スミヨシです。
当直明けにTwitterを見てると、自由診療で不眠症に対してプロポフォールを使用しているクリニックがあって、話題になっていました。
もちろん悪い意味で。
いろいろ考えるなあと思いましたが、まあやはり調べないことには始まらないので、いろいろ見てみました。
不眠症×プロポフォール
Propofol-Induced Sleep: Efficacy and Safety in Patients with Refractory Chronic Primary Insomnia
(Cell Biochem Biophys.2011;60:161-6.)
28-68歳の少なくとも3か月続く、ベンゾや非ベンゾなどの薬物療法が無効の原発性不眠症患者103名
プラセボ群(n₌39) vs プロポフォール群(n₌64)
プロポフォール群は3.0g/L 2h持続点滴を5日間(ここの投与量の記載が良くわかりませんでした)
治療の朝と6か月後にLSEQというスコアリングで自己評価
また、ポリソムノグラフィーも使用し睡眠時間などもろもろ計測
結果
LSEQ
プロポフォール投与群で、入眠のしやすさ、睡眠の質、覚醒のしやすさ、覚醒後の行動の正確さにおいてプロポフォール投与群に改善がみられた
ポリソムノグラフィー
睡眠時間の増加(277.59±52.76min vs396.32±66.37min)
入眠後の覚醒回数の減少(10.12±5.62 vs3.38±2.14)
副作用
プロポフォール群で傾眠が4例、めまいが2例、軽い吐き気が2例
6か月後には有害事象なし
機序は割愛、ですが6か月後にも効果がありそうに見えるのは意外でした。
プロポフォール投与後も多くの患者は睡眠薬を併用していた、ということもあるので、データに本当にバイアス抜きの有意差があるのかちょっと微妙なのと、6か月以降の評価は不明なところと、n数が少ないので重篤な副作用が今回は無かったところの評価のしづらさはありますね。
Pharmacological interventions to improve sleep in hospitalised adults: a systematic review
(BMJ Open.2016;6:e012108. )
睡眠に対する薬剤介入のレビュー
・プロポフォールvsベンゾジアゼピンで睡眠に対する質の差は無し。中途覚醒のデータはプロポが少ないというものも、変わらないというものもある。
(挿管患者やICU患者が入っていそう。)
今回の議論は重症患者は入れない方がよいですね。
プロポフォールは不眠症治療によい?
で、タイトルに戻りますが、自分は反対ですね。
おすすめできません。
極論、眠れなくても死なないのです。
不眠症は治療可能であればすべき疾患ですが、命を懸けて治療せねばいけないものかは不明です。
もちろん薬剤が効きづらい方が多数いるのだと思います。
QOLに著しく響きます。
そのような方でもプロポフォールは確実にその場で睡眠可能です。
しかしながら血圧低下や窒息のリスクがあるわけです。
クリニックで使用した時に、まま起こるこれらリスクをどう回避できるのか、また、人工呼吸器や昇圧剤がどれほどそのクリニックで使用されているかを考えると万が一のイベントに対応できないのでは、なんて思ってしまいます。
6か月後のイベント改善といわれても、じゃあ1年後は、2年後は?
どれくらいの頻度でプロポフォールを投与するのか?
当然、保険診療ではないという点もあります。
国は認めていないわけです。
自由診療はなんでも自由、はよくないと思いますけどね。
マイケル・ジャクソン氏はこれで命を落としていますので。
(Ir Med J.2013 ;106:26-7.)
GLP-1作動薬によるダイエットとか、筋トレにステロイドみたいなもんですよね。
効果があったとしても、実臨床で使用していいか、推奨されているかは、また別です。
多くはデメリットとコストパフォーマンスが度外視されていることでしょう。(そもそもメリットから怪しいものもあるが)。
それを分かったうえで、熱い気持ちで不眠症治療をされているなら、何も言うことはないんですけどね。
最後に件のクリニックのホームページを見てみましょう。
(https://light-clinic.co.jp/service/intravenous-anesthesia/)
なんでウリがダイエットなんや!!!!
値段も お高いな!!!!
さよなら!!!!
炎上してた中田敦彦氏のメトホルミンの動画
ただ、くすりはリスクとはいったものです。 メインの効果ではなく、副次的な効果をねらっての医師処方以外の薬剤使用はしないほうが幸せです。