スミヨシです。
いつからか、自分の所属していた施設で、急性膵炎に対して、もしくは急性膵炎を疑った際に、尿中トリプシノーゲン2を測定する研修医がしばしばいました。
自分が初期研修医の時には考えたこともない検査ですので、調べてみました。
急性膵炎に対する尿中トリプシノーゲン2について
どうも2020年-21年くらいで保険適応および検査が可能になったみたいです。
トリプシンの前駆体で、急性膵炎の初期から尿中にトリプシノーゲン2が排泄されるようです。
コクランのシステマティックレビューがありました。
血清アミラーゼ、リパーゼのcutoffを基準値の3倍、尿中トリプシノーゲン2のcutoffを50ng/mlとしたときに、
血清アミラーゼ:感度 72 特異度 93
血清リパーゼ:感度 72 特異度 89
尿中トリプシノーゲン:感度 72 特異度 90
とのこと。
(Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr; 2017(4): CD012010.)
ちなみに迅速検査が陽性になるのが50ng/ml以上っぽいです。
これをうけ日本の急性膵炎ガイドラインでも、「血液検査を実施できない医療機関において有用」と記載されています。
なんせ5分でできますからね。。
血液検査を実施できない施設で膵炎を診断可能もしくはすべきでは不明ですが。
「尿中トリプシノーゲン2が陽性で急性膵炎かもしれません」という紹介がささる転院先が近くにあるのなら一考ですかね?
UpToDate®では記載はあるものの、”However, additional studies are needed to determine their role in the diagnosis of acute pancreatitis."とのことで、まあ現在の情報で使用するかは不明というニュアンスでしょう。
で、正直いろいろ調べると丸太町病院のブログを見つけてしまいました。
「尿中トリプシノーゲン2はリパーゼに勝てず」なんてタイトルです。
おおむね同意です。ここまで書いといてなんですがこれ読めばいいと思います。
というわけで、採血、画像検査ができるならわざわざトリプシノーゲンの検査はしなくてもいいのかもしれません。
ERCP後の膵炎は拾える?
他に使い道を探してみましたがさすがにバリエーションはなさそうです。
ERCP後4時間で、腹痛のある患者の場合、尿中トリプシノーゲン2は感度60%、特異度99%、陽性的中率64%、陰性的中率98%
24時間後は感度100%、特異度98%、陽性的中率71%、陰性的中率100%
とのこと。
(J Clin Gastroenterol.2021;55:361-6. )
小規模な研究だし、ERCP後に腹痛あった時点で膵炎疑うようなあ、とか思っちゃいましたが、夜中とかだと使えるんですかね?
消化器内科の先生がどんなテンションで使用しているかは気になりますが。。
まとめ
・クリニックとか採血ができない場面では、大きな病院に転院する際に使えるかもしれない(維持コストとかは知らん)
・非消化器内科医はあんまり使わなくてもいいかもしれない。
ではまた。
結論:キモトリプシノーゲンとかキモトリプシンって名前的にトリプシンたちに嫌われてそう。