2022/06/16

投稿日 2022/06/16

疑義照会にかかりづらい禁忌薬

スミヨシです。

 

内科医をしていると、咳止め処方してくれ、という受診はよくあります。

コロナが流行して、治療後も感冒後咳嗽のような状態で咳が続く方が咳止め希望で受診されることもよくあります。

 

当然、咳止め処方をする前に原因疾患を探すのですが、何も無さそうな場合、対症療法をすることもあります。

 

その際に、皆さんは何を処方しますか?

 

急性期の咳を抑えるエビデンスの強い薬はない!というのは正論ですが、処方せずに納得していただくのも難しい場面が多いと思います。

 

多くはデキストロメトルファン(メジコン®)かリン酸コデインを使用することが多いかと思います。

 

漢方を使うなら麦門冬湯か桔梗湯あたりでしょうか。他の漢方もあるかもしれませんが、異動したら使えなくなった、なんてこともザラですので、マイナーな漢方をマスターするのは若いうちは難しいと感じています。

 

閑話休題。

以前、私の外来に来た気管支喘息の30代女性の症例で、研修医とのカンファレンスで使用する症例です。

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X-6 かかりつけで上気道炎の診断(新型コロナ抗原陰性)

X-4 咳が増悪し夜間救急受診。喘息発作の診断で、PSL 15mg内服とサルタノール®処方。翌日かかりつけ受診するように指示

X-3 かかりつけ医受診したが、低酸素や頻呼吸がないので気管支喘息発作では無い、との説明でクラリスロマイシン、リン酸コデイン、テオフィリン処方。PSLは中止された。

 

X日 咳が強くなり外来受診。喘息発作の診断で入院。

吸入とmPSL 40mg/dayを開始

X+3日症状は改善。退院した。

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てな感じで、救急で喘息発作の診断をしたけどかかりつけで診断を受け入れられず、でも結局入院になっちゃったという症例。

そして喘息発作として対応したらすっかりよくなった。

 

特に、こちらのアセスメントがかかりつけでうまく受けいられなかったなら、手紙や連絡の内容はどうすればよかったか。

そもそもこちらのアセスメントは正しかったのか。

PSLの量は適切だっただろうか。

前医はテオフィリンなど処方しており、実は喘息発作とわかっていて、患者に喘息発作では無いなんて説明をしていなかったのではないか(患者の思い込みなど)

後医は名医というが自分がかかりつけの先生ならどうしていたか。

今後この方はかかりつけに戻してもOKかどうか。発作が起きたときは当院に来てもらう、という形にする?通常の外来もこちらにするべき?

など、議論すべきことは多いと思います。

 

こういう議論は研修医に意見をもらったあと、自分はどうするか、場合によっては上級医にも参加してもらい、上級医ならどうするかの意見をもらったりします。

 

そんななか、研修医はあまり指摘しないけど、内科医なら指摘できる(するべき)ギミックもいくつか用意している症例のつもりです。

 

そのうちの一つが、リン酸コデインの話題です。

 

喘息発作にリン酸コデインは禁忌

実はリン酸コデインは喘息発作中は禁忌です。

添付文書に記載あり、気道分泌を妨げる」からとのことです。

 

リン酸コデインはまあコデインですので、禁忌や慎重投与も多い薬剤です。

実際に喘息発作の方がコデインを服用して致命的になるかは不明ですが、それをおして処方するメリットはないと考えています。

 

疑義照会にかかりづらい禁忌薬

もうひとつ気づきとして、「疑義照会にかかりづらい禁忌薬」がありそうです。

そういった薬剤は医師が知らないと、そのまま禁忌薬が患者の手元に届くことになります。

実際薬剤師さんの立場だと、処方をうけた患者が喘息発作中かどうかわからないこともあります。

院内処方ならカルテを見ることもできるでしょうけど、院外薬局とかならさらに厳しいでしょう。

「ロペミンは感染性下痢やCDIに禁忌」

も、患者状態が分からないので疑義照会にかかりづらい処方の一つだと思います。

 

まあ、こういうところは指導を間違えると、副作用の多い薬を極端に嫌う、例えばNSAIDs忌避しすぎて偽痛風にカロナール処方する医者を量産してしまいがちなので注意は必要ですが。。

 

咳止めのことでなかなか勉強しないですし、使い分けもよくわからないですから、上級医が使ってた処方とか、救急で使ってた処方とかを、ベテランになっても使用することになるかもしれません。

リン酸コデインに限りませんが、自分の出す処方は責任をもって、一回くらいは添付文書を見てもバチは当たらない!と考えています。

 

ではまた。

 

結論:皆が出すけど勉強しない薬剤のまとめとして、薬のデギュスタシオンを超える本は未だに現れていない。