2021/06/17

投稿日 2021/06/17

肺炎球菌尿中抗原について

スミヨシです。

みなさんは尿中肺炎球菌抗原をどれくらい使用していますか。
私は初期研修からしばらくは、ルーチンでは使用しておらず、師匠からはあまり意味のない検査なのでつかわないと教わったので、重症患者につかうくらい、と認識していました。
ただ、なぜかというのはあまり説明できません。

ただ、周りで最近よく検査出されているのを見ますので、一回くらい勉強しとこうかな、と思いまとめました。


肺炎球菌抗原

肺炎球菌抗原の検査有用性

感度は70-80%程度 特異度は90%後半くらい
血液培養陽性症例では感度82.2%、特異度97.2%
(J Clin Microbiol.2003;41(7):2810-3.)
他の文献で、血液培養陽性が少ないものでは、感度70.5%、特異度96.1%
(Arch Intern Med.2011;24;171(2):166-72.)

⇀血液培養陰性症例では、感度が低そう。つまり抗原陰性でも否定しづらい。

偽陽性パターン

偽陽性は10%以下か(Clin Infect Dis 2007; 44:S27-72)
・気道のコロナイゼーション
・既感染(感染後数日から数か月は陽性が続く)
・肺炎球菌ワクチン接種後数日間
・Streptococcus mitis感染

その他
・抗菌薬投与後でも検査可能
・発症後3日より陽性となる

⇀陰性でも感染初期では否定できない

肺炎球菌抗原はどの患者にとるべき?

IDSA:重症患者以外のルーチン検査は推奨しない
(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine.2019;200(7);e45-e67.)

尿中肺炎球菌抗原を採取された患者の死亡率が25%減少。
重症患者でより相関つよい
(International Journal for Quality in Health Care.2014;26(1))

検査した群、しない群で費用効果に差はなし 
臨床的再発は検査した群で高い可能あり
(Thorax. 2010;65(2):101-6. )


私見

・抗原はとってもいいけど、喀痰培養やグラム染色などみずに、抗原陽性だけでde-escalationはしない。
・非定型肺炎を疑う時に、陽性なら考え直すかも
・Covid-19の流行している世界として。
Covid-19による肺炎としては非典型的な浸潤影をもつPCR陽性例では肺炎球菌肺炎合併例をみつけることができるかもしれない。
また、グラム染色をしなくなった施設もおおく、肺炎に抗菌薬を投与する一助になる可能性あり。
・レジデントのための感染症診療マニュアルでは髄膜炎診療アルゴリズムのところに尿中肺炎球菌抗原記載あり、自分も髄液検査した人にはとっている。


結局まとめましたが、使い道かわらない気がしますね。
市中肺炎に対する治療って、たいていSBT/ABPCとかCTRXが入ったうえでAZMやMINOやLVFXなど追加するかの議論になるかと思うので、肺炎球菌を外したレジメンになることがまれだと思います。


髄膜炎症例にとるのは細菌性の疑い強ければアシクロビル入れずにすむからです。でもこれもグラム染色みえなくて抗原陽性なら迷いますね。。

結局喀痰培養や血液培養がある前提で、診断の一助になる、
もしくは、
原因不明の非定型肺炎として治療したるんや!と突っ走ろうとしている自分を少しだけ引き止めてくれる存在
くらいのもんですかね。

ではまた。