2022/11/15

投稿日 2022/11/15

コロナのおかげで、低リスクのインフルエンザにタミフルを出さない指導をするチャンスが来ている

  • スミヨシです。





さて、いったいこの記事が出るころにコロナはどうなっているでしょうか。。


南半球のオーストラリアでは、コロナに加え5-7月にインフルエンザが流行していました。

新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン 今シーズンは両方接種して流行に備えよう


去年も同じこといってましたが今年こそインフルがはやるかもしれません。

かつては冬の救急外来の熱はまずはインフル検査して、陽性ならタミフルだして、そうじゃなければどうするか考える、みたいな時代もあったと思います(私の職場だけ?)。


なんでもタミフル、本当はよくないんですが、タミフルを出さない診療ってなかなか浸透してなかったように思います。

ところが今はコロナで、高リスクでない人は対症療法で帰すというムーブに皆さん慣れてきたのではないかと思います。

若手はしばらくインフルをみてないですし、「インフルは全員タミフル」からの脱却ができるなら今でしょう!


実は先日インフルエンザを見かけて、研修医についてもらいました。

まるでマラリアを担当しているかのごとく新鮮なリアクションばかりしてくれてました。

もう既に今の5年目以内の医師はインフルエンザ全然見たことない、なんて環境になってしまっているでしょう。


改めてインフルエンザをまとめました。


インフルエンザについて

症状

・咳・鼻水・咽頭痛(特に咳)

・38℃以上の発熱

・全身症状(関節痛・筋肉痛・倦怠感)

特に咳など上気道症状の無い発熱患者は別診断を考慮する。

(PLoS One.2018;13e0197163.)

検査

抗原検査が主

感度 62.3% 特異度 92.8%

(Ann InternMed.2012 ;156:500-11)

発症後 12-48hが感度が高い

(感染症学雑誌.2004;78:846-52)

とはいえ、実際のセッティングではコロナがいるんですよね。。

コロナ+インフルの抗原で同時に検査、どっちかひっかかればそれに応じた対応、になるのでしょうか。

上気道症状有る無しを考慮せずに検査、にある程度慣れなければいけないのかもしれません。


インフルエンザ濾胞





ID CONFERENCE 2012/1/23 忽那先生 記事より


インフルエンザの際にイクラのような濾胞ができる。

感度 95.46% 特異度 98.42%

(General Medicine.2011;12:51-60)

抗原よりいいじゃん、ともてはやされるのですが、スペシャリストが診断したうえでのこの感度特異度だとは思います。

おまけに、他のウイルス感染でもでることもあり、Covid-19とのツインデミックの環境ではあまり使えないかもしれませんね。

ロストテクノロジーになりそう。


治療

軽症:対症療法 or/and オセルタミビル(タミフル®)

重症:ペラミビル(ラピアクタ®) or/and オセルタミビル(タミフル®)


他の薬剤はこの際になかったことにしましょう。そうしましょう。


抗ウイルス薬を使用した方がいい患者

いろいろと基準はあります。

(Clin Infect Dis.2019;68(6):e1-e47)

私見ですが成人の治療に関しては、コロナ禍においては、Covid-19に抗ウイルス薬を投与する基準と同じでいいんじゃないかと思っています。

その方が混乱もないですし。


オセルタミビル(タミフル®)

内服:経口 1回75mg 1日2回 5日間

・有症状時間を16.8時間へらす

(Cochrane Database Syst Rev .2014;(4):CD008965.)

・有症状時間の短縮、下気道感染、入院の減少
(Lancet.2015;385:1729-37. )

ハードアウトカムを改善させるすごい薬、というわけでは無いです。
そもそもインフルエンザは死亡率そんなに高くない疾患ですが。。

若年者においてはメリットはそんなに無いのに副作用リスクがあるというのがタミフルを出さずに診療したい理由の一つですね。
(面とむかってタミフルって副作用が多いのかと聞かれると困るけど)

ペラミビル(ラピアクタ®)

静注 1回300mg 単回 重症例では600mg,複数回投与も考慮
オセルタミビルとの併用も検討

・有症状期間短縮が、オセルタミビルに非劣性
(Antimicrob Agents Chemother.2010;54(11):4568-74.)

点滴なので重症患者、挿管患者に使用を考えます。
ゼビュディ外来をしていた施設ならそこで単回投与で帰宅、も手かもしれません


肺炎患者

もはや、今のCovid-19(2022年9月現在)の治療の主体は抗菌薬ですよね。
肺炎を起こしている高齢者の多くはCovid-19によるウイルス性肺炎ではなく、誤嚥性肺炎が多い印象です。
インフルエンザ+肺炎の場合も同じことが起きるでしょうし、黄色ブドウ球菌による肺炎が通常より多いのでそのカバーが重要だと思います。


まとめ

元気な悪化リスクの無い若者のインフルは対症療法で帰すことを考えましょう。


今年の冬はとにかくCovid-19+インフルエンザのダブルパンチに警戒だと思っています。
ワクチン接種も皆にすすめましょう。

ではまた。

結論:働く細胞のインフルエンザウイルスはちょっとやりすぎた感がある。