スミヨシです。
研修医にスライド作ってもらう時に、自分が研修医1年目の4月に作ったスライドをみせています。
まあ、ひどい内容で、これのどこがいけないか、わかりにくいか、なんて内容を話すためです。
スライドに関してはまた機会があれば出します。
その内容が膿胸について、なのですが、いかんせんもう6年も前になりますので、自分の膿胸の知識を再度確かめるために久しぶりに膿胸の勉強をしました。
分類とかぶっちゃけ覚えられませんし割愛して必要最低限をまとめます。
肺炎随伴性胸水・膿胸
肺炎が原因で生じた胸水を肺炎随伴性胸水という。
肺炎で入院した患者の20-40%が肺炎随伴性胸水を来し、そのうち5-10%が膿胸に至る。
(Proc Am Thorac Soc.2006;3:75-80. )
危険因子
誤嚥、口腔内不衛生、栄養失調、アルコール、IV drug user
18歳未満or65歳以上、GERDなど
起因菌
肺炎球菌 、黄色ブドウ球菌、GNR(インフルエンザ桿菌、Klebsiellaなど腸内細菌、緑膿菌など)、嫌気性菌が主。
その他S.anginosusなど。
3-4割が混合感染。
検査
画像所見
基本はCT
重力に逆らった胸水貯留など
Split Pleura Sign
膿を囲む臓側と壁側胸膜の肥厚と造影効果
(PLoS One.2015;10(6):e0130141. )
胸水検査
まずはLightの基準で滲出性であることを確かめる。
胸水TP/血清TP>0.5
胸水LDH/血清LDH>0.6
胸水LDH>血清正常LDH上限の2/3
以上のどれかをみたせば滲出性胸水
正直肺炎があると全部滲出性判定になりそうですけど。。
そのうえで胸水pH Glucose、LDHを確認
pH<7.2
Glu<40
LDH>1000
以上は複雑性肺炎随伴性胸水、膿胸である可能性が高い。
後述するドレナージを検討。
(Clin Infect Dis.2007;45(11):1480-6. )
レジデントのための感染症診療マニュアル第4版では、
「pH6.0以下は食道破裂⇀胃酸混入を示唆」とのこと
また、ウレアーゼ産生菌(おもにProteus)がいるとpHが低くならないかも。
胸水培養
グラム染色も併せてすべき。
血液培養ボトルを使用することで検出率20.8%⇀58.5%
(Thorax. 2011;66:658-62.)
治療
基本は抗菌薬±ドレナージをするかどうか。
個人的にはACCPコンセンサスに従って治療しています。
(Respiration 2008;75:241-50 一部改変)
抗菌薬
通常の肺炎に対する選択とあまりかわらないが、嫌気性菌の関与を状況に応じて。
培養陰性なら内服切り替えも視野にABPC/SBTですかね。。
痰培養と胸水培養が結果が異なる場合あり、その際には菌種にもよるが胸水を参考にしたい。
肺炎随伴性胸水程度なら2-3週
膿胸は4-6週を検討
これも決まったコンセンサスはない。
ドレナージ
チューブの太さはコンセンサス無し。
太いものの方が排液が良好かもしれないが、一応、治療アウトカムに差は無し
細いチューブは痛みが少ないが陰圧やフラッシュが必要
(Chest 2010;137:536-43)
ドレナージは50-100ml/day以下になれば抜去
これも決まったものは無く、施設ルールでよいと思われる。
ウロキナーゼ
ドレナージ不良症例や、多胞性のものに線溶系薬剤治療をすることで、外科的介入を減らすことができる。
日本ではウロキナーゼを使用することが多い。
ダブルルーメンで、ウロキナーゼ12万U+生食100mlをクランプ⇀排液
1日1-3回行う(個人的には1日3回したことはないです。)
これを3日間から。
t-PA+DNase併用が排液を改善し、外科的紹介の頻度と入院期間を短縮する
海外ではよくこちらが使用される(らしい)。
(NEJM.2011;365:518–26.)
両者の治療に差は無し(血胸はt-PA+DNAseが多かった。)
ただし、ウロキナーゼは25万U 1日2回5日間
(ERJ Open Res.2019;5(3):00084-2019.)
外科的治療
ドレナージ不良症例やウロキナーゼ投与をしても改善の無い場合には早期にビデオ補助下胸部手術(VATS)など外科的治療を検討
まとめ
・胸水のpH7.2以下、Glu40-60以下、LDH1000以上はドレナージが必要な膿胸かも
・抗菌薬は院内or院外での観点と、嫌気性菌をカバーするか検討(個人的にはなんだかんだでABPC/SBT使用が一番多い)
・ドレナージはウロキナーゼ併用も検討
結論:膿胸の患者を診たら、「お、JAやん」というと安いベテラン感が演出できます。