スミヨシです。
さて、リンパ嚢胞感染、という疾患はそもそも知名度があるでしょうか。
ほとんどの場合、産婦人科領域の疾患であると認識しています。
自分自身はこれまでに2例経験があります。
そのたび調べるのですがなかなかデータ不足な領域だと思います。
リンパ嚢胞感染
そもそもリンパ嚢胞感染とは?
子宮や卵巣の手術の際に、リンパ節郭清を行いますが、その合併症として後腹膜にリンパ液の貯留がみられることがあります。これがリンパ嚢胞です。(なぜかこの分野でのリンパ液貯留ばかり出てくる。)
これ自体は無症状で、いつしか消えることも多いですが、その部位に感染が生じえます。
残念ながらリンパ嚢胞感染です。
リンパ嚢胞感染があると圧痛や発熱が生じます。
鼠径部や腰の圧痛がある点が感染の有無を判別するのに使えるかもしれないと思っています(持論)。
頻度
婦人科がんでリンパ節郭清を行った患者 619人のうち
115人(18.6%)がリンパ嚢胞
さらにそのうち27人(4.4%)がリンパ嚢胞感染を起こした
60mm以上のリンパ嚢胞が感染の危険因子
起因菌
大規模なデータは多分なさそうです。
以下は19例のリンパ嚢胞の検体の培養(10例は血液培養がとられ、2例が陽性)
大腸菌、腸球菌が多いですね。
真の起因菌か評価は難しいですが、意外とGPC clusterが多いんですね。
SSIとしての一面を反映しているのでしょうか。
自分が診た2例はいずれもStreptococcusでした。
日本の報告でもGPCが多そうです。Bacteroidesも検出されることがあるよう。
某資料にMycoplasma hominisの記載もありましたが出どころはわかりませんでした。
まああってもいいかもしれません。
治療
抗菌薬+ドレナージ
エンピリックにはセフメタゾールを選びたくなりますが、意外とGPC多いから悩みますね。
初手バンコマイシンは無いにしてもアンピシリンスルバクタムとかはありかなあ。。
治療期間もこれまた定まっていないです。
60mmを超える場合、ドレナージ+抗菌薬 群は抗菌薬群にくらべて平均治療期間が短かった(17日 vs 25日)
みたいなのしかなさそうです。
ドレナージが綺麗にできているなら2週間程度でもよいと思いますが、そうでなければ4週からそれ以上、って提案したくなっちゃいます。
まとめ
リンパ嚢胞感染はそんなにまとまっていないけど、ドレナージできるならしたほうがいいかもしれない。
ではまた。
結論:「リンパ嚢胞、因果応報」っていうとリズミカルでラッパーの気分になるけど、リンパ嚢胞ができるのが因果応報なわけはないので言わない方がいい。