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2023/05/19

Dressler症候群ってまだ存在するの?

スミヨシです。

心筋梗塞後のよくわからない発熱患者をコンサルいただいたことがあります。
その時に、

「Dressler症候群も鑑別にあがるのでは?」

という話題になりました。
実際には違ったのですが、そもそも鑑別に挙がってすらなかったので少し調べました。


Dressler's Syndrome 


今は、Postmyocardlal Infarctlon syndrome / Postpericardlotomy pericarditisとか言うんでしょうか。(UpToDate®ではPost-cardiac injury syndromes

特徴

・心筋梗塞後2-10週で発生する。
・持続的な低熱が出る。
・ 胸痛(胸膜炎性)がある。
・心膜炎が起こる(診察時に摩擦音が聞こえる)。
・通常は自然に解消する。
・コルヒチン、ステロイド、NSAIDsを用いて治療する。

治療に関して、UpToDate®では、
●アスピリン 1回750-1000mg 1日3-4回で開始し、3-4週間の治療。
毎週750-1000mg/dayずつテーパリング
●イブプロフェン 1回600-800mgを1日3-4回で開始し、3-4週間の治療。
毎週400-800mg/dayずつテーパリング
の記載。多分どちらか選択。



再灌流療法以前は心筋梗塞患者の1-5%にあった
201人の急性心筋梗塞後の患者で、発症者は1名であったがその患者は再灌流を受けていなかった。
(Cardiology. 1994;85(3-4):255. )

"Postpericardiotomy syndrome" 自体は心臓手術後に起きることが多い。
2005年から2014年の間に心臓胸部手術を受けたフィンランドの28,761人のうち、493人(1.7%)がPostpericardiotomy syndromeを発症した。
(J Am Heart Assoc.2018;7:e010269. )


もっぱら循環器内科ではなく、心臓血管外科の患者でみる疾患になったのかもしれません。

Dresslerは存在する?

Is Dressler Syndrome Dead?
(Chest.2004;126:1680-2. )

内容の真偽はさておき、Dressler症候群は再灌流にくわえ、ACE阻害薬やスタチン、β blockerによる影響も相まって「dead」したのでは?というもの

Dressler's syndrome: are we underdiagnosing what we think to be rare?
(BMJ Case Rep.2019;21;12:e227772. )

46歳男性の4日間続く胸痛と発熱
6週間前にARに対して開胸手術


エコーでは全周性の心嚢液貯留

この流れなのでDressler症候群の診断です。。
アスピリン・コルヒチンを投与したところ症状は改善した。
⇀近年減少してるので注意しましょう!とのこと。


まとめ(私見)

狭義のDressler症候群(心筋梗塞発症後2-10週で発生する胸膜炎)はおそらくPCIの影響でほとんど見なくなった。
広義の、"Postpericardiotomy syndrome" をDressler症候群が含むのならば、それほど多くは無いが稀に発生しうる。

心臓血管外科のいる病院での発熱コンサルを行っている人は知っておいてもよいですね。

ではまた。


結論:ドレスラーを検索すると「土レスラー」とかいうグラブルの土属性パーティのおすすめ編成が邪魔をしてくる

2023/05/14

帯状疱疹罹患時にはCRPは上昇する?

スミヨシです。


以前、良く分からない軽度CRP上昇→帯状疱疹が判明、という症例が話題になりました。

で、そもそも帯状疱疹はCRPがあがるのか、と議論になりました。

自分の感覚ではウイルス感染だし、多少上がるんじゃね?と思いましたが、一応文献を調べてみました。


帯状疱疹と炎症反応

Measurement of melatonin, indole-dioxygenase, IL-6, IL-18, ferritin, CRP, and total homocysteine levels during herpes zoster

(J Med Virol. 2020;92:1253-9.)

イランの皮膚科を受診した帯状疱疹患者 n=43 vs コントロール群 n=47 での炎症反応の比較

帯状疱疹群の年齢は65.70 ± 9.72

胸部20例(46.5%)、腰部8例(18.6%)、頸部5例(11.6%)、仙骨3例(7%)

胸部と仙骨部の両方の皮膚にHZの発疹が見られたのは7例(16.3%)

免疫抑制患者は除外



・各炎症反応は帯状疱疹群が有意に高い。
※1 µg/ml=0.1 mg/dlなので数字は割と低め。



痛みの重症度と炎症反応
・皮疹の重症度、痛みの重症度が上がるほど、CRPはあがる


帯状疱疹と抗酸化マーカー

Antioxidant and inflammatory biomarkers in herpes zoster

(J Med Virol.2022;94:3924-9. )

トルコの皮膚科を受診した帯状疱疹患者 n₌53 vs 対照群(HC群) n₌53

抗酸化マーカーの比較

帯状疱疹群の年齢は70.1 ± 8.0

胸部21例(39.6%)、三叉神経13例(24.5%)、腰部10例(18.9%)、仙骨5例(9.4%)、頸部4例(7.5%)

UA、TBIL、ALBを変動させる可能性のある痛風、DM、肝臓疾患、腎疾患、悪性疾患やステロイドuserなど免疫抑制剤を使用している患者など除外



・帯状疱疹群とHC群の各マーカーの比較。CRPはmg/dl

CRPは帯状疱疹群が有意に高い。


・皮疹の重症度と各マーカー

帯状疱疹の重症度が上がるとがCRPは高くなる。



・帯状疱疹後神経痛の有無でのマーカーの比較

帯状疱疹後神経痛のある患者はそうでない患者にくらべてCRPは高い。


まとめ

帯状疱疹は少しCRP上がる、1桁前半くらい。


このことを臨床に使えるのかな。。

局所の帯状疱疹とわかっている患者にたまたま採血をしたらCRP 10だったって際には、あれ?なんかプラスアルファがあるんじゃね?程度でしょうか。

ではまた。


結論:「愛情」と検索するとサジェストに「疱疹」がでる。

2023/05/04

【症例】85歳女性 食事量が少ない

スミヨシです。

ありがたいことに今年になってから、研修医の内科外来を指導するさせていただくことがあります。

teaching is learningとはいったもので、いざ教えるとなると、適当にしていた部分も勉強しなきゃなあという気持ちにさせてもらえます。

この前の症例の研修医の反応が印象的でしたのでまとめてみました。


※症例は実際の症例を参考にデータや背景変更してます。

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85歳女性
5年前に認知症の診断をうけた。そのあとから食事量が落ち、家族に連れられて受診。
本人は特に困っていない。活気が無いわけでは無く、食欲がわかない。
嚥下はできている。入れ歯も問題ない。
食事は1日に1食程度。BMI17程度。
杖を使用せずに屋外を歩行可能だが、金銭の管理はできず、隣の家の人の名前も思い出せない。
生来健康で、内科的疾患は高血圧のみ。
かかりつけで降圧薬のみ処方。採血は半年に1回行っている。


対応は?
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なんとなく、おそらくぱっと問診表をみて、何もせずに経過をみる方針にしていくパターンが頭に浮かぶ場面かと思います。
自分なら急いで検査をするよりも、家族や周囲が何を望んで受診されたかを傾聴することから始めます。
もちろん内科的疾患で無いにしても高齢者うつがあるので注意は必要かと思います。


救急なら明日内科受診してください、で済みますが内科外来はそうはいきません。
意外とこの、「明日○○を受診してください」が口癖になっている研修医が多いので、このあたりをうまく研修医が家族に説明できるようにトレーニングしたいと考えています。


で、研修医の先生にお話を聞いていただいたところ、食事量が少なくなっていて、内科の病気は今まで指摘が無いし、どうしてだろうと家族が心配になったことが受診理由だったようです。
で、案の定、がんスクリーニングをどこまでするか、採血は何を出すか困っていました。
でも、食思不振(食事摂取量低下)の鑑別に認知症が入っていませんでした
「年齢のせい」と何が違うんだといわれると少し弱りますが。。


「認知症だけでも食事摂取低下の原因になることがわかっている」ということを示すと、結構うまくいくかもしれない、ということを研修医と共有しました。
そのうえで、この分野が感覚的だったので、認知症と食事摂取低下のことが書いている論文を調べてみました。


Eating Behaviors and Dietary Changes in Patients With Dementia

(Am J Alzheimers Dis Other Demen.2016;31:706-16.)


PubMedなどを用いて、認知症患者の食生活や食欲の低下について述べた論文をあつめてレビューしてみた、という内容です。




この認知症のパターンごとに食事摂取量の落ちる原因や、過食の特徴などが記載されている表が面白いなあと思っています。

臨床で使いづらい点は、日本の特徴かどうかわかりませんが、認知症の原因疾患まで特定されていることが少ないからです。

あと、「高齢者の甘いものの過食はピック病を疑え」というパールがありますが、これをみると認知症を伴うパーキンソンや、PSPでも見られるようですね。

この論文を研修医に共有したのは、単純にどのパターンの認知症でも食事摂取低下がみられることと、認知症の後期にその傾向が多くみられるという2点を示すためですね。


あとは似たような内容で「体重減少」や「やせ」を主訴に来院されることもあります。

認知症と体重減少について調べたメタアナライシスがあるので、それも参考でしょうか。

(Curr Alzheimer Res.2021;18:125-35.)


まとめ

研修医にとって、「食思不振」や「体重減少」の鑑別に認知症が意外と入らないかもしれない。


まあ、言語化できていないだけで、年齢重ねるとだれしも食事量おちる、というのは言わなくても分かっている事だとは思います。。


今回は丁寧に説明を行い、認知症のこともあるので病気探しはしないこととなりました。

入れ歯も問題なく、問診上は嚥下機能も問題ない、とのことで、評価も見送りました。ここは意見の分かれるところかもしれません。


ではまた。


結論:認知症関連の論文をもってきたときに研修医が喜ぶのをみたことがない。。。