浮腫
C:偽陰性:リンパ浮腫
とのこと。
上記の写真の元論文では、感度と特異度を調べています。
マサチューセッツのリンパ浮腫プログラムに紹介をうけた患者
110人中、87人がStemmer sign陽性
▾陽性になった87人のうち、80人がリンパシンチグラフィーで異常
▾陰性になった23人のうち、13人がリンパシンチグラフィーで正常
感度 92% 特異度57%
※元論文にはこう書いてあるが、、
Stemmer signの感度特異度としては、
感度:80/(80+10)≒88.9%
特異度:13/(7+13)≒65%
が正しい気がします。
偽陽性には肥満が多く、偽陰性にはやせ、病状の初期であることが関与しているとされた。
(Plast Reconstr Surg Glob Open. 2019;7:e2295.)
そういうわけで、感度も少し高い程度で、肥満の人には使いづらいですし、趣味の範囲をやや超える程度の身体所見だとは思います。
陽性的中率はそこそこなので、代替診断の無い場面で肥満の目立たない患者のStemmer signが陽性なら、リンパ浮腫を示唆するかも、程度の使い方がよいかもしれません。
まとめ
・Stemmer sign陽性はリンパ浮腫を示唆する
・これだけで方針を決めない方がよいが、陽性なら患者説明に使うことができるかもしれない
くらいですかね。
自分ではリンパシンチグラフィーをしたことが無いので、なかなかfeedbackがしづらいですが、pitting or non-pitting edemaを見るのと同じで、身体所見ですべてを決めるわけで無かろうとも方針決定の一助になる、診察中の考えを整理するのに有用になる、程度で覚えておけばよいかもしれません。
ではまた。
結論:腹部の皮膚がつまめないことで肥満患者をスクリーニングできるかもしれないが、怒られるかもしれない。