スミヨシです。
多分気づいてないけど、実臨床ではよくあるんだろうなあ、ということが先日ありました。
※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。
ひとまずはDICかどうか考えることにはなるとは思います。
この症例は血小板減少とかなく、状態も落ち着いているし違うかな、と。
そもそもこのフェーズでPTもAPTTも過延長となると薬剤性だろって感じですよね。
となると抗菌薬による凝固異常が疑われるところです。
セフメタゾール、凝固異常と言われればビタミンK欠乏ですね。
セフメタゾールによるビタミンK欠乏
簡単にまとめると
①NMTT基によるビタミンK還元サイクル阻害
②ビタミンK2産生腸内細菌叢減少
の機序でビタミンK欠乏⇀凝固異常をきたす。
ビタミンKと凝固因子
ビタミンKはビタミンK還元サイクルの作用でビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)の産生にかかわっている。
ワーファリンはビタミンK還元サイクルを阻害して抗凝固作用を得ている。
N-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)とビタミンK
セフメタゾールやセフォペラゾンはN-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)をもつことで安定性向上を得ている。
このNMTT基がビタミンK還元サイクルを阻害して、抗凝固作用を呈する
(J Clin Pharmacol. 1988;28(1):88. )
methyl-thiadiazole thiol基 (MTDT基)をもつセファゾリンでも同様のことが起こりうる。
ビタミンK2産生腸内細菌減少
結腸などにコロニーをつくる腸内細菌はビタミンK2を産生するが、抗菌薬により細菌が減少し、ビタミンK欠乏をきたす。
(Lancet.1980;1(8158):39-40. )
診断
PT、APTTの延長と、PIVKAⅡの増加など
ビタミンKの直接測定は保険外(ですよね?検査の人に言われました。。)
治療
ケイツー® 10mg iv
もしくはケイツーカプセル®(添付文書では内服は1回10mg 1日2回)
改善なければ48-72時間で再投与
私見だが、出血イベントのある場合には、ワーファリンによるPT過延長と同様の対応でもよいかもしれない
(Chest.2012;141:e152S-e184S.)
まとめ
そういうわけでこの患者は抗菌薬をミノマイシン内服に切り替え、ビタミンK投与したところ、2日後にはPT、APTT改善しておりました。
セフメタゾールはESBL産生や腹腔内感染で使いやすいですが、PT・APTTにも気をつけたいですね。
ではまた。
結論:ビタミンK依存凝固因子といえば、肉納豆(2、9、7、10)で覚えるが、同僚が病院で肉納豆を食べてて、この料理が実在することを知った。