スミヨシです。
あっという間に2021年も終了ですね。
個人的には久しぶりに総合内科をして、初診などをして、久しぶりにいろいろな範囲の勉強をした1年でした。
去年はまさにコロナ漬けだったので。。
来年京都市に戻ると、しばらくは総合内科をメインで行わないはずですが、総合診療スピリッツを絶やさずに医療に臨みたいものです。
札幌で総合内科をしていた時に、出会った症例をふと思い出したので今年最後の症例にします。
※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。
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85歳女性
3日前から体調が悪い
明らかなバイタル異常は無いが、
pH 7.1 HCO3- 7 PCO2 20 Lac 15
痙攣はしておらず、チアノーゼなどもなし
血糖100 尿ケトン陰性
CTで腸管虚血なし
さて次の検査、問診は?
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確か総合内科1年目の時の症例です。
血圧低下が無く、血圧低下・痙攣・腸管虚血の無い乳酸アシドーシスの鑑別、どれくらい浮かびますか?
僕の中ではこの時点での鑑別は、
VitB1欠乏と、メトホルミンの副作用のいずれかかなあ、と思います。
あとはSGLT2阻害薬の正常血糖DKAとか?
でも乳酸そこまであがるか疑問ですね。
VitB1欠乏は、たぶん不思議な力でピルビン酸がアセチルCoAになれずに乳酸がたまるという機序ですね。たぶん。
メトホルミンも不思議な力でブドウ糖⇀乳酸を増やしたり、肝臓の糖新生を減少させたりで、乳酸がたまるんですかね。
ここはまあ、僕にとってどっちでもいいところです。。
で、この人は、VitB1は問題ありませんでした。
医者にかかっていない方で、最近体力が落ちてきて、施設入所を検討。
↓
医者にかかると、HbA1c 7.2%
↓
2週間前にメトホルミン開始
という病歴でしたので、メトホルミン中止、一応ラクトリンゲルではなく、酢酸リンゲルで補液してたらいつの間にか意識など改善しました。
そういうわけで、珍しい、メトホルミンの乳酸アシドーシスでした。
メトホルミンは3錠分3で開始されていて、特に過量でもないですが、そもそもこの年齢のHbA1c 7.2%に治療が必要だったのか、あと、高齢の方にメトグルコを出すのをどこまで許容するか、て部分かと思います。
個人的に高齢者もメトホルミンでよいと思いますが、日本で医療をやる以上、注意は必要ですね。
相当珍しい例ですし、まあぶっちゃけ、乳酸アシドーシス起こっても致死的にならなかったよな、という経験から、メトホルミンの乳酸アシドーシスに過度にビビるな、というのが個人的意見です。
なお、メトホルミンによる乳酸アシドーシスは4.3/10万 人年、とのことで、相当レアです。
あまりこの副作用を恐れるのもよくないですね。
(Cochrane Database Syst Rev. ;2010(4):CD002967.)
この症例、メトホルミン中止、DMの治療もいらないんじゃないですか?という提案をしてかかりつけに戻しましたが、カムバックしてきました。。
なぜ戻ってきたか?
それはまた次回。
大晦日と年始には全然医学に関係ない更新をしたいと思います。
ではまた。
結論:よいお年を、という挨拶を大晦日に言ってはいけない、って誰が言い始めたか不明だが、本当かもしれないので、みなさん、良いお年を。