スミヨシです。
最近学会の現地開催が結構されている印象です。
正直、Twitterでハッシュタグ検索したら大抵の情報は集まります。
日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が先日開催されておりました。
#JPCA2022
で検索すればその時の様子がなんとなく伝わります。
今日言いたいのは
「ビッグネームの講義・スライドに引用文献つきでそれっぽいことが書いていたら無条件に皆信じてしまうから注意」
という内容です。
#JPCA2022の中でも結構バズっていたもので、
「卒後4年目以降の臨床経験年数と診断精度に相関なし」
というものがありました。
言いたいメッセージは十二分に伝わります。
自分もそう思ってはいます。
しかしこれは本当なのでしょうか?
(JAMA Intern Med.2013;173:1952-8. )
元文献はこれのようです。
QuantiaMD.comで募集をかけた米国内の118人に4つの症例問題をシミュレート。
簡単な2題と難しい2題
診断精度や診断精度に対する信頼度(自信)をシミュレート
参加者の特徴
年齢は25-85歳まで(平均48.4歳)
経験年数は0-56年(本文中には記載がないが、表に"years since residency"(平均16.5年)
診断精度と信頼度(自信)
簡単な問題と難しい問題は難しい問題の方が正答率が悪化
正答率は経験年数や性別、教育を受けた国や職場環境での有意差は無かった。
自信は難しい問題の方で低め
こちらも経験年数で有意差はでなかった。
筆者の結論としては、医師の自信レベルが診断の正確さと症例の難しさの両方に比較的鈍感かもしれず、医師は診断が正しくない可能性のある困難なケースを再検討できなくなる可能性がある、とのこと。
ここまでで、表題です。
卒後4年目以降の臨床経験年数と診断精度に相関なしと言っていい?
まず、まあ当然ながら4問しかない問題で、さらに難しい問題の正答率が低く、差が付きにくい構造なので、この結果をもって診断精度に相関がない、というのは難しいと思います(相関があることも無いことも示すことはできていない)。
だいたい、この論文の主旨はベテランと若手の診断精度を比べたものでは無いです。
そもそも医師の年数の内訳もないので、若手とベテランが均等に分布している集団かは不明です。
比較をするつもりが無かった論文ですので論文の内容に問題があるわけではありません。
この論文からこの命題を導いたのならちょっと強引ですね。
さて、あとは4年目ってのがどっからでてきたか。
”years since residency”の解釈からでしょうか。
アメリカでは医師免許取得後、インターン1年⇀レジデンシー3-6年です。
1+3で卒後4年目、という解釈でしょうか。
ただ、この論文では25歳の人間が含まれています。
アメリカでは4年制大学を卒業⇀メディカルスクール4年が必要です。
アメリカの飛び級制度を考えても、21-2歳で医師⇀25歳でレジデンシーを終了するのは厳しいと思われます。
たぶんこの"since residency"は 卒後2年目からのカウントになるんじゃないでしょうか。
ただ、おそらくメディカルスクールで日本でいう初期研修2年を過ごしているため、アメリカのインターン終了したレジデンシー1年目は日本でいう卒後4年目にあたる、という解釈もできるかもしれません。
合ってるか?とにかくややこしい!!!
正直、ある程度意見をいうことのできる相手とかチームのスタッフがこの論文を以って卒後4年目以降の臨床経験年数と診断制度に相関なし、と記したなら止めます。
書いてもいいけど、この論文引用はしないように指導・助言しますね。
まとめ
そういうわけで自分としては以下の通りです。
・引用論文では卒後4年目以降の臨床経験年数と診断精度に相関なしは示すことができない
・プレゼンターの私見として、「臨床経験年数と診断精度に相関なし」と言われたなら理解はできる
・書くにしても卒後4年目とか不要。(日本にあてはめない方がいい)
プレゼンターの意見、として納得はしていますが引用文献があることで変にうさんくさい文章になってしまっている気がします。
私見!とかでいいんですけどね。
最初に戻りますが、わざわざ遠いところにいってお金を払って見に行ったビッグネームの講義・スライドの内容って吟味する間もなく、すげー!ってなっちゃうんです。わかります。
でもそれはやはりよくない。
今はオンラインでも書いたことが残る時代ですので、私見なのか、根拠のある意見なのか、はっきりとできればいいですね。
自戒をこめて。
ではまた。
結論:ただ、別にベテランが無条件にすごいわけではないので、診断推論教育が大事という意見には大賛成です。