私の心のふるさと、札幌。
夏はきちんと暑いのですが、湿気も少なく、30℃を超える日もそんなに多くはないです。
そういうわけで、沢山の救急車を見ている病院でしたが、ほんとうにまずい熱射病とかは見たことありませんでした。
ところが京都や福知山というところは、夏は暑すぎ冬は寒すぎの、およそ人が住んでいいとは思えない、過酷な地域です。
熱中症もバンバンいます。
てか、札幌にいてあまり気づかなかったですけど、日本って熱中症多くないですか?
僕がパチンコ屋経営してたら、
「高齢者の皆さま、夏は熱中症予防のために、涼しい当院で休憩ください!!」
みたいなキャッチフレーズ作るのに。
医療費削減できてパチンコ屋はもうかるので、みなさんちょっとこのキャッチフレーズ検討してみてください。
熱中症で入院になる人がちらほらいるので、今さらながら勉強してみました。
ぶっちゃけただのレビューのまとめです!!!!
※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。
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81歳女性
畑で倒れているところを発見され救急搬送
Afがあり、βblocker服用中
来院後全身強直性のけいれんあり。
JCS300 BT40.4℃ (直腸温)
対応は?
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熱中症
(NEJM 2019;380:2449-59)
(日本救急医学会 熱中症診療 2015)
( )
(Br J Sports Med. 2005;39(8): 503–7.)
熱中症の分類
熱中症は欧米では大きく4分類
熱失神 立ちくらみ、失神
熱痙攣 筋痙攣 38℃以下 水分補給のみで塩分摂取していない
熱疲労 細胞外液減少、悪心、嘔吐、頭痛 38-39℃
熱射病・日射病 40℃以上 中枢神経症状+
日本救急医学会ではこのように分類
Ⅰ° めまい 立ちくらみ 生あくび 大量の発汗 筋肉痛 こむら返り 意識障害無し
Ⅱ° 頭痛 嘔吐 倦怠感 虚脱感 集中力や判断力の低下
Ⅲ° 次の3つのうちいずれかを含む。
・中枢神経症状 ・肝、腎機能障害(入院加療が必要なもの) ・血液凝固異常(これはⅢ°の中でも重症)
また、原因によって2種類に分類できる。
古典的熱中症(clasical heat stroke)
⇀高温環境でおこるもの。
高齢者、屋内で多く、数日単位で悪化。予後不良
労作性熱中症(exertional heat stroke)
⇀運動で起こるもの。
若年で多く、屋外で多く、数時間での悪化。予後良好。
熱中症のリスク
・生物学的要因
高齢者 脱水 肥満 糖尿病 心疾患 アルコール多飲
精神疾患 ポリファーマシー
・環境因子
空調がない 低所得 寝たきり 要介護
社会的孤立 外に出歩かない、交通手段がない 建物の最上階
・薬物
▼皮膚からの熱吸収を促進
αアドレナリンアゴニスト 抗コリン 心機能低下(βB、CCB、抗精神病薬)
▼循環血漿量低下
利尿薬 下剤 アルコール
▼視床下部機能低下
フェノチアジド(クロルプロマジンなど)
ブチロフェノン(ハロペリドール)
抗うつ薬
MAO阻害薬
▼その他
抗甲状腺薬 サリチル酸
治療
速やかな冷却、脱水補正、臓器障害の治療、中枢神経合併症の治療
霧吹き+扇風機で気化熱。
氷、アイスパックなどを首、腋窩、鼠径部に。
直接氷水につける→したことない。ERではなかなか難しい?
冷却輸液は有効性を示した論文はない
40.5℃以上は予後不良
38℃以下になれば中止。医原性低体温を惹起する。
アスピリンやアセトアミノフェンは熱中症患者には効果がなく、むしろ臓器障害悪化のリスクあり、使用しない。
→異常時指示に注意
まあ、実際分類とかはおいておいて、冷却しつつ、意識障害あれば、SAHなど除外で頭部CT、みたいな感じですかね。
冒頭の症例はデータや性別、年齢などいじっていますが、痙攣はほんとです。
実はあせりました。
入院後再発はありませんでした。
私の師匠は札幌の熱中症は全例、熱中症以外の疾患がないか注意しろ、と言われていました。
そんな札幌は、ストーブの普及率が高く、家屋の気密性が高いので、冬場にCO中毒合併の熱中症が来ます。こわいですねえ。
ではまた!
結論:サウナも熱中症みたいなもんなので、絶対体に悪い。パチンコの方が身体にいい。
Medical Practice 2022年臨時増刊号(39巻):マイナーエマージェンシーで執筆しました。
私は熱中症の記事を担当させていただきました。