2022/12/14

投稿日 2022/12/14

ST上がってるけど、たこつぼ心筋症っぽい場面




スミヨシです。

昔の当直で。
頭部打撲で入院、特に症状はない院内の患者のモニターでのST上昇があって、循環器内科の先生に診てもらいました。
CK上昇はないけどトロポニンが上がってたり、心電図を見て、たこつぼかなあ、なんておっしゃっていました。
それでもCAGをしていただき、結果心筋梗塞でした。
マジか。わかんないもんです。

たこつぼらしさって今更ながらなんなんだろうと気になって調べました。


たこつぼ心筋症の診断

いろんなフローチャートはあるんでしょうが、UpToDate®とかみても、やはりMayo criteriaが使用されていることが多いんですかね。

Mayo criteria
①一過性の左室壁運動低下
②冠動脈閉塞を血管造影にて認めない
③新規の心電図異常(ST上昇, 陰性T波)orトロポニンの中等度上昇
④褐色細胞腫、心筋炎がない

②を確かめるためにCAGが必要、ということになります。

診断に必要な検査が循環器内科で行ってもらわなければならない以上、どんなにたこつぼだろうと思ったとしてもコンサルしたほうが多分いいんですけど、折角なのでたこつぼらしさが何なのか調べてみました。

Inter TAK Diagnosis Score
(Eur J Heart Fail.2017;19:1036-1042. )

たこつぼ心筋症と、ACSの鑑別に使用します。
正直知りませんでした。

Inter TAK Diagnosis Score
・女性 25点
・感情的トリガー 24点
・身体的トリガー 13点
・ST低下無し(aVR) 12点
・精神疾患 11点
・神経疾患 9点
・QTc延長 6点

50点以上の患者がたこつぼと診断されたとき、95%で正しく診断
31点以下の患者がACSと診断されたとき、95%で正しく診断


Wells criteriaの項目に「PEっぽい」が入っているのと同じもやもや感はあるのですが、大事なのはスコアリングに入っている項目がたこつぼらしさだろう、ということですかね。
女性に多いし、ミラーイメージは無いし、何かしらのトリガーがあることが多いのだと思います。

QT延長とかST低下なしとか、心電図も参考になるのだなあといったところですね。

たこつぼ心筋症はQTc延長する

(J Am Coll Cardiol.2003;41:737-42. )

そういうわけで、たこつぼのQTcに関して。
20年以上前の日本のデータ
17名のたこつぼ心筋症患者
全員にQTc延長がみられた。(中央値500ms,436から581 ms)


たこつぼ心筋症はSTEMIに比べてEFもトロポニンも低くてNT-proBNPが高い

Am J Cardiol.2014;113:429-33.)

STEMI 60例とたこつぼ59例の比較

たこつぼはSTEMIにくらべて、
・女性が多い(63% vs 31%)
・トロポニンが低い(7.6ng/dl vs 102.2ng/dl)
・EFが低い(30% vs 44%)

一番下のTEFPは トロポニン× EFで、250以上の場合はSTEMIの感度95%、特異度87%


NT-proBNPもSTEMIやNSTEMIに比して高くなる
(Int J Cardiol. 2012;154:328-32.)


まとめ

とりあえず、何かしらトリガーがあって、QT延長してて、EF低いわりに心筋マーカーしょぼかったらたこつぼかも!なんて思うのはいいかもしれません。
トロポニンの中等度上昇とはいったいどれくらいなのかはわかりませんが。。
エコー所見のみではなんとも言えない感じでした。

施設間の差や時間帯などあるかもしれませんが、それでも非循環器内科医がどこまで自分で抱えていいかは断言できません。
自分は正直すぐ相談できる環境にあったので悩んだことは無かったですが、すぐに相談できない場合には、この人はたこつぼっぽいなという安心感をえるために知っておいてもいいかもしれません。

ではまた。

結論:たこの心臓は3つあるから、多分たこつぼ発症してもなんとかなる