※この記事は2021年2月に公開したものです
スミヨシです。
この前研修医の先生と、くも膜下出血の話になりました。
で、ストレス・インデックスを知らないと言われました。
先に言いますが、使わなくても臨床に影響ほとんどないですし、むしろ変に使わない方が救急ではうまくいくのかもしれません。
私は一度だけ、札幌で研修医していた時に助けられたことがあって、恩があるのと、話のネタにはなるので研修医には話すようにしてます。
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症例
80代女性
真夏に、道ですわっているところを通行者に発見され、救急搬送
救急隊からの入電内容は、「熱中症で座っていて立ち上がれなくなった高齢者」
こんな感じの方の搬送で、ひとまず部屋を冷やして、点滴でもするか、という感じ。
なんとなく軽症な触れ込みだし、まあ採血くらいするか、みたいな感じでした。
JCS 3 BP 180/150mmHg(多分計測できていない?) HR 120/min
BT 36.8℃ RR 24/min SpO2 98%
で、へんな意識障害もあるし、血圧よくわからんし、どうしたものかね、と思っていたところ、血液ガスをみると、K 2.9 BS 180でした。
ストレス・インデックス高値でもあり頭部CTへ。。
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だいぶ実際の症例からは病歴もバイタルもいじってますが、この症例はくも膜下出血でした。
まあ、正直、意識障害もあるし、頭部CTも腰椎穿刺もするだろ、と文面みると思いますよね。私もそう思います。
ただ、一度熱中症という触れ込みできた患者さんにこの患者はやばいですよ!とエンジンをかけるときに、研修医の言葉が経験豊富なベテランの看護師に届かないときもありますよね?
たいていは看護師さんの方がやばそうエンジンの精度が高いですし、研修医だけがわめいていることが多いです。
でもこのときは、札幌の熱中症は全員おかしいと考えよ、という師匠の名言と、直前にストレス・インデックスというものがあるのを勉強していて、さらにそのことを救急の先生がかぎつけて、かなりスムーズに診断・治療をすることができました。
ストレス・インデックス
ストレス・インデックスは
血糖/血清カリウム
の値で示すもので、頭痛がある患者で、ストレス・インデックス40以上なら、脳出血とかSAHの可能性あがるんじゃないだろうか、というものです。
調べても日本の文献ばかりですが、なんとなくこの概念がひろまったのは、国立国際医療研究センターから発表された、subarachnoid hemorrhage prediction score作成のものかと思います。(この論文自体はストレス・インデックスを使用はしていませんが。)
(日救急医会誌 . 2011; 22: 305-11)
頭痛患者で
BS>130
sBP>140
K<3.5
WBC>8,000
各項目1点で、
0点ならSAH除外可能
4点ならSAH 64.9%
というものです。
これ以降、SAHと、BS、Kをからめる論文が散見されます。
近年はスコアリングよりも重症度や予後の指標としての使用が多い気がします。
原理としては、SAHは強烈なカテコラミンリリースが発生するので、血糖が上昇、同時にKの細胞内シフトが起きるので、ストレス・インデックスが上昇するというわけです。
ルールアウトに使える可能性はありますが、あまりルールインには使えないのと、日本の救急でのCT撮像の閾値の低さを考えると、そこまで重要な指標ではないとは思います。
わたしの症例もストレス・インデックスは60を超えていますが、そもそも頭痛がないですし、ラッキーパンチでしたね。。
個人的には、このK低値は注意しており、よくわからない高齢者の主訴があるときに、低Kや血圧高値があると、もしかするとカテコラミンリリースがあるのかなあと思っています。
SAHは心電図で巨大陰性T波があったり、たこつぼ心筋症や肺水腫があったりと、異常な低Na血症起こしたりと面白いなあとは思います。
私が治療するわけではないので、脳外科の先生の苦労は知る由もありませんが。。。
あと、繰り返しですが、ストレス・インデックス0点なので、頭部CTいらないと思います、ってアセスメントするのも脳外科や救急の先生に怒られるかもしれないので注意しましょうね。。
表題の件に関して、私自身は、ストレス・インデックスは過信しませんし、DMの人に使えませんから、微妙なものだとは思っています。ただ、低K高BSがカテコラミンリリースを示唆しているかも、というのは知っておくといつか役に立つかもなあ、というスタンスです。
ではまた。
結論:この時期の救急やってる研修医に適当に血ガスとったら多分みんなストレスインデックス爆増してる
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