スミヨシです。
健診で、腫瘍マーカー陽性だった、という理由で受診される方が結構います。
ほんとに結構います。
腫瘍マーカー、無症状の方に検査しても意味がない、というのは”choosing wisely"の名のもとに、我々世代はよく教育されています。
(General Medicine .2015;16(1):3-4.)
このあたりの数字をうまく言えたらいいな、と思い調べてみました。
健診ではCEAやCA19-9が主に測定されますかね。
CEA
喫煙であがったりするのが有名だと思います。
古いデータでは、日本人健診CEA陽性のうち、何らかの腫瘍だった症例は、1.7%
(健康医学 1988;3(1):65-7)
まあ、今はPETとかもありますし、診断技術も上がっていますから、もう少し高い可能性もありますが、得てしてこの程度でしょうか。
CA19-9
膵癌のマーカーとして知られる
人間ドックでCA19-9高値を指摘、その後2回以上高値であった320例のうち、8例が腫瘍あり(膵癌4 胆管癌1 十二指腸癌2 大腸癌1)
腫瘍の陽性的中率は2.5%(膵癌にしぼれば1.25%)
8例中7例がStageⅢ以上で4例が進行がん
癌のない患者のCEA中央値は49.5U/ml(37.1-1559.6)
癌のある患者のCEA中央値は72.0U/ml(38.5-2967.9)
(人間ドック.2015;30:22-9)
陽性的中率の低さと、早期がんでは陽性は少なそう。
スクリーニングとしてはこちらも厳しそうですね。
数値の大小でもあまり語れなさそうです。
PSA
National Cancer Institute のPSAスクリーニングのページがよくまとまっています。
PSAによる前立腺がん早期発見でも、前立腺がん死亡率は減らないことや、過剰治療による尿失禁や勃起不全などのデメリットが示唆されています。
US Preventive Health Services Task ForceのProstate Cancer: Screening では、
・70歳以上ではPSAスクリーニングをしない
・55-69歳では要相談、無理にスクリーニングをしない
となっています。
私見
結局のところ、CEAやCA19-9は偽陽性も偽陰性も多い、という点、特に早期がんでは陽性になりづらそうな点などから、スクリーニングにそもそも向いていないし、診断にも向いていない指標だと思います。
とはいえ、健診で測られてしまうので、内科外来には受診しますよね。
ひとまずは無症状なら説明のみで終わりにすることが多いです。
ただ、検査希望の人とは無理にケンカせずに造影CTなどとったり、下部内視鏡をしたりすることもあります。
経済的にはよくないですけどね。
PSAも前立腺がんを診断することのメリットデメリットを踏まえ、相談することが多いです。
とはいえPSA高値は内科ではなく泌尿器に受診することがほとんどですけど。
説明のみで帰宅にするにしても、来年数字が上がってたらやっぱり検査が必要かも、とか、腫瘍マーカーとは関係のない癌や病気が見つかる可能性も一応ルーチンで説明しています。
健診から腫瘍マーカーがなくなるといいのですが、なかなかそうはいきませんね。
ではまた。
結論:学生のときにCA19-9を読める奴はゼロ