スミヨシです。
環境によるのかもしれませんが、総合内科の人間ってICTに属することが多いのかと思います。
すると、内科医にとってなじみのない手術部位の感染の相談も受ける機会が多いもんです。
SSIを軽くまとめてみました。
手術部位感染症
(Clin Infect Dis.2014;59(2):e10-52. )
(レジデントのための感染症マニュアル第4版 医学書院)
(UpToDate®"Overview of the evaluation and management of surgical site infection")
Surgical Site Infection (以下SSI)
昔はSurgical Wound Infectionと呼ばれていたが、もっと深層にも感染するため、現在のSSIの呼称となった。
平均発生率は2.6%
外科患者の院内感染の38%
(Infect Control Hosp Epidemiol.1999;20(4):250-78; quiz 279-80.)
クリーンで低リスクの手術が最も発生率が低く、汚染された高リスクの手術(消化管穿孔や膿胸など)は感染率が高い
(Clin Infect Dis.2001;33 Suppl 2:S69-77. )
SSIの定義(CDC)
3つのカテゴリーにわけられる
・表層切開部SSI(皮膚-皮下組織)
・深部切開部SSI(筋肉・筋膜)
・臓器・体腔SSI
術後30日以内に発生(人工物があれば1年以内)で以下のいずれかを満たす
・膿性排液
・感染部位からの病原体検出
・切開後の痛みまたは圧痛、腫脹、紅斑(培養陰性は除く)
・主治医の診断
SSIの起因菌
横綱は黄色ブドウ球菌
感染が深部に及ぶ場合には、手術侵襲のあった部位の起因菌が多い(腸管なら大腸菌、Bacteroidesなど)
多い順にS.aureus、CNS、腸球菌とされるが、実際に起因菌になっているかは吟味が必要。
腹腔ドレーン培養からCNSがでてもカバー不要の可能性が高いが、人工物が入っている部位のCNSは要注意
SSIの治療
基本は切開、ドレナージ±抗菌薬
術後48時間以内の発熱:SSIではないことが多い
ただし、A群溶連菌、Clostridiumは重篤かつ迅速に進行するので全身症状や局所症状の目立つ場合には創切開、デブリドマン、PCGなど
創部の局所症状あり(創部の発赤、硬結など)
⇀創開放、洗浄、ドレッシング交換
BT≻38.5℃、HR≻100/min、紅斑が5cm以上、深部の強い炎症や臓器/体腔のもの→抗菌薬投与
会陰部、消化管、婦人科手術→Bacteroides意識でSBT/ABPCやCMZ、CLDM+α
頭頚部、体幹、四肢など→S.aureus意識でCEZ、VCMなど
SSIの予防
患者因子、汚染する菌の量を減らすことを考える
患者因子
禁煙:1か月前から
栄養:栄養不足は解消しておく。術前5日間の経腸栄養はSSI低下
(Gastroenterology.2002;122(7):1763-70. )
肥満:無理のない範囲で減量
皮膚病変:できるだけ治療しておくことが望ましい
糖尿病:コントロールすべき、数値は諸説あり(少なくとも200-180以下か)
酸素投与:良いデータも悪いデータもあり
汚染する菌の量を減らす
入院期間を最小限にする
バクトロバン:鼻腔の黄色ブドウ球菌を減らすだろうがSSIは減らない?保菌者は感染率減少か。
(NEJM.2002;346:1871-7)
感染症:手術部位以外の感染症はできるだけ治療
手洗い:外科医は消毒薬入りの石鹸やアルコールで手洗い。
皮膚の損傷を最小限にするため手洗い、ブラシの使用を削減も
術前処置:剃毛はしない。バリカンや脱毛クリームは術直前
手術室:出入り人数の制限 陽圧、十分な換気
ドレーン:必要最小限、可能な限り早く抜去
手術切開創とは別の部位からドレーン挿入
体温:術中低体温(深部体温<36℃)を回避
(NEJM.1996;334:1209-15)
周術期抗菌薬:適切なタイミングで。下記。
周術期抗菌薬
投与のタイミング:皮切前60分以内
術中:長時間の手術では追加、目安は3時間
投与期間:24時間以内に終了可能(すでに感染している手術では抗菌薬継続)
抗菌薬選択:SSIの起因菌をカバー
まとめ
中々普通の内科がSSIを真剣に学ぶ場面は少ないかもしれません。
ですが、外科から不明熱の紹介⇀臓器/体腔SSIなんて場面をよく経験しますし、知っておいて損はしないと思います。
結局は局所に乏しいSSIはCT撮るしかないなあ、なんて思ってます。
ではまた。
結論:調べてないけど、SSIってITの会社が多分200社くらいある。
専門医いらねーと思ってるけどさ。
ブラック・ジャックて医師免許もってないけど、手術うまいじゃないですか。 あれと同じで、内科専門医も感染症専門医もとってないのに、知識すげえ、みたいな。 いうなればホワイト・ジャックですよね。 そう。わたしはホワイト・ジャックになりたかった。