2022/05/11

投稿日 2022/05/11

この症例は治療しなくて大丈夫?(再掲)

※この記事は2021/2/3に公開したものです


スミヨシです。


今日も楽しく宮迫さんのYouTubeを見てました。

手越君の家にオムライスを届けにいくけどドッキリのつもりが普通に手越君が対応してて普通のお家訪問の動画になっていました。


この動画の中で気になる発言がありました。


13:00あたり見てください。

「筋肉痛になって、筋肉の壊れた数字が、通常70くらいなのが、9000!

と述べられています。

おそらくはCKのことだとは思います。

さて、CK 9,000U/Lの方がいたら皆さんはどうしますか。
宮迫さんはとくに入院もせずYouTubeの撮影していますが、これはよかったのでしょうか?





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横紋筋融解とCK

CKの数字だけ見ると、立派な横紋筋融解だと思います。
明確な数字のCut offはないですが、通常は1,000U/L以上かと思われます。
さらにCK>5,000U/L以上は19%に腎障害が起きます。
横紋筋融解の治療は腎障害を起こさないことです。
私も研修医には、CK5000以上はひとまず点滴開始の基準、とよく教えます。

(NEJM 2009;361:62-72)
(J Trauma-Injury Infection and Crit Care 2004;56:1191-96)

横紋筋融解のリスクスコア

それでは宮迫さんを担当した医師はやばい医者なのでしょうか。
そんなことはありません。
まあ実は横紋筋融解の腎障害のリスクスコアがあります。
(JAMA Intern Med. 2013;173(19):1821-1828)

カッコ内スコアが
5未満⇀重度のAKI、死亡リスク2.3%
10以上⇀重度のAKI、死亡リスク61.2%
▽50-70歳 (1.5)
▽70-80歳(2.5)
▽80歳より上(3)
▽女性(1)
▽Cre1.4-2.2mg/dL (1.5)
▽Cre>2.2mg/dL (3)
▽Ca<7.5mg/dL(2)
▽CK >40,000U/L (2)
▽痙攣、失神、運動、スタチン、筋炎以外での誘発(3)
▽リン4.0-5.4mg/dL (1.5)
▽リン>5.4mg/dL (2)
▽HCO3-<19mEq/L(2)



上記はおそらくCK>5,000U/L以上が目安です。
これを宮迫さんにあてはめると、ほかの採血データは不明ですが、年齢の1.5点しかあてはまらず、リスクはとても低いと思います。
実際宮迫さんが受診されたら、点滴はするかもしれませんが、入院にはならないと思います。

担当した医師はきわめて妥当な判断で帰宅にしたと思います。

マラソンランナーが失神や脱水で救急受診するとCK100,000とかいうひともいますが、たいてい大丈夫です。
明確な運動誘因の横紋筋融解はたいてい大丈夫なはずです。

ささいなことですが、知らないとそれなりに焦ることもあるので、知っておくと便利だと思います。
ではまた。


結論:生まれ変わったら手越君になりたい