2024/01/07

投稿日 2024/01/07

猫ひっかき病の人に心エコーしたほうがいい?

スミヨシです。





明らかに病歴と身体所見が診断の頼りになる、総合内科医が好き好き疾患の一つに、猫ひっかき病がありますよね!



最近、なぜかあまり診なくなりましたが、

「よくわからない腋窩や鼠経の単リンパ節炎は動物暴露歴を聞け」

という師匠の言葉はなかなかに金言と感じています。


多くは軽症ですむ猫ひっかき病ですが、播種型など、ときに重症な場合もあります。

(敗血症性ショック,比較的徐脈を伴った猫ひっかき病の1例 J-GLOBAL ID:202302285305267006 )


で、起因菌はお馴染みBartonella henselaeが多いですが、これは培養陰性感染性心内膜炎を引き起こす菌としても有名です。


とするならば、猫ひっかき病の患者は心エコーしたほうがいいのか?という疑問が出てきたので調べてみました。


弁膜症や先天性心疾患患者、高齢者はエコーを行う?

調べた範囲ですが、

「明確にこのパターンの猫ひっかき病は心エコーすべし!」

というコンセンサスはないと思います。


UpToDate®には以下のように記載がありました。


A significant proportion (approximately 40 to 60 percent) of persons with Bartonella endocarditis have prior cardiac valvular disease, particularly when B. henselae is the cause of the endocarditis.

Multiple cases of Bartonella endocarditis have been reported that involved children, adolescents, and adults with congenital heart disease.


(UpToDate®:Endocarditis caused by Bartonella)

ざっくり、バルトネラの心内膜炎は、40-60%に弁膜症の既往があり、先天性心疾患をもつ患者で報告がある、といった内容です。

これらの既往のある患者はエコーの閾値は下がりそうです。


また、猫ひっかき病のバイブルの「Cat-Scratch Disease in Elderly Patients」もみました。

(Clin Infect Dis. 2005;41:969-74. )

これによると、イスラエルの免疫正常な猫ひっかき病患者846人中、9人がIE

60歳以上のOR 61.6( P<.001)と偏りがありそうです。

また、これらはすべてDukeを満たしていた、7人が既知の弁膜症あり。

なお、若年者は94.4%に局所リンパ節腫脹があったのに対し、高齢者は76.5%にしか存在しなかったようです。

どうやって診断したのやら。。


猫ひっかき病と感染性心内膜炎

実際に猫ひっかき病患者が感染性心内膜炎に進行するのか、という事例はあまり報告がありません。


From cat scratch disease to endocarditis, the possible natural history of Bartonella henselae infection

(BMC Infect Dis. 2007; 7: 30.)

43歳男性

19歳でS.aureusによる僧帽弁のIEを起こし、生体弁に(その後再度交換もしている)

僧帽弁逆流が増悪し、手術。

⇀発熱など無かったが、摘出した人工弁からB. henselaeが検出

dukeは小基準2つ

実はX-7月に野良猫にひっかかれた

X-6月には鼠経リンパ節炎を発症、病理では微小膿瘍を伴う壊死性リンパ節炎であった。


これはCSD→IEに進行した症例、なのかもしれないですね。もちろん当初からIEが成立していたけど症状が顕在化しなかったのかもしれませんが。


Visceral cat scratch disease with endocarditis in an immunocompetent adult: a case report and review of the literature

(Vector Borne Zoonotic Dis. 2014 Mar;14(3):175-81.)

免疫不全患者の肝or/and脾に病変のあるCSD患者

18例中6例が心エコー、1例がIE(このケースレポート自体は健常者のIE)


症例数が少なくてなんともいえないですが、IEでなくとも肝脾に病変を作るCSDがそこそこあるんだなあ、と思いました。

自分なら起因菌のよくわからない肝膿瘍や脾膿瘍と思ったらIEを検索するかもなあ、と思いました。


まとめ

よくわからん!文献的には猫ひっかき病の症候にIEを含めるか含めないかがそもそもあいまい。。

高齢者や弁膜症の既往や弁手術をしているCSDは心エコーの閾値を下げるかも。

そもそもそういった人たちはQ熱みたく積極的に治療を行ってもよいのかもしれない。

もちろんCSD患者がDukeを満たすようなら心エコーを行う


てなところですかね。

ではまた。


結論:日本では南に行けば行くほど猫ひっかき病が多い