スミヨシです。
リステリアといえば髄膜炎で忘れてはいけない起因菌の一つです。
京都に来てからはあまり見ませんが、札幌で勤務していたころは割と血液培養から検出されていました。
おそらくは酪農関係で乳製品を口にする人が多いからか、と勝手に思っています。
で、おそらく非妊婦では腸管からの侵入が多いかなと思っているのですが、実際血液培養から生えた際に、髄膜炎をどこまで除外すべきか、悩ましいと感じています。
師匠が推奨していたので、自分は必ず腰椎穿刺を施行します。
ですがどうやら全国万人が皆そうしているわけでは無さそうです。
さて、リステリアが血液培養から検出された際に、髄膜刺激徴候が無かったとしても髄液検査はすべきでしょうか。
Listeria monocytogenes菌血症
リステリア菌血症は妊婦、高齢者、免疫不全者で起こる。
25%が先行症状として下痢を呈する。
3か月死亡率は45%
(Lancet Infect Dis.2017;17:510-9.)
ただ、このLancetの論文(通称MONALISA)やUpToDate®を見ても、「リステリア菌血症は髄液検査すべき」という記載はなさそうでした。
なんなら、菌血症のうちどれくらいが髄膜炎か、というデータも無さそうでした。
Googleに聞いてみた
シンプルに「リステリア 菌血症 腰椎穿刺」で検索してみました。
IDATENの記事(発熱・意識障害で受診した90歳代女性)などはヒットします。
日本の感染症の先生の記事では「リステリア菌血症では腰椎穿刺が必須」と論じているものが多いですが、その根拠はとくにありませんでした。
「Listeria bacteremia」などで2日くらい調べましたが少なくともこのことを論じている論文はなさそうでした。
Twitterに聞いてみた
さて、マジでヒットしないのでTwitterを検索してみました。
「Listeria bacteremia」で検索すると、1件、興味深いツイートが出てきました。
#IDtwitter Would you perform LP in a patient with listeria bacteremia in the absence of meningeal signs or symptoms? @ShohamTxID @theIDPharmD @alfred_luk @transplantID @Cortes_Penfield @IdVilchez @wfwrighID @lizavaldivia86 @danielatello0 @PrathitKulkarni pic.twitter.com/gUv17ldBxb
— Hector Ojeda-Martinez (@Acinetohector) August 7, 2021
NYの感染症医だそうです。
まさにドンピシャ。
このツイートにいろいろな先生が返信を返していました。
結論としては
「人によって意見が違う」
ですね。
疫学が関係するのかもしれませんが、全例に腰椎穿刺する派と、症状がなければしない派がいました。
多くの感染症医が意見が違うなら、結論を出しようがないですね。
結局どうする?
私自身は、「禁忌や特別な理由がなければ全例腰椎穿刺する派」です。
そして腰椎穿刺できなかった場合も、髄膜炎に準じて3週間治療をすべきか、状態をみて考慮した方がいいかも、なんて思っています。
以前教えてもらいましたが、
リステリア髄膜炎は入院時点では42%は髄膜刺激徴候がでません。
(Medicine.1998;77:313-36)
症状もなんだか亜急性に来ることが多い印象で、血液培養が生えた際には意識障害がなくても、後で神経症状が出始めて脳膿瘍がみつかる、なんてパターンもあります。
じゃあ治療が劇的に変わるか、というとそうでもないのですが(ゲンタマイシンをどうするかとかはありますが)、説明として髄膜炎があるので治療しっかりしましょう、とかは言えるかもなんて思っています。
もし検査しなくても後から症状出れば検査をする、というのがよいとは思います。
髄液検査ではなくMRIでもよいのかもしれませんが、それも結局撮りづらい人もいるでしょうし、ケースバイケースかもしれません。
リステリアの研究はブルーオーシャンかもしれません。
あと、感染源不明のリステリア菌血症は大腸がん探しのために、内視鏡をするか、も似たような議論になるかもしれません。
私は一般的なヘルスケアもかねて勧めるかなあ、と思っています。。
ではまた。
結論:アステリアという会社があるが多分由来はリステリア
Listeria monocytogenes感染はアスペルギルス抗原偽陽性の原因になる
アスペルギルス抗原 偽陽性といえば、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)やオーグメンチン(AMPC/CVA)なんかが有名です。