スミヨシです。
総合内科をやっているとたまに対応に困る症例を外科系から紹介いただくことがありますよね。
自分は師匠が感染症医なのと、札幌は割と高齢者の梅毒が多いのであまり気づきませんでした。
でも福知山にいったときに、術前スクリーニング採血でたまたま見つけた梅毒陽性の相談が結構皆困っていたなあ、と思いました。
そもそも術前採血で梅毒とかいらないんですがそれはさておき。
地方だとあまり梅毒の方、少ないんですよね。
術前スクリーニング採血でたまたま見つけた梅毒陽性
対応をシンプルにするなら
①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出
②病歴・治療歴を確認
③後期潜伏性梅毒として治療を検討
迷ったら後期潜伏性梅毒に準じて治療してしまうのがよいのかもしれません。
①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出
梅毒陽性といってもパターンがあります。
まずはどっちが陽性か確認です。
RPRはいわば活動性の指標で、TPHAは一度かかると一生陽性です。
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▾両方陽性→真の梅毒。RPR定量の確認
▾RPRのみ陽性→生物学的偽陽性(抗リン脂質抗体など)
▾TPHAのみ陽性→ごく初期か後期の感染 治療後 ライム病
(レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版)
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RPR陽性なら定量も提出します。
真の陽性なら届け出もお願いします。
②病歴・治療歴を確認
RPR8倍以上あるなら真の梅毒かもしれません。
若年で陰部潰瘍や皮疹などあるなら1期や2期の梅毒でしょうが、今回のセッティング的に高齢者が多いでしょう。
無症状で感染時期も分からないことが多いとは思います。
1年以内に感染したなら早期潜伏期梅毒となりますが、病歴のわからない人は後期潜伏期梅毒として対応です。
そして肺炎などの治療、たとえばオグサワの服用歴などあると同時に治療されているケースもあるかもしれません。抗菌薬投与歴も可能なら確認したいです。
よって、RPRが妙に低い人は治療後にあたるかもしれません。
認知症や神経学的・眼科的異常があるなら神経梅毒を考え腰痛穿刺を検討です。
③後期潜伏性梅毒として治療を検討
多くはここに分類されるのではないでしょうか。
▾ベンザチンペニシリンG(ステルイズ®) 240万単位IM,1週間に1回、計3回
▾アモキシシリン 1回500mg 1日3回 28日間
▾ミノサイクリン 1回100mg 1日2回 28日間
のいずれかの治療がよいでしょう(日本性感染症学会ガイドライン)
ただ、アモキシシリン1500mg/dayは後期潜伏性梅毒では治療失敗の懸念があります。
そのため、プロベネシドの併用でなるべく血中濃度を高く維持する方法がとられます。
レジデントのための感染症診療マニュアルでは
「アモキシシリン 2~3 g を 1 日 2 回経口。プロベネシド 500 mg を 1 日 2 回 経口。これを 4 週間。」
と記載があります。
HIV患者のデータですが、
アモキシシリン 1回1g 1日3回+プロベネシド1回250mg 1日3回
でも治療が可能かもしれません。
(Clin Infect Dis.2015;61;177-83)
神経梅毒の患者でかつ発症時期不明の方は、
2週間ペニシリンG点滴→その後2週間内服治療
でもよさそうです。
治療指標はRPR定量で行います。
6-12か月でRPRが1/4倍以下になっていれば治療成功です。
まとめ
他科から「たまたま見つけた梅毒陽性」がいたら、
①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出
②病歴・治療歴を確認
③後期潜伏性梅毒として治療を検討
で対応すれば大きな事故は起きないはずです。
まあここまで書いてなんですが、全ての後期潜伏期梅毒を絶対治療した方がいいかは不明です!!
ある程度ADLが自立しているひとならいいですが、予後いくばくもない人がどれほど治療意義があるか、認知症のある人の神経予後の改善がみられるのか、なんて考えると治療のメリットが無いかもしれません。
そもそも検査をして見つけたからややこしいことになっているかも。
総合内科医は覚えること多いですね。
今回のは所属とは関係ない私個人の意見ですので、他の文献や、近くに感染症や梅毒そのものに詳しい医者がいればそちらに聞いてください!
ではまた。
結論:GIMカンファで疾患が分からない時には梅毒か結核か悪性リンパ腫といっておけば8割当たる
髄液糖低下の鑑別(再掲)
髄液検査で糖減少を見た際には、教科書的には、細菌性髄膜炎を疑うかと思いますが、実際には、ほかの疾患でも少し髄液糖が低いことを経験します。