2022/06/29

投稿日 2022/06/29

透析患者の重症ニューモシスチス肺炎のST合剤の投与量

スミヨシです。

透析患者のニューモシスチス肺炎(以下PCP)に、まれに出くわします。
透析単独でPCPのリスクがどこまであるかは不明ですが、実際に出くわすとなかなか骨が折れます。
透析患者のPCP治療(特にST合剤の投与量)を考えてみました。

読むの面倒であれば最後にまとめておきますのでそちらを。

透析患者の重症ニューモシスチス肺炎の治療

何はともあれST合剤
ひとまず第一選択はST合剤です。
ぶっちゃけ、HIV患者のPCPは皮疹や血球減少や薬剤熱など副作用で完走できない事も多いですが、non-HIV患者は治療終了までST合剤でいけることも多いです。

しかしながら、non-HIV患者のPCPは重症であることも多いです。
つまり、透析患者のPCP治療は重症であることを想定する必要があります

軽症の場合は多くの場合、ST合剤orアトバコンで治療します。
では重症の場合はどうでしょうか。

重症PCPの薬剤候補

ステロイド併用を前提として。

・ST合剤⇀◎第一選択
・ペンタミジン(静注)⇀〇 腎障害が副作用にあるが透析患者ならよいのかもしれない。ただし、医療事故が有名。副作用も多い。(http://www.medsafe.net/contents/hanketsu/hanketsu_0_212.html)
・クリンダマイシン+プリマキン⇀△ 日本でも手に入るが、プリマキンがマラリアでしか保険適応がない。入手しづらい。

・アトバコン⇀× 力不足

使いやすいアトバコンですが、重症PCPでは使用しない方がよいです。

透析患者に対する薬剤投与量の検討

ST合剤
前提として、1錠or1Aに
スルファメトキサゾール400mg
トリメトプリム 80mg

STはトリメトプリムでの投与量記載が多いです。。

通常は、トリメトプリムで15-20mg/kg/dayを3分割
⇀12-9錠分3 内服or1回4-3A 1日3回 点滴

日本の添付文書
Ccr>30 通常量
Ccr 30-15 通常の1/2量
Ccr<15 投与しないことが望ましい

UpToDate®
Ccr>30 通常量

Ccr 30-15  通常投与量の50%
投与例:7.5 to 10 mg/kg/day in 2 to 4 divided doses
⇀50kgでだいたい6錠分3 内服or1回2A 1日3回 点滴

Ccr<15 通常投与量の25-50%
投与例:1日1回4-5mg/kg or1日1回or7.5-10mg/kg 1-2日に1回
⇀50kg投与なら3錠分1(点滴なら1回3A 1日1回) or 6錠(点滴なら6A)を1-2日に1回
感覚的には1日1回投与、透析日は透析後投与がしっくりきます。

Treatment of Pneumocystis jiroveciipneumonia in a dialysis patient
(Journal of Kidney Care.2016;1:29-32)

ボスに教えていただいた文献です。
Ashley C, Dunleavy A (2014) The Renal Drug Handbook. Radcliffe, London
Joint Formulary Committee (2016) British National Formulary. 71st edn. Royal Pharmaceutical Press, London
イギリス式で、STも早めに減量していくようです。
また、投与量の計算もトリメトプリム換算ではなく、ST合剤全体(1錠480mgとして)での換算と思われます。


通常量(Ccr>30)
120 mg/kg/day 3日間⇀ 90 mg/kg/day 3日間
⇀50kgとしてST 12錠分3 3日間→9錠分3 18日間

Ccr 30-15
60 mg/kg/day 分2で3日間 and then 30 mg/kg twice-daily
⇀ST 6錠分2 3日間⇀4-3錠分2 18日間

Ccr<15
30 mg/kg 分2で21日間
ST 4-3錠分2 

個人的には、3日で減量することは経験が少なく、なじみがすくないと思われますが、Ccr<15の部分は使いやすいかも?
体重が多く、1日4-6A必要な人ならありかも

なお、上記のものは透析患者はCcr<15に含んでおりました(薬剤は透析後投与)

ペンタミジン

通常:4mg/kg/day(1A300mg)
透析患者:4mg/kg/dayを48hごとに

週3の透析なら透析後投与が妥当でしょうか。

クリンダマイシン+プリマキン
CLDM:900mg 1日3回(内服なら600mg 1日3回)
プリマキン:30mg 透析の除去率不明

プリマキンの投与量は薬剤師さんとも相談になると思います。透析後投与にすることになると思います。
まあ、重症患者に内服しか選択肢がないのが難点ですし、手に入るのか、使用していいのか、というハードルが。。

まとめ(私見)

透析患者の重症PCPの対しては、
・PSL80mg 5日間⇀40mg 5日間⇀20mg 11日間
にくわえて

・バクトラミン 4-3A/day  投与回数は1日1-2回(内服も可)
or
・ペンタミジン 4mg/kg/day 透析後投与

のいずれかを使用がよさそうです。

バクタは文献紹介しましたが結局透析患者には1日1回使用が簡便かなあ、なんて思いました。
60kgまでなら1回3Aor3錠、それ以上なら1回4Aor4錠、とかでしょうか。
高齢者だと1回2錠くらいでもよいのかもしれません。

ではまた。

結論:PCPという劇中作がでてくる「バクマン。」は名作中の名作。