稀ですが、血液培養陽性症例で、そのあと急な視力低下、内因性の細菌性眼内炎をきたすことがあります。
たぶん、カンジダの血流感染があった際には、CVをぬいて、血液培養フォローして、眼科に紹介しよう、という一連の流れがあると思います。カンジダは眼内炎起こしやすい、というのは有名かと思います。
UpToDateみると、人種差があるみたいで、北米やヨーロッパでは黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が多いですが、東アジアではクレブシエラが多いみたいです。
個人的には、意外と黄色ブドウ球菌の細菌性眼内炎は見たことないですが、Streptococcus dysgalactiae(G群連鎖球菌)とかクレブシエラ、カンジダの細菌性眼内炎はしばし経験します。
以前経験した症例で70代男性、Streptococcus dysgalactiaeによる感染性心内膜炎と両側細菌性眼内炎の方がいまして、感染は落ち着いたんですけど失明した方がいらっしゃいました(※実際の症例からは菌名、病名、個人情報など改変しております)
穏やかな人でしたが、しばらくたってから、妻が刃物をもってやってきた、虫が見える、などの症状が出現しました。
さすがにせん妄だろうとは思いつつ、髄膜炎・脳膿瘍は否定しておこうと思い腰椎穿刺を施行しましたが特異的な所見はありませんでした。
会話は普通通り可能で、幻視?がくっきりと見えている、といった具合です。
さて、これなんでしょう。。
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というわけで表題のシャルル・ボネ症候群ですね。
まあ、あまり有名な疾患ではないですし、ちゃんとした疾患定義はないのですが、それなりに症例報告はあります。
シャルル・ボネ症候群
・急に視力低下・失明に陥った患者の、幻視 (Curr Treat Options Neurol. 2019;21(9):41.)
ということになると思います。
高齢者に起きやすいらしく(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK585133/)、それなりにしっかりした幻視エピソードがあることが多いみたいです。
下肢切断患者の幻肢痛ににた概念にも思います。
ほかの精神疾患・せん妄の合併の有無で診断がかわるかはわかりません。
治療としては抗精神病薬やSSRI、バルプロ酸など列挙されていますが、とくに定まったものはなさそうです。
自験例は最初リスペリドン使用したり、昼夜逆転でデジレルを使用したりしてましたが、リハビリが進み、疾患への理解や需要をしてもらううちに自然と幻視は消失しました。
まあ、知っておいて得する場面は少ないでしょうが、変に精神科病院に転院させたりしなくてもいいかとは思うので、いつか役に立つかもと思って頭の隅においておくといいかもしれません。
あと、こういう症状を診たときに疾患名がいえると単純に知識ありそうでカッコいいので言えたらいいと思います。
うそです。たいてい知識マウントマンとして扱われます。医師の世界は厳しいです。
眼科ではあるあるなのかもしれませんが、内科ではそんなに急な失明を扱うことがないので、勉強になりました。
細菌性眼内炎でのシャルル・ボネとか多分ケースレポート書けるはずなのでコロナがおわったら書きます。。すみません。。。世に出さなくては。。
※追記 書いてない。世に出ない。
ではまた。
結論:アハ体験の99%は幻視