2022/11/30

投稿日 2022/11/30

Staphylococcus saprophyticusが尿培養から出たら起因菌かも




スミヨシです。

福知山にいたときに、20代の女性のCVA叩打痛、発熱、頻尿のある腎盂腎炎が土曜日に入院、月曜日にコンサルというのがありました。
尿培養はGPC cluster、血液培養は陰性継続中
CTRX投与後症状は改善傾向、でも本人の強い希望で帰宅方針。
自分はST合剤処方して帰しました。外来フォローはしましたが。

科内カンファでこの患者の病態など踏まえ何が考えられるか議論になりました。

この患者の病態の想定は?
という話し合いになり、挙がったのが、
・Staphylococcus aureus菌血症なのではないか?
・そもそもUTIではないのではないか?

でした。

でもアトピーの無い若年のStaphylococcus aureus菌血症は変だし、そうなら血液培養早めに生えてほしいなあ、と思いました。
そもそもUTIでないのでは、とかいわれても頻尿あるし、CT撮られてましたが粗大な病変はなさそう(腎膿瘍や他の疾患はなさそう)だし。。

「自分の想定ではもしかしたら〇〇が生えるんじゃないかと思っています」
なんて言ってみたんですが、何それ?みたいな反応でした。
あんまり有名じゃないんですかね。

外来フォローでは症状改善していました。
血液培養は陰性、尿培養からはStaphylococcus saprophyticusが検出されていました。

Staphylococcus saprophyticus

知ってたら反応するし知らないと無視しちゃう菌シリーズですね。

女性のurogenital tractsの5-10%にコロナイズされている
セクシャルアクティビティの高い女性の単純性UTIの起因菌になりうる
(Mandell 9th)

市中で発生するUTIの5-20%を占める
16~25歳の女性のUTIの最大42%を占めている(E. coliに次いで2番目の起因菌)
※これがよく言われてて「Gram-Positive Uropathogens, Polymicrobial Urinary Tract Infection, and the Emerging Microbiota of the Urinary Tract」が引用されていることが多いがさらにその元文献は1978年のものだったりするので現代に当てはめていいかは不明。
(Microbiol Spectr. 2016;4:10.1128/microbiolspec.UTI-0012-2012)
 (J Infect Dis. 1978;138:791–797.)

治療
サンフォード
1st セファレキシンかオーグメンチン 2nd キノロン

ほとんどメチシリン感受性とのことですがそうでもない気もしているので、自分はST合剤やLVFXでの治療が多いです。感受性次第ですね。



そもそも膀胱炎の尿培養はとらないことが多いでしょうから、意外と出会わない気もしています。
自分は2例しか見たことないです。
男性や小児でも報告はあるみたいですが、報告されるレベルの頻度だと思います。

とにかく、「Staphylococcus saprophyticusが若年女性の尿培養から検出されたら起因菌かも」と知っておくのが重要です。

検査室によっては尿のGPC-clusterを同定しないとか感受性ださないとかあるでしょうからそこは注意ですね。
ではまた。


結論:Staphylococcus saccharolyticusとかいう紛らわしい菌がいるぞ!!