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2023/03/27

心停止ROSC後の患者に水素を加えた酸素投与で死亡率が改善する?

 

慶応・東京医科歯科大学のプレスリリースより


スミヨシです。


平日休みを謳歌していたところ、NHKの報道で、


心停止の患者に水素加えた酸素投与で救命率向上 慶大など発表
とありました。

考えたことも無い話題でした。
早速みてみます。

Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial

まだpre-printです多分。


日本の15施設 double-blind, placebo-controlled randomised study

組み入れは

・20-80歳の院外心停止→ROSCの患者

・GCS<8 昇圧剤など使用をとわずsBP>80

・家族からの書面によるインフォームドコンセント

・ROSC からガス吸入開始までの時間が 6 時間未満


除外は

・もともとCerebral Performance Category(CPC)が3 or 4

・既知のtrearment limitations

・DNR

・外傷CPA

・FiO₂ 0.5でSpO₂ <94%


体温は32-36℃を目標に管理

メインアウトカムは90日後の神経学的転帰改善の割合(CPC1or2の割合)






結果

H₂投与群 n₌39 vs 対照群 n₌33

神経学的予後



90日後のCPC1or2の割合は

H₂投与群 vs 対照群:56% vs 39% (95%CI 0.46–1.13;P=0.15)




mRSでも比較されている。

こちらは中央値 H₂投与群 vs 対照群:1 vs 5 (p=0.01)


90日生存率


H₂投与群 vs 対照群:85 vs 61% (95%CI 0.17–0.91;P=0.02)


まとめ

メインアウトカムは有意差なし。

しかし、mRS 0の割合や、ハードアウトカムの改善があるかもしれない

コロナ禍でn数が稼げなかったとのことで、さらに症例を増やす必要がありそう。


メインアウトカムを死亡率にしておけば。。

ハードアウトカムの改善は想定外だったのかもしれません。

mRS 0と1の差をCPCでは表せないので神経学的予後も水素群の方が改善しているようには見える。メインアウトカムの組み方が微妙だったのかも。

この分野得意では無いのであまり背景を把握できていないかもしれません。

お作法でmRSはメインアウトカムにしない、とかならすみません。


すごく気になったのは、バイスタンダーCPRされているのが水素群 74%、対照群 62%とかです。多くない?しかも水素群ちょっと有利?

感度分析はされており、これによる影響はなさそうでしたが、気にはなりました。


有害事象の増加がなかったとのことですし、CPA ROSC後には水素投与を頭の片隅に入れておいてもよいのかもしれません。

どういう設備が必要かはよくわかりませんが。。。。


ではまた。


結論:これをみて輸液に水素水入れたら怒られた。

2023/03/25

痛みが先行して皮疹の無い帯状疱疹にいつ抗ウイルス薬を投与する?

スミヨシです。


しばらくブログほっからしていました。。

論文なるものを書いたり、その合間に科内で抄読会を行って、その論文にletterを書いたりして過ごしていました。

なに論文の間に論文書いてるんだ!状態です。


ぜんっぜんおわりませんね!!!

英語圏に生まれたかった!!!!!!


帯状疱疹は痛みが先行することがある

この前救急に、右胸痛で来た人が、肋間にそった範囲での胸痛があり、研修医から帯状疱疹だと思う、とコンサルがありました。


いいじゃん!帯状疱疹は痛みが先行することがありますよね。


ふと昔、皮膚科の先生に言われたことを思い出しました。



結構バズったので、それなりに皆関心のある事象なのだと思います。

いろいろみていると、


皮疹が無くても症状がそれっぽければ抗ウイルス薬を処方する


みたいな内容を返信のあとにつぶやいてくださっている先生がいました。

一方自分は皮疹が無い状態では抗ウイルス薬を処方せず、皮疹が出たら皮膚科受診してね、と言っています。

さて、どちらがいいんでしょうか。


先に結論を書くと、「わからん!」でした。

すみません!!!!


zoster sine herpete

皮疹の無い帯状疱疹、日本語だと無疹性帯状疱疹にあたるでしょうか。

札幌の師匠がシーンヘルペーテと言っていたので自分もそう呼んでいます。合っているでしょうか。

まあ、厳密には痛みが先行しているものはのちに皮疹がでるかもしれないのでこれには当たらないかもしれないですが。。


UpToDate®はzoster sine herpeteの項目はありませんでした。

免疫が保たれている帯状疱疹の項目は大体以下の内容のような記載です。

・臨床症状には、小胞性の発疹と、発疹に先行または同時に発生する急性神経炎がある

・抗ウイルス薬の目的は、急性神経炎に伴う疼痛の重症度と期間を軽減皮膚病変のより迅速な治癒促進、新規病変の予防、ウイルス排出軽減、帯状疱疹後神経痛の予防

抗ウイルス療法は、治療の潜在的な利益を最大化するために、発症後72時間以内に開始すべき


これだけ見ると、特に皮疹の予防効果があるなら投与早くてもいいのかも、とか思ってきました。

発症の定義は痛みでいいのかな??

ここはわかりませんでした。


レビューもみてみました。


Neurologic complications of the reactivation of varicella-zoster virus

(NEJM. 2000;342:635-45.)

→zoster sine herpeteの記載はあるが治療についてなどの記載はない。


Zoster sine herpete: a review

(Korean J Pain.2020;33:208–15.)

zoster sine herpeteの多分一番内容の多いまとめ。

・治療は帯状疱疹と同じでよい。

・症状の期間と重症度軽減のために早く治療した方がいい。

症状のみによる診断は誤診につながる可能性があるため、ZSH を診断するには VZV 再活性化の証拠を見つける必要がある。PCRもしくはELISA法を用いる。


これは困りましたね。ただ、ここで挙がっていたのはやはり皮疹がずっと出ない病態を想定されていそうでした。


今回のセッティングは帯状疱疹っぽい痛みだけど皮疹が無い、発症早期の想定なので、

①数日たったら皮疹が出てくる典型的帯状疱疹

②皮疹がずっと出ない帯状疱疹(Zoster sine herpete)

③帯状疱疹ではない

のいずれかですね。当たり前ですが。

正直、①と③が多いと思っています。勘ですが!!!部位にもよるでしょうが!!

もしそうなら、発症早期で②を考えるのは微妙なので、皮疹を待ってもいいんじゃないかとは思っています。皮疹が出れば診断できますし、③に抗ウイルス薬を投与しなくて済みますし。


早期治療のデメリットとしては、誤診と抗ウイルス薬の副作用でしょうか。

とくにアシクロビルは脳症が有名です。

じゃあ、アメナリーフ®とか言われるとちょっと反論しづらいですが。


追記(2024/3/13)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10714797/

Xで議論されてました。

よくわからない片側の痛みを訴える患者57人中、帯状疱疹を発症したのは2名

背景疾患や年齢などにもよりますが、ちょっと打率低いですね。。


いろいろ検索しましたがここら辺が限界でした。。

無理やりまとめます。。


まとめ(私見)

・発症間もない、痛みだけの患者は、対症療法を行いつつ、数日皮疹が出るのを待ってもよいかもしれない。また、骨折や器質的疾患はなるべく除外しておく。

・皮疹がずっと出ないけど帯状疱疹っぽい疼痛が治らない場合にはPCRとってみて抗ウイルス薬の処方でもよいかも

・腎機能の悪くない人で、痛みがでて3日目くらいに受診して、診断に自信があるなら皮疹出るころには72時間こえるからその前に抗ウイルス薬処方してみるかも。


結局、どれくらい、帯状疱疹っぽい神経痛だな、と思うか次第ですかね。

体幹や四肢なら皮疹がなくてもそれなりに診断できそうですが、三叉神経痛とかで来られるとお手上げかもしれません。


でもまあやはり典型的な神経痛で皮疹が結局でなかったけど、抗ウイルス薬で良くなったという経験が足りないので、皮疹を待ちたくなります。

抗ウイルス薬飲めば皮疹が出る前にかたがつくのかはよくわかりませんでした。

そんな臨床試験くめませんもんね。。

はやく治療できるに越したことはないですけどね。


もやもやさせてすみません。

ではまた。


結論:こういう勉強すると胸痛も腹痛も全員帯状疱疹に見えがち