スミヨシです。
大阪にいると、やはり梅毒は多く見かける風に感じます。
それは若年者の1期/2期梅毒のみならず、神経梅毒や潜伏梅毒もしかりです。
とかく、関西に来てから(感染症内科に所属してから?)梅毒を勉強しないといけないなあ、という日々です。
今夏にCIDから神経梅毒のState-of-the-Art Reviewが出ていました。
(Clin Infect Dis.2023 Aug 18;ciad437. Online ahead of print.)
そこで気になる記載がありました。
神経梅毒には原則ペニシリンGだけど・・?
神経梅毒は基本的にはペニシリンGの静注で治療を行います。
代替薬としてセフトリアキソンやドキシサイクリンが挙がることがありますが、ペニシリンアレルギーがあったとしても脱感作を行ったうえでペニシリンGを投与します。
神経梅毒に対してセフトリアキソンを使用した場合の治療失敗が懸念されているからと認識しています。
(J Infect Dis. 1992;165:396-7.)
セフトリアキソンでも問題ない、というデータも多く存在しますが、使用経験の蓄積からやはりペニシリンGを選択する場面が多いと考えます。
しかしそのレビューを読んでみると、
"The CDC recommends the use of IV or IM ceftriaxone as an alternative treatment for neurosyphilis, though this is based on limited data."
と記載あり。
確かにCDCのガイドラインを確かめるとさらっと載っていました。
ただでさえ代替薬として立場が不安定なセフトリアキソンを筋注でもいいのだろうか。
他のガイドラインでこの推奨はありません。
見てみると筋注についての参考文献はいずれもケースレポートでした。
まじすか。一応見てみました。
①61歳の非HIV 神経梅毒患者に対して、セフトリアキソンを14日間(IV3日間、IM11日間)
⇀記憶力、言語能力、運動能力の点でいくらかの改善がみられ、血中RPRや髄液蛋白も改善した。
(Sex Transm Infect. 2003;79:415-6. )
②無症候性神経梅毒に対してセフトリアキソンによる筋肉注射(1日1gを14日間)で治療したら、髄液所見やVDRLは改善した。
(Sex Transm Dis. 1986 Jul-Sep;13(3 Suppl):185-8.)
他に症候性神経梅毒をセフトリアキソン筋注で治療した、というものは見つけられませんでした。
本当にいくなら??
なぜこれを根拠にCDCが推奨しているかはわかりません。
基本的にはかなり弱い根拠を基に記載していそうです。
実際には治療可能な症例も多いのでしょうが。。
強いて使用場面を挙げるなら、意識変容で暴れてルート確保ができない神経梅毒患者なら考慮でしょうか??
UpToDate®ではCTRX筋注の際には250-350mg/mlに溶かすとのことなので、2g筋注なら6-8ccの溶液が必要でしょうか。
筋注溶解用リドカインがちょうど3ccなので2gいくなら2本分を使えば筋注出来なくもないかもしれません。とても痛いと思いますけど。
こんなことが起きないようにお祈りが必要ですね。
ではまた。
結論:近畿中央病院のキャラクターといえばお馴染み、きんちゅうとぎんちゅう