※2020/10/6に公開した記事です
スミヨシです。
病院内には医局という、まあざっくりいえば医者だけが集まる部屋があります。
私の以前の病院は、あまり3-5年目の先生がいなかったですから、同世代の人たちがどれくらいの勉強してるのか、とかどんなこと知ってんのか、とか聞くこともなかったです。
でも今の職場は若い先生も多いので、いろんな話が聞こえてきて楽しいです。
医局で、若手の先生が、
急な両側の手関節痛・肩関節痛と手背の浮腫の高齢男性がきた、といって、なんだろうねえ、膠原病って難しいよねえ、と言っていました。
なんかそういう病気で、英語と数字だけの名前の病気あるよねえみたいにいってました。
ああ、そういう話、好き!!私も入りたい!!
それって、RS3PEじゃないのかなあって!!
RS3PE
RS3PEは、「remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema」
の略で、まあそのまんま、RF陰性の関節炎の鑑別によくあがるやつです。
ほんとは滑膜炎です。
マニアックな疾患だと思いますが、病院見学にきた学生さんでも知っている人もいるので、それなりに疾患認知度はあがっているのかもしれません。
リウマチ科の先生にいったら怒られるかもしれませんが、私は研修医には、
PMR+浮腫=RS3PEを疑う
とおしえてます。PMRはリウマチ性多発筋痛症です。
PMRとちがいVEGFの機序がどうとか、は面白いですが、あんまり臨床に活用できないので頭に入ってこないです。。
あとPMRを診断するのがひとつ難しいのですが。。
治療はPSL15-20mgから始めますし、PMRと似ています。
RS3PEは悪性腫瘍合併を疑う?
PMRもですが、傍腫瘍症候群としてのRS3PEはよく言われます。
亀田病院の研究では、悪性腫瘍合併は7%だったようです。
(J Rheumatol 2012;39;148-153)
PMRは6%とのことです。スクリーニングで全例がん探しをすべきかはわかりませんが、ステロイド反応性のわるいものは悪性腫瘍随伴性では、とかは聞きますね。
自験例では、
RS3PEうたがい、PSL投与する⇀そのために骨粗しょう症予防としてビスホスホネート投与する⇀その前に歯科にコンサルト⇀口腔がん見つかる。というのがありましたね。
こういうの論文にしなきゃいけないですね。。すみません。。
RS3PEとDPP4阻害薬との関係
DPP4阻害薬投与例でRS3PEを経験したという報告があります。
(日本内分泌学会雑誌 2017;93:57-60)
PubMedでDPP4とRS3PEで検索しましたがめぼしいものはなさそうでした。
DPP4阻害薬の副作用では類天疱瘡が有名ですが、RS3PEも頭の片隅においておいていいかもしれませんね。
実際に、シタグリプチン(ジャヌビア)の添付文書には副作用の欄にRS3PEが載ってます。
医局で声が聞こえてきて、しらべてこういうの出てきて、これ伝えてあげようかなあとか思いましたが、冷静になると知らないやつが急に病気の説明してきて、すっごく気持ち悪いやつになるなと思いやめました。
完
結論:ずっと医学の検索してニヤニヤしてたらお金もらえる仕事したい
※ジャヌビア飲んでいる人に、ジャヌビアやめとけ、というものではありません。
すべての薬剤には副作用があります。くすりはリスクです。
m3.comの「第一選択薬はメトホルミン」の推奨消えるって記事は本当?
Twitterでも多くの方がこの記事を取り上げていていましたが、元論文を読んでいない人も多そうだったので、目を通してみました。