2022/06/09

投稿日 2022/06/09

【症例】16歳女性 とても強いがすぐにおさまる胸痛

スミヨシです。


外来やっていると、思春期の方が受診されることがあります。

病院によるとは思いますが15歳以下(中学生)は小児科、それ以上は内科、みたいなのが多いと思います。

重篤な疾患でないことが多いと思いますが、家族が付き添いで来ることも多く、説明できないとなかなか気まずいことがあるかもしれません。


※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。

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16歳女性
高校2年生
生来健康で、成績、スポーツともにこなしている。
不登校は無い。
中学生のころから1-2か月に1回くらい、左胸痛あり
とくに誘因なく発症し、数秒から1分程度でおさまる
疼痛は非常に強いが治まると通常通りの生活が可能。
生理周期とは関係ない。
13歳の時に精査で異常なしと言われた。
数年続くため改めて母親とともに受診。


対応は?
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おそらくは非致死性のものなのだろうなあ、とは分かると思います。
どちらかというと本人より家族が心配しているので、説明を処方するパターンに持ち込むところかと思います。

まあ、もはや珍しい疾患概念でもなく、皆が知りすぎて逆に取り上げませんが、
Precordial catch syndromeでよいかもしれません。


Precordial catch syndrome

小児でまれにみられる良性の筋骨格系胸痛。
典型的には、左胸骨から心尖部あたりの1間隙に起きる数秒から数分の短い、鋭い痛みのエピソード。

安静時または軽度の活動時に発生し、吸気とともに増強する。
原因は不明。
6-12歳でもっとも起こりやすい。

1955年シカゴのAlbert J. MilerとTeodoro A.TexidorがJAMAで初めて報告しています。

特徴

・突然発症
・安静時に最も頻繁に発生する
・局在性が明確
・鋭く、刺すような、針のような痛み
・深呼吸で悪化する
・各エピソードは30秒から3分間持続する。
・突然の完全消失
・関連する症状がない
・身体所見の異常なし
(South Med J.2003;96:38-41. )

管理

診断は病歴を用いて行われる。
通常は検査も必要では無いと(後述)。
治療は不要。
年齢とともに発作は減少、消失している。
医者でこの症状がある人に出会ったことがありますが、働き始めてから消えていった、といっていました。
個人的には勝手にこのエピソードを拝借し、長い人もいるけどその人も20代で症状が無くなっていきました、と伝えています。
とにかく無害である、精神的なものじゃないと、とも。

症状に名前を付けてあげることで、診断の確実性と信頼度があがる、と信じています。

まとめ

冒頭の症例は、胸部XR、心エコー、心電図までして異常ありませんでした。
やりすぎかもしれませんが、検査で異常がないことで安心される方が多い印象です。
もちろん検査せずに安心頂けた場合にはお話だけしています。

ではまた。

結論:知っているだけで研修医とかにマウント取れる可能性を秘めているので、是非プレコーディアルキャッチシンドロームと声に出して練習しましょう