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2024/05/29

黄芩の入っている漢方は薬剤性肝障害を起こすかも

スミヨシです。



内科外来をしていると漢方がフィットする患者さんがいて、ついつい気軽に使用したくなる場面もあります。

しかしながら、漢方もやはり薬ですので副作用が気になる点です。


で、昔 宮古島にいたときによくわからない肝障害を起こしている人を研修医に相談されて、漢方も原因になる、さらに黄芩:おうごんが原因になるよね、と当時の自分はアドバイスしたのを覚えています。


しかし今になって、この知識の出どころが一切不明で、自分はなぜそんなことを知っていたのかよくわかりません。

ロストナレッジですね。もしくはオーパーツ。

黄金スペースシャトル。


ひとまず本当にそうなのか調べてみました。


黄芩と肝障害


SCUTELLARIAE RADIXとかで調べてみましたが、ぶっちゃけこの分野は日本からの報告が主なので日本語で検索する方が効率よかったかもしれません。

・北里大学の2000-2009年での漢方薬による肝障害21症例

21例中19例が黄芩を含むものであった。

ちょっと極端かも?

(日東医誌 2010;61:828-833)

・2014年11月から2015年10月に新規に黄芩を含む漢方を処方され採血データのある患者37名

4人(10.8%)が肝障害

(Tokai J Exp Clin Med.2022;47:94-98.)


これらをみていると、AST/ALTが上昇するパターンも、胆汁うっ滞型パターンもいずれも呈しそうです。

劇症肝炎までいくものはなさそうでしたが。


・日本の医薬品の有害事象データベース(JADER)を用いて、薬剤性肝障害に関与する生薬を分析した研究

相対オッズ比の多かった生薬は、黄芩 (8.63, 7.97–9.35) 、山梔子(8.43, 7.49–9.49)、生姜(6.75, 6.23–7.32)、半夏(6.47, 5.87–7.12)

など。

(Pharmaceuticals (Basel). 2023; 16: 678.)

ここでも黄芩が多そうです。


黄芩を含む漢方薬

そういうわけで、肝障害を来す漢方には黄芩が含まれていることが多く、逆に黄芩の肝障害の頻度もそれなりにありそうです。

調べた範囲かつ私が目にしたことのあるものを集めてみました。

日本漢方生薬製剤協会より

・黄連解毒湯

・柴胡清肝湯

・柴苓湯

・小柴胡湯

・大柴胡湯

・辛夷清肺湯

・清肺湯

・当帰散

・半夏瀉心湯

・防風通聖散


柴胡のはいっているものがちらほらありますね。


まあ実際こんなの覚える必要はなくて、薬剤性肝障害の患者が漢方を飲んでいたら黄芩が含まれるか調べる、といったところでしょう。

偽性アルドステロン症とムーブは同じかもしれません。


ではまた。


結論:GAROって絶対昔より黄金騎士感が増しすぎ

2024/05/22

【おもいで】水様便があった急性アルコール中毒の患者

スミヨシです。



アルコール中毒の患者、私はこれまで札幌、京都、大阪と働いてますので、ままみる、とくに救急外来でみることが多い疾患です。

ふと、思い出すことがあって調べてみました。


※症例は実際の症例を参考にデータや背景を変更してます。
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20歳男性 
午前2時か3時、飲み会でつぶれて友人の通報で救急搬送
具体的な量は定かでは無いが、たくさんお酒を飲んだらしい

JCS20 BP 95/60 HR 110 BT 36.5

採血、頭部CTでは意識障害の原因となるものはない。
外傷はなくFAST陰性
推定エタノール濃度は350くらい
嘔吐と水様便の失禁がある
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まあ、アルコール中毒っぽいですよね。
で、この時私はおもったわけです。

急性アルコール中毒で水様便って珍しいな」と。

正直、嘔吐まみれになっていたり、尿失禁のある方は多いですが、便失禁かつ水様便ってあまり見慣れない状況でした。

これはもしかして腸炎なのでは?
そして入院する腸炎は抗菌薬の適応かもしれない!

スミヨシ「便培養だしていいですか?」
こわい看護師さん「は?」
スミヨシ「いや、えー」
こわい看護師さん「は?」
スミヨシ「家族に電話します!!!!迎えにきてもらいますね!!!」
こわい看護師さん「いや帰れないでしょ」
スミヨシ「はい!!!入院で!!!」



正直、今考えても便培養は出さないよなあと思います。
この患者がカンピロバクターとして、治療対象になるかというと経過観察でしょうし。
検査有無にかかわらず接触予防でよいでしょう。
水様便が続くなら起きてから病歴聞けばよいですし。

ただ、急性アルコール中毒の患者は下痢をする、というパールは自分の中になかったので一応調べてみました。


急性アルコール中毒と下痢


とりあえず、UpToDate®の「Ethanol intoxication in adults」の症状の項目を見てみました。

なんとそこには「下痢」という言葉はありません。
でも、尿失禁や便失禁もない。。


Consensusにも聞いてみました。


んー
これは起こすです!

完!!

まあ、アルコール依存の人は慢性下痢起こすし、急性でも起こしていいわな。。

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次の日。

まあ、とくに波乱もなく改善し、退院になりました。
実臨床はこんなもんです。
劇的な診断がつくことは稀です。
でもそれでいいのです。
急性アルコール中毒の診断でよかったのだと思います。

ただ、本人曰く、

はじめて沖縄料理を食べた

という病歴がとれました。

ひやりとしました。
結果的には違ったのですが、ある疾患が鑑別から抜けている、と気づきました。


沖縄料理を食べた後の急性症状


そりゃまあ窒息だのなんだのあるかもしれませんが、やはりアナフィラキシーが鑑別ですかね(もちろん急性アルコール中毒も)。
とくに、沖縄料理のアナフィラキシーといえば、ジーマミ豆腐によるものがあがります。




ジーマミ豆腐、おいしいですよね。
もちもちしてて、粘り気があって、食べ応えがあって。

ところが、ジーマミ豆腐の原材料には落花生、つまりピーナッツが含まれます。

そういうわけで、沖縄県が啓発するくらいには、
ジーマミ豆腐によるアナフィラキシーは(私の中で)クリニカルパール化しています。


今思うと皮疹があったかどうかの確認とかしてないなあ。
血圧も低値だったし、消化器症状もあった点からはアナフィラキシーは鑑別だったかもしれません。

まとめ

・「アルコールを摂取したあとに具合が悪い」患者の中には急性アルコール中毒だけではなく、アナフィラキシーがいるかもしれない。
・とはいえ、急性アルコール中毒での水様便は珍しく無いかも

じゃあ、どんな時疑うんや!と言われると困りますね。
バイタルおかしい時とか皮疹ある時とか。
自分の言語化能力の低さに辟易とします。
水様便があるから疑うかといわれると実際微妙でしょうね。

いろいろ隠れてる可能性があるから、急性アルコール中毒は舐めるな、というのが本質かもしれません。

ではまた。

結論:ジーマーミとかジーマミーではなくジーマミと書く事で、逆に地元感が出る