スミヨシです。
今の職場になってから少し忙しかったり、感染症に関するクリニカルクエスチョンが多くなったりで、商業誌を読む機会が減っているなあと感じています。
そんな中、積み本の中の一つを読みました。
中外医学社から、増井先生の「上級医が教えてくれないコト」です。
自分はこの先生のもとで働いていた経緯がありますので、あまり身内を褒めるのは良くないのですが、確かに今まで無かったタイプの本で、読み物として面白いなと思いました。
で、この内容の中で気になる部分がありました。
研修医だけの診察は不要な検査が増える?
「後輩を教育する時には、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか?」
という項があります。
"①一緒にベッドサイドへ行こう
上級医がベッドサイドに行くと、無駄な検査が減るメリットもあります。
研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない。"
いい内容ですよね。
どの学年になっても自分もベッドサイドに行く、というのは続けたいと常々思う所です。
ただ、その中で、「研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない」の部分が気になりました。
引用文献を調べてみました。
A Comparison of Laboratory Testing in Teaching vs Nonteaching Hospitals for 2 Common Medical Conditions
テキサス州の11の主要教育病院、12の小規模教育病院、73の非教育病院の細菌性肺炎または蜂窩織炎と主に診断された入院患者43,329人(女性20,493人、男性22,836人)が対象。
細菌性肺炎の場合: 主要な教育病院では 1 日あたり平均 13.21 件の検査が行われたが、非教育病院では 1 日あたり平均 8.92 件の検査。
蜂窩織炎の場合: 主要な教育病院では 1 日あたり平均 10.43 件の検査が行われたが、非教育病院では 1 日あたり 7.29 件の検査。
一応重症度は調整されておりますが、研修医のいる病院に重症患者や複雑な病態の患者が多い可能性がありますね。。
でもこれだけで「研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない。」はちょっといいがたいかな。。
この文献の引用文献(Postgrad Med J.2017;93(1102):476-9. /JAMA Intern Med. 2016;176:708-10. )も見ましたがそんなに上記の内容に見合う記載はなさそうです。
救急では研修医の検査は多い?
じゃあまったくもってそんな話がないかというとそうでもなくて、救急ではこんなのがありました。
すっごく雑にまとめると、指導医のみが診るより、指導医のもと研修医が診る方が、入院、画像検査、救急の滞在時間が長い、というものです。
まあ、なんとなく理解はできますね。
コンサルするために画像とる、みたいなのは少なからず日本でも存在するかと。
まとめ
指導医がベッドサイドに行くことで検査が減るかは不明。
ただ、指導医がベッドサイドに行くことと患者情報や状態を共有することが重要という点には変わりは無いので、別にこの部分の修正は不要
ということでいい本ですので皆さま是非。
結論:こういうことすると献本は来なくなる