2022/01/12

投稿日 2022/01/12

【症例】40歳男性、飛行機着陸時の頭痛(再掲)

スミヨシです。


※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。

飛行機を降りた後に、頭痛がする、という方がいました。

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40歳男性

飛行機に乗って着陸するころに、目の奥を中心とした頭痛が発生。
いつもは頭痛もちではない。
来院時には頭痛消失している。
飛行機にのると2回に1回は頭痛がする。

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さて、問診で何を聞きますか?



もちろん、普通の頭痛としてのレッドフラッグサインを聞くことが重要です。

付け加えて、飛行機に乗ったあとの頭痛で個人的に鑑別にあげときたいのは、
飛行機頭痛と潜水病ですね。






飛行機頭痛

気圧変化で惹起される片頭痛様頭痛。
基本は着陸後突然発症の、鋭く激しい頭痛。
ただし、離陸時でも発症してよい。
30分以内に消失することが多い。
基礎疾患として、片頭痛、緊張型頭痛、副鼻腔炎など。
( 2017; 18(1): 84.)

離陸前のナイキサンもしくはトリプタン服用は予防に有用。
(Curr Pain Headache Rep2018 Jun 14;22(7):48.)

得てして、飛行機から降りた後、病院に直行したとしても、それなりに時間が経っているでしょうから、無症状のことも多いかもしれません。
ただ、患者の安心は得られるので、知っておいてバチは当たらないと思います。
私は自分の勉強のためと、副鼻腔炎の検索のために頭部CTを撮像しますが、典型的な病歴がとれれば必須ではないかと思います。

トリプタンはやや高値なので、安価なNSAIDs処方をしています。
まあ、確定診断の方法があるわけではないので、頭痛外来誘導でもいいかもしれません。


潜水病

正しくは減圧病と、減圧症と表記するのがよいかもしれません。
減圧病₌動脈ガス塞栓+減圧症

ダイビングの後に血中に溶解した窒素などの不活化ガスが、気圧の変化によって気泡化し、発症。
関節痛、筋肉痛、嘔気などが多いが、塞栓による脳症状もあり(巣症状やけいれん)
書いといてなんですが、頭痛は少ないかもしれません。

治療:
100%酸素投与
高圧酸素療法(US NAVY Treatment Table 6)
Lancet2011;377(9760):153-64.


宮古島や徳之島といった南の島で働いてる時には、そんなに珍しくない疾患でした。
札幌で働いていた時も、高圧酸素療法の機械がある施設だったので主治医としては見ていませんでしたが、沖縄や奄美などでダイビングしてから帰ってきていた人たちが発症していたのを見たことがあります。

画像でガスを探すのは難しいので、脳卒中疑いでなければ早く高圧酸素療法を行う、ということになっています。
それまではまずは100%酸素投与を開始します。

高圧酸素療法の治療は、US NAVY Treatmentというものに従います。
また、治療期間中は飛行機にのるのは禁止です。
よそから島に来た人は大変だなあと思いました。

鉄則として、
離陸12時間以内のダイビングは減圧病のハイリスクです!
複数回のダイビング後なら、48時間はハイリスクになります。
帰る日と相談してダイビングは楽しみましょう!
(Aviat Space Environ Med2002 Oct;73(10):980-4.)



ちなみに、症例の方は副鼻腔炎もちで、頭部CTで出血なし、副鼻腔炎の所見あり。
羽田→新千歳空港のフライトでしたので、ダイビングはしていない。
おそらく飛行機頭痛かと思い、NSAIDs処方しました。

まあ、こういう飛行機後の頭痛とかいう病歴をやたら過信すると、いつか脳出血やくも膜下出血を見逃すかもなという怖さもあるので、やはり致死的な疾患の除外からしていくのがよいかと思います。

ではまた。


結論:UpToDateにはアイスクリーム頭痛のページがある