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2022/10/29

肝硬変患者における肝性脳症の誘因

スミヨシです。


徳洲会に所属しているときに、離島での勤務がありました。

離島で働くの楽しい!って言っている多くの人は腰を据えてやってなかったり、ちょっと研修医時代の1-2か月、離島の砦ではない病院で勤務をした人かなあ、なんて思います。


でも残念ながら離島の医療は楽しいばかりではないです。。


離島で働く医者が直面することはいろいろとあると思います。


その中でも代表的なものは肝硬変の多さですかね。

やはり南の島は酒飲みが多いのです。

本当かどうか、宮古島では肝硬変のうち75%がアルコール性とのこと(日本全体で13.6%と)。

(https://www.miyakomainichi.com/2015/06/76403/)

そういうわけで離島勤務は割とアルコール関連の対応が多いかな、と思っています。


MKSAPを解いていて久々に自分のメモを見返す機会があったので復習しました。


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56歳男性 2日間続く錯乱

アルコール性肝硬変の既往のある患者だが5年間禁酒している。

うつ病、不安神経症がありEscitalopram(レクサプロ®:SSRI)を服用している

Vitalは正常。黄疸とはばたき振戦がある。

採血と尿検査を提出した。

次のステップは?

(MKSAP19 Gastroenterology and Hepatology Questions75)

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まあ臨床的に肝性脳症っぽいなあというのはわかりやすいですね。



自分は頭部CTを選択しましたが、答えは「投薬の調整(レクサプロ中止)」でした。


肝硬変患者における肝性脳症の誘因

(Clin Liver Dis. 2019;23:607-623)

(UpToDate®:Hepatic encephalopathy in adults: Clinical manifestations and diagnosis)


肝性脳症の治療における最初のステップは、誘因の特定と是正。


薬剤

・ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン睡眠薬  

・麻薬(オピオイド)

・アルコール

アンモニアの産生・脳への吸収の増加

・タンパク質の過剰摂取

・消化管出血

・感染

・低カリウム血症などの電解質障害

・便秘

・代謝性アルカローシス

脱水

・嘔吐

・下痢

・出血

・利尿薬

・大量の腹水穿刺

門脈シャント

・外科的シャント

・Spontaneous porto-systemic shunt

血管閉塞

・肝静脈血栓症

・門脈血栓症

肝細胞癌


SSRIによる肝性脳症、というのはあまり見つけられませんでしたが、tranquilizersでも引き起こす、とのことでcommonなんだと思います。


でもまあ、頭部CTとりますけどね!

薬剤を整理するのは入院してからゆっくりすればいいと思います!

ではまた!




結論:オトーリという恐ろしい文化が宮古島には存在する(見たことない)

2022/10/26

北海道のListeriaは〇〇が理由でABPC耐性が多い?

スミヨシです。

最近、臨床では出会っていないのにListeria monocytogenesのことばかり考えています。

実は先日札幌の古巣に行ってきました。

研修医向けの講義をするという名目で、自分の原点を見たいなあ、と思いながら一日総合診療科で過ごさせていただきました。


さて、札幌を出てから気づいたこととして、北海道はやはりListeriaによる髄膜炎とか菌血症が多い、と思っています。
今回行った時にも改めてそう思いました。

それでさらに言うとListeriaのABPC耐性の頻度も多いのでは、と思っています。
MIC 1くらいはざらです!

数字とか全然ないんですけどね!!
感触的にです!!!
すみません!!


Listeriaの感染経路


Listeriaがどこに多いかといわれると、やはり肉・チーズでしょう。
酪農関係の仕事が多く、それら商品が気軽に手に入るのは北海道のよいところなのですがね。。

国内のリステリアの集団感染は北海道のナチュラルチーズが原因とされているようです。


北海道のListeriaは牛への抗菌薬使用が理由でABPC耐性が多い?

さて、大前提として。
N数が多いと仮定するならその分耐性菌をみる可能性が高いだけ、とは思っています。

ただ、一度私の師匠が面白いことをいっていました。

「牛の乳房炎で結構抗菌薬投与されているから耐性多いのかもしれないね」

なんと。
なんだそれは。

確かに先の震災・停電で実は北海道の牛たちは乳房炎に悩まされたケースが多かったです。

まあ、面白いんですが、乳房炎って抗菌薬いくのかな?


乳房炎に対する抗菌薬


牛乳房炎抗菌剤治療ハンドブック」なるものが厚生労働省から出ています。
普通に培養とって抗菌薬行くみたいですね。




乳房炎に対する抗菌薬の使用状況のようです。
MSSA意識でCEZが多いですが、ペニシリンも結構使っていますね。


乳房炎のことについていろいろ載っています。
医者でもできない適正使用を農家の方たちはがんばっているようです。


ABPCが使用できない場面でのListeriaの治療

じゃあABPC耐性のListeriaに出会ったらどうするか。。

ABPCが使用できないときはST合剤
それもだめならMEPMを使用するでしょうか。
自分はMEPMを使用したことはありません。
北海道にいると常識ですね!!
(UpToDate®:"Treatment and prevention of Listeria monocytogenes infection")

Mandellも大体同じですね。
上記が無理ならVCMとかも考慮でしょうか。

髄膜炎を想定していますのでST合剤の用量はニューモシスチス肺炎の時くらい使います。
髄膜炎が無ければ通常量でよいのかもしれません。

まとめ

北海道の乳牛は乳房炎の治療をしている→Listeriaに耐性が多いかも
というのはさすがに関与があるかは不明です。。
しかし耐性だったりアレルギーだったりでABPC以外でListeriaの治療をしなくてはいけない場面がままあります。

北海道で内科をするなら、「Listeriaの第2選択はST合剤」を覚えておくと役に立つかもしれません。

ではまた。

結論:北海道の酪農関連の食物はほんとうにおいしい

2022/10/23

個室と大部屋では個室の方がせん妄が少ない

スミヨシです。





せん妄っていろいろな環境に左右されると思います。

福知山で働いていた時に、


「この患者さん、前回もせん妄が強かったので個室にします」


と看護師さんに言われたことがあります。

まあ、意味合い的にはせん妄で他患者と接触すると大変なので個室にしておく、ということだとは思います。

ただ、個室だと周りに誰もいないしせん妄もしかして起こりやすい?

とか思って調べてみました。


ICU architectural design affects the delirium prevalence: a comparison between single-bed and multibed rooms 

(Crit Care Med.2014;42:2204-10.)


ブラジルのがん専門病院の単施設・Retrospectiveの研究

1253人のICU入室者、個室と大部屋の比較

個室と大部屋では患者層に違いがある気もしましたが、入院理由・臨床状態や、人工呼吸器、透析の使用などは同等となっています。

意識レベルの悪い症例や、認知症、もともとせん妄の既往がある患者は除外

CAM-ICUを用いてせん妄を評価


結果

163人(13.0%)がせん妄を起こした

個室vs大部屋:6.8% vs 15.1%

せん妄を起こすまでの日数に差はない


理由としては騒音が挙げられています。

騒音はせん妄を増加させる、耳栓はせん妄を減少させるといった先行文献が紹介されていました。

(Crit Care Med 2013; 41:800–809)

(Crit Care2012; 16:R73)


というわけで恥ずかしながら逆だと思っていました。

個室の方がせん妄は起きづらいようです。


当然経営のことや、コロナ禍での個室確保が重要ですので、なかなかせん妄リスクの患者を個室に、というのは難しいとは思います。

でも、せん妄の要素の一つとして部屋(騒音)が関係あると認識しているといつか役に立つかもしれませんね。


ではまた。


結論:正直、お寿司屋さんはカウンターではなく個室にしてほしいと思っている。

2022/10/21

【short】ポリファーマシーは過剰処方だけでなく過小処方にもなる

ポリファーマシー。

札幌の師匠は私に、

「5剤は合剤でもダメ、10剤は重罪」

という風なキャッチフレーズで、ここへの介入も総合内科医の仕事の一つ、と教えてくださいました。


つい、ポリファーマシーを学ぶと薬剤を減らす一方でやりがちなんですが、重要事項のひとつに、

「ポリファーマシーは過剰処方だけでなく過小処方にもなる」

があります。



ポリファーマシーは過剰処方だけでなく過小処方にもなる

(Br J Clin Pharmacol.2008;65:130-3. )


4剤以下処方患者 vs ポリファーマシー患者

過小処方割合は13.5% vs 43%(OR 4.8, 95% CI 2.0, 11.2)


ポリファーマシー患者は基礎疾患が多い、というのがあって、ACE阻害薬やスタチンの処方抜けが多い、とのことでした。

本当に必要か不明ですけどね。


ポリファーマシー患者は薬剤を減らすだけでなく適切な処方をという目をもてばさらにいい医療ができそうです。

ではまた。

2022/10/16

【症例】76歳女性 急性のふるえ

スミヨシです。

最近、研修医の勉強法をレクチャーする機会がありました。
それで、自分の研修医時代のスライドを見直す機会があったのですがまあ見るに堪えない内容でした。。

ただ昔の自分が面白い疾患に触れていたので、紹介します。


※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。




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76歳女性


来院12時間前に、急性のふるえ
就寝はできた。
起床時に再発し、時間外外来受診

問診は?対応は?
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毎朝研修医でカンファをしていて、その時に出した症例ですね。
懐かしい。


セッティングとしては、神経内科のいない病院で、なおかつ救急外来。
自分が研修医2年目のときの症例で、1年目の先生に相談をうけてどうしようという場面です。

本人はとにかく元気で、震えだけがある。
わからないなりに診ていくと両手の羽ばたき振戦があって自分の意思で止められない。
悪寒戦慄ではなく、熱も無い。
他の神経学的異常は無し。
生活や薬剤も特にいつもと変わりなし。

採血や、頭部CT、MRIも異常無し

で、カンファは疾患の答えよりもこういう症例でどんな鑑別で何を除外していくか、ってのを中心にやりました。
実際にはどうしたかというと、多分いますぐどうこうする疾患では無いな、と思いつつ、自院の内科外来に紹介してもどうにもならなそうなので、他院神経内科に紹介しました。


後日、その病院からそれはそれは丁寧な返事をいただき、アドバイスもいただきました。
他院の研修医にむけてこんなにいろいろと教えてくださるとは本当に今思ってもいい施設だ。。

返事の内容は

おそらくTransient myoclonus state with asterexisで、現在は改善しました

とのことでした。


Transient myoclonic state with asterixis

日本語では「一過性身震い様不随意運動」とか言うそうです。

ここでは以下TMA


症状

高齢者に突然発症する頸部や四肢のmyoclonusasterixis

基本的には良性で一過性。

眼球運動正常で意識障害を伴わない、脳波でてんかん波を示さない、他の神経障害を来さない、など特徴あり

(J Neurol Sci.1992;109:132-9.)

治療:クロナゼパムなど

具体的な量はわかりません、というか何を投与するかも含めて定まってないと思いますが、紹介先ではクロナゼパム 1回1mg 1日2回 4日間で治療していました。

たぶんジアゼパムでもよい。


実際の対応としては代謝性脳症や頭部疾患、感染症の否定になるでしょうか。

asterixisを起こす原因を消していくのもいいかもしれません。

慣れると検査なしで一撃診断なのかもしれませんが自分は採血と頭部CTはすると思います。MRIはまあ、余裕があればか。。


参照:asterixisを起こす原因

(Pract Neurol.2017;17:60-2.)


知ってると役に立つけど知らないとどうにもならないシリーズの一つだと思います。

自分は初期研修で出会って以来診てないですが、救急で診る事もあるでしょうから備えておきたいです。

ではまた。


結論:以下TMAって書いたけど以下一回も使わず終わった


2022/10/13

どんな認知症患者に対して梅毒を検査するか

スミヨシです

前回、術前スクリーニング採血で梅毒が出たときの対応を考えました。




今回も梅毒のことで。


以前、あるカンファで「treatable dementia」が取り上げられていました。
その時の勉強スライドで

「病歴に応じて梅毒やエイズウイルスを測定」

と記載がありました。

まあ、治療可能な認知症の鑑別の一つに神経梅毒があるので検査をすること自体には賛成です。

しかし医師としてエイズウイルスとの記載に猛烈な怒りを感じたとともに、traetable dementiaの人の梅毒の病歴ってなんやねん!と思い、プレゼンターに聞きました。
すると返事は
「性交渉歴ですかね」
とのこと。

いやいや、まじか。
高齢者の性交渉歴、いったいいつのものを聞くというのか。。

なんかそのスライドの参考文献もいかがわしい参考書からだったので、もうこれは自分で調べてみるか、と思い調べてみました。

どんな認知症患者に対して梅毒を検査するか


神経梅毒

ひとまずは神経梅毒から。
有病率:人口10万人あたり0.47-2.1例
症状:
早期は髄膜炎症状
後期の進行麻痺は前頭側頭型認知症を呈する
脊髄癆まで進行すると歩行失調など

→脊髄癆の無い後期神経梅毒を通常の認知症と鑑別するのは難しい。

日本神経学会 認知症ガイドライン

認知症ガイドラインの梅毒の検査についてみてみました。

「血清梅毒検査とHIV検査は,病歴上,診断が疑われる場合に実施する
「多彩な症状を示すが特に神経梅毒に特徴的な症状はない.そのため,認知症の鑑別として神経梅毒は常にあげられる
「詳細は『性感染症診断・治療ガイドライン(http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2011.pdf)を参照されたい。」

病歴上疑ったときに実施するといいつつ、鑑別に常にあげられるとか言っちゃうのはダブルスタンダードでは。。
また、診断が疑われたときに検査をする、の元文献にはそのような記載は見つけられませんでした。
(J Neurol Neurosurg Psychiatry.2014;85:1426-34)

一応性感染症ガイドラインも調べましたがやはりこのあたりの記載は見つけられませんでした。

米国神経学会ガイドライン

(Neurology.2001;56:1143-53. )

以下のような記載でした。
「梅毒の多い地域は、南部と中西部の一部の地域である。」
「これらの高発生地域を除いて、検査前確率の高くない認知症患者にスクリーニングすることは不十分であるように思われる。

流行地域以外でなければルーチンでなくてもいい?
日本では都市部の梅毒が多いかもしれませんが、

急速進行性認知症ではどうか?

(Neurol Clin Pract.2012;2:187-200. )

数週から数か月にわたり進行した認知機能低下をrapidly progressive dementia (RPD)と呼ぶ
17-27%が治療可能な疾患である


ギリシャのtertiary referral centerでのRPD

(Alzheimer Dis Assoc Disord.2009;23:337-46.)



2.9%が神経梅毒


RPDのスクリーニングでRPRやHIVは検査すべき
(Continuum (Minneap Minn). 2016 ;22:510-37.)

神経梅毒の除外無しにRPDの検査は終了できない
(Neurol Clin.2007;25:783-807)

RPDなら梅毒の検査を、という論調はいくつか見受けられました。
逆は見つからず。


まとめ
認知症全員にルーチンでは必要ないのかもしれない
ただ、急速進行性認知症の患者には検査した方がいいかも。


まあ断定はできませんが。。

なんでも見つけて治療したらいい、なんて乱暴なことはせずにある程度症例がしぼれるといいかもしれません。
個人的には70歳前半で認知症を起こしている患者とかが肺炎で入院したりして受け持った時には検査してます。

あと、例えば札幌は60年前までは遊郭があったりしましたし、パートナーがどうとか、昔そういう場所で働いていたか、とか問診では不明でしょうから、札幌のときは割と検査していました。

福知山では全然梅毒をお目にかかりませんでしたね(1年しかいませんでしたが)。
地域特性もあるのかもしれません。
むずかしい。


ではまた。


結論:札幌で働くなら、薄野遊郭の歴史はぜひとも学ぶべき。

2022/10/11

NSAIDsの蕁麻疹には分類がある??(再掲)

※この記事は2020年10月17日に掲載したものです。






スミヨシです。


なんかツイッターみてたら、アスピリンによる蕁麻疹はアレルギーではない、みたいな記載をみました。

ほんとかな??


UpToDateという、医師向けの教科書いらずの素晴らしいサイトがあります。

なんでも載ってます。

Google様とUpToDate様に聞くだけで医者やっていけるかもしれないレベルです。


彼らにアスピリンによる蕁麻疹のことを聞いてみました。

そしたら、一応独立項目ありました。。

NSAIDs (including aspirin): Allergic and pseudoallergic reactions

Pseudo-Allergic Reactions

⇀COX-1阻害

Allergic Reactions (Presumed IgE-mediated)

⇀IgEを介するアレルギー反応

(Ann Allergy Asthma Immunol2001 Sep;87(3):177-80.)


とまあ、ざっくりいうと、いわゆる普通のⅠ型アレルギーと、COX-1阻害をすることで起きる不思議な力による機序とがあるんですね。

ぱっと見た感じでは、両方ともひどい場合にはアナフィラキシーを起こすみたいです。

細かい分類とか、診断のためのチャレンジテストとか書いてました.

ただこの分類は臨床マネージメント変えない気がしてそっと目を瞑りました。。。


一応、Pseudo-Allergic Reactionsの機序であれば、セレコキシブみたいな選択的COX-2阻害薬は使用可能、ということかもしれません。

抗菌薬のペニシリンアレルギーといわれている人は、実は多くはペニシリンアレルギーでない、というのと似たような切り口に似ている?

ただ、今後一生ペニシリン製剤が使えない、という不利益は、積極的に介入したいですが、今後一生NSAIDsが使えない、という不利益は、ある程度許容される気もしています。年齢にもよりますが。。


とりあえず、最初の命題にもどると、アレルギー以外の病態もあるけど、アレルギーではない、といってしまうのは難しいし、あんまりそう言ったからって臨床には役立たないんじゃないかなあと思いました。



なんか少し時間とられた割に、あまり大した知識にはなりませんでした。

アレルギー専門医とかだと必要な知識なのかもしれませんが。。


でもまあ、医学ってこういう勉強の積み重ねなので。医学に、無駄な知識など一つもないので。いいこといった。


ではまた。



結論:私はエビアレルギーなのにカニはOKというのも無駄な知識ではないです。

2022/10/09

術前スクリーニング採血で梅毒陽性の時にすること

スミヨシです。


総合内科をやっているとたまに対応に困る症例を外科系から紹介いただくことがありますよね。

自分は師匠が感染症医なのと、札幌は割と高齢者の梅毒が多いのであまり気づきませんでした。

でも福知山にいったときに、術前スクリーニング採血でたまたま見つけた梅毒陽性の相談が結構皆困っていたなあ、と思いました。

そもそも術前採血で梅毒とかいらないんですがそれはさておき。

地方だとあまり梅毒の方、少ないんですよね。


術前スクリーニング採血でたまたま見つけた梅毒陽性


対応をシンプルにするなら

①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出

②病歴・治療歴を確認

③後期潜伏性梅毒として治療を検討

迷ったら後期潜伏性梅毒に準じて治療してしまうのがよいのかもしれません。


①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出

梅毒陽性といってもパターンがあります。

まずはどっちが陽性か確認です。

RPRはいわば活動性の指標で、TPHAは一度かかると一生陽性です。

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両方陽性→真の梅毒。RPR定量の確認

▾RPRのみ陽性→生物学的偽陽性(抗リン脂質抗体など)

▾TPHAのみ陽性→ごく初期か後期の感染 治療後 ライム病

 (レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版)

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RPR陽性なら定量も提出します。

真の陽性なら届け出もお願いします。

届出基準(厚生労働省)


②病歴・治療歴を確認

RPR8倍以上あるなら真の梅毒かもしれません

若年で陰部潰瘍や皮疹などあるなら1期や2期の梅毒でしょうが、今回のセッティング的に高齢者が多いでしょう。

無症状で感染時期も分からないことが多いとは思います。


1年以内に感染したなら早期潜伏期梅毒となりますが、病歴のわからない人は後期潜伏期梅毒として対応です

そして肺炎などの治療、たとえばオグサワの服用歴などあると同時に治療されているケースもあるかもしれません。抗菌薬投与歴も可能なら確認したいです。

よって、RPRが妙に低い人は治療後にあたるかもしれません。


認知症や神経学的・眼科的異常があるなら神経梅毒を考え腰痛穿刺を検討です。


③後期潜伏性梅毒として治療を検討

多くはここに分類されるのではないでしょうか。


▾ベンザチンペニシリンG(ステルイズ®) 240万単位IM,1週間に1回、計3回

▾アモキシシリン 1回500mg 1日3回 28日間

▾ミノサイクリン 1回100mg 1日2回 28日間 

のいずれかの治療がよいでしょう(日本性感染症学会ガイドライン)


ただ、アモキシシリン1500mg/dayは後期潜伏性梅毒では治療失敗の懸念があります。


そのため、プロベネシドの併用でなるべく血中濃度を高く維持する方法がとられます。

レジデントのための感染症診療マニュアルでは

アモキシシリン 2~3 g を 1 日 2 回経口。プロベネシド 500 mg を 1 日 2 回 経口。これを 4 週間。

と記載があります。


HIV患者のデータですが、

アモキシシリン 1回1g 1日3回+プロベネシド1回250mg 1日3回

でも治療が可能かもしれません。

(Clin Infect Dis.2015;61;177-83)


神経梅毒の患者でかつ発症時期不明の方は、

2週間ペニシリンG点滴→その後2週間内服治療

でもよさそうです。


治療指標はRPR定量で行います。

6-12か月でRPRが1/4倍以下になっていれば治療成功です。


まとめ

他科から「たまたま見つけた梅毒陽性」がいたら、

①RPRとTPHAを確認、RPRの定量提出

②病歴・治療歴を確認

③後期潜伏性梅毒として治療を検討

で対応すれば大きな事故は起きないはずです。


まあここまで書いてなんですが、全ての後期潜伏期梅毒を絶対治療した方がいいかは不明です!!

ある程度ADLが自立しているひとならいいですが、予後いくばくもない人がどれほど治療意義があるか、認知症のある人の神経予後の改善がみられるのか、なんて考えると治療のメリットが無いかもしれません。

そもそも検査をして見つけたからややこしいことになっているかも。


総合内科医は覚えること多いですね。

今回のは所属とは関係ない私個人の意見ですので、他の文献や、近くに感染症や梅毒そのものに詳しい医者がいればそちらに聞いてください!


ではまた。


結論:GIMカンファで疾患が分からない時には梅毒か結核か悪性リンパ腫といっておけば8割当たる


2022/10/06

札幌に徳洲会スピリッツを取り戻しに行きました

スミヨシです。

脱徳してから実に2年半ぶりに札幌の古巣に行きました。

ちょっとまた、自分の進路が揺らいでいますし、専門医取らないとかいうイージーに見えてちょっとまずい選択をしてる今後のキャリアに一抹の不安が無いわけではないので、初心を感じたいなとか、いろんな気持ちが湧き出ていたころでした。
いろいろと思い出してすごく良かったです。

名目は講義でした。
初期研修医のモチベーションを高めるレクチャーです。
なんだそりゃ。
色んな理由で全部は出せませんので少しだけ。










徳洲会の研修医、少なくとも私の古巣の研修医は、救急においては頼もしい限りだと思います。
多くは3-5年目に抱く全知全能感を2年目くらいに抱いちゃうんですけどね。
はやい。
最初のスタートダッシュとしては、かなり強いと思います。
市中病院の研修医の仕事は救急といっても過言じゃないですからね。

でもまあ、全知全能感って、専門分野にすすんでから抱く分には叩きのめされた後も次に繋がると思うのですが、2年目くらいに覚える全知全能感ってその病院のローカルルールを覚えて救急をスムーズにできる程度のものが多いですので次に繋がらないですよね。
空っぽになってしまう。
よそにいくと救急もそんなにしなくなるし、救急できることより専門分野の知識をまずは伸ばせ、が求められるんですよね。
内科当直に向かう度胸は全然違うのかもしれませんが。

まあ要するに、徳洲会にいくと救急などそこそこできるようになるのですが、非救急医の「救急がそこそこできる」はあんまり重宝されないぞ!残念だけど!
という内容です。
あとは休むとき休め、とにかく初期研修医を終わらせろ、みたいな。

Twitterで医学収集とか当たり前だと思いますが、まだまだこういうのセンセーショナルに聞こえるらしかったです。
勉強になりました。

その後は札幌の師匠と話したり、かつて働いた人たちと話したり、と大変刺激になりました。

自分は札幌に育ててもらった身なので何か力になりたいところなのですが、とにかく札幌遠いですね。
家族のこともあるので札幌でまた以前のように働くのは難しいかもしれない。
それがわかりました。

あと、飛行機経験値が下がっていました。
飛行機久々に乗りましたが、眠れなくなってました。
前は一瞬で眠れていたのに。


なんやかんやで少しだけ徳洲会スピリッツを思い出しつつ、あと半年は京都のために働こうと思うのでした。
ではまた。

結論:性懲りも無く、今勤務している病院はやめて別のところに行くことにしました。

2022/10/03

再発性胆管炎に対する内服予防抗菌薬

スミヨシです。


胆管炎を繰り返す患者さんは一定数出会います。

抗菌薬を投与すると改善するけど、退院してしばらく経つとまた胆管炎を起こす方をなんとかできないかなあ、なんて思うこともあります。


乳頭切開術とかできればある程度抑制できるかもしれないですが、全員にするわけにはいかないと思います。

再発性胆管炎に対する内服予防抗菌薬をしらべてみました。


Successful Treatment of Recurrent Cholangitis with Antibiotic Maintenance Therapy

(European Journal of Clinical Microbiology and Infectious Diseases.1994;13:662–5)


肝切除など行われ、再発性胆管炎があった14例の患者

予防的抗菌薬3か月以上使用したら、6例は再発なし、5例は再発頻度減少。
使用抗菌薬はST合剤、シプロフロキサシン、アモキシシリン


この分野のデータでは古いものかと思います。

suvival monthが21か月と短いので、今の医学に照らし合わせることができるかは不明です。


The role of ciprofloxacin in prolonging polyethylene biliary stent patency: a multicenter, double-blinded effectiveness study

(J Gastrointest Surg.2005;9:481-8. )


カナダの多施設の研究

悪性腫瘍による閉塞に対しステント留置された94人が対象

シプロフロキサシン 1回500mg1日2回 vsプラセボ


ステント閉塞

投与群 33%(14/44) vs プラセボ 49%(23/50)

有意差は無かった。

胆管炎

投与群 23%(10/44) vs プラセボ 42%(21/50)

死亡アウトカム

生存日数の中央値比較

投与群 140日 vs プラセボ 126日


ハードアウトカムの改善は無いが胆嚢炎は減らすことができる。

また1か月後のSocial Functioning(SF-36)も抗菌薬投与群がうわまわった。


そもそも末期がんと思われる患者が対象なので、生存日数はあまり差がありませんが胆管炎が減らせるのは入院を減らして自宅過ごす時間が多い、という意味では有利かもしれません。


そもそも予後の長い患者で有用かは不明です。

耐性菌が選択されて治療に難渋することも考えられるので、一般化するには難しいですね。

個人的には処方してないですが、投与するなら飲みやすさからLVFXにするかもしれません。


なかなか予防抗菌薬で感染を抑え込むのは難しいかもしれませんが、予後が短い患者には一考ですかね。

ではまた。


結論:胆管炎のことを胆道炎っていう奴が、脳外科に脳卒中とコンサルするのは怒ってるのは少し不合理を感じている