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2024/01/31

coma blisterについて

スミヨシです。

回診で、coma blisterの話題になりました。(最初この記事を記載時2021年で福知山にいました)

ただ、全くもって知らなかったので、調べてみました。
まあ、ぶっちゃけ言葉をしっている必要があるかは不明ですが。。。


coma blister


薬物や、神経疾患などで昏睡状態に陥った患者の圧迫部位などにおける水疱
昏睡状態発生後 48-72時間で発生し、1-2週間で消失する
横紋筋融解やAKIとも関与する。





どうやら、圧迫を直接受けていない部位にも生じることがあるようです。


小児にも生じる。
上記写真はバルプロ酸ユーザーで、ルートの刺入部だった部位に生じている。



褥瘡と同じ対応、それどころか経過観察でよさそうですね。

医学って知らなくても大丈夫なのに、知ってないと恥ずかしいのかな、なんて気取った言葉が多いんですよね。

でも僕はこれからこういう皮疹をみつけたら、
「coma blisterかなあ」
なんてつぶやきます。意味も無いのに。

否、その方が内科ガチ勢感が出るのです!!!!
ではまた!!!!!!



結論:「アンカリングバイアスにかかったのが反省点ですねー」でも内科ガチ勢感が出ることが知られている。

2024/01/25

リンパ嚢胞感染について

スミヨシです。

さて、リンパ嚢胞感染、という疾患はそもそも知名度があるでしょうか。
ほとんどの場合、産婦人科領域の疾患であると認識しています。

自分自身はこれまでに2例経験があります。
そのたび調べるのですがなかなかデータ不足な領域だと思います。


リンパ嚢胞感染


そもそもリンパ嚢胞感染とは?


子宮や卵巣の手術の際に、リンパ節郭清を行いますが、その合併症として後腹膜にリンパ液の貯留がみられることがあります。これがリンパ嚢胞です。(なぜかこの分野でのリンパ液貯留ばかり出てくる。)

これ自体は無症状で、いつしか消えることも多いですが、その部位に感染が生じえます。

残念ながらリンパ嚢胞感染です。





リンパ嚢胞感染があると圧痛や発熱が生じます。
鼠径部や腰の圧痛がある点が感染の有無を判別するのに使えるかもしれないと思っています(持論)。


頻度

婦人科がんでリンパ節郭清を行った患者 619人のうち
115人(18.6%)がリンパ嚢胞 
さらにそのうち27人(4.4%)がリンパ嚢胞感染を起こした


60mm以上のリンパ嚢胞が感染の危険因子

起因菌

大規模なデータは多分なさそうです。

以下は19例のリンパ嚢胞の検体の培養(10例は血液培養がとられ、2例が陽性)
大腸菌、腸球菌が多いですね。
真の起因菌か評価は難しいですが、意外とGPC clusterが多いんですね。
SSIとしての一面を反映しているのでしょうか。
自分が診た2例はいずれもStreptococcusでした。

日本の報告でもGPCが多そうです。Bacteroidesも検出されることがあるよう。

某資料にMycoplasma hominisの記載もありましたが出どころはわかりませんでした。
まああってもいいかもしれません。


治療

抗菌薬+ドレナージ

エンピリックにはセフメタゾールを選びたくなりますが、意外とGPC多いから悩みますね。
初手バンコマイシンは無いにしてもアンピシリンスルバクタムとかはありかなあ。。

治療期間もこれまた定まっていないです。

60mmを超える場合、ドレナージ+抗菌薬 群は抗菌薬群にくらべて平均治療期間が短かった(17日 vs 25日)
みたいなのしかなさそうです。

ドレナージが綺麗にできているなら2週間程度でもよいと思いますが、そうでなければ4週からそれ以上、って提案したくなっちゃいます。

まとめ

リンパ嚢胞感染はそんなにまとまっていないけど、ドレナージできるならしたほうがいいかもしれない。

ではまた。


結論:「リンパ嚢胞、因果応報」っていうとリズミカルでラッパーの気分になるけど、リンパ嚢胞ができるのが因果応報なわけはないので言わない方がいい。

2024/01/19

急性膵炎に対する尿中トリプシノーゲン2




スミヨシです。


いつからか、自分の所属していた施設で、急性膵炎に対して、もしくは急性膵炎を疑った際に、尿中トリプシノーゲン2を測定する研修医がしばしばいました。

自分が初期研修医の時には考えたこともない検査ですので、調べてみました。


急性膵炎に対する尿中トリプシノーゲン2について

どうも2020年-21年くらいで保険適応および検査が可能になったみたいです。

トリプシンの前駆体で、急性膵炎の初期から尿中にトリプシノーゲン2が排泄されるようです。


コクランのシステマティックレビューがありました。

血清アミラーゼ、リパーゼのcutoffを基準値の3倍、尿中トリプシノーゲン2のcutoffを50ng/mlとしたときに、

血清アミラーゼ:感度 72 特異度 93

血清リパーゼ:感度 72 特異度 89

尿中トリプシノーゲン:感度 72 特異度 90

とのこと。

(Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr; 2017(4): CD012010.)

ちなみに迅速検査が陽性になるのが50ng/ml以上っぽいです。


これをうけ日本の急性膵炎ガイドラインでも、「血液検査を実施できない医療機関において有用」と記載されています。

なんせ5分でできますからね。。

血液検査を実施できない施設で膵炎を診断可能もしくはすべきでは不明ですが。

「尿中トリプシノーゲン2が陽性で急性膵炎かもしれません」という紹介がささる転院先が近くにあるのなら一考ですかね?


UpToDate®では記載はあるものの、”However, additional studies are needed to determine their role in the diagnosis of acute pancreatitis."とのことで、まあ現在の情報で使用するかは不明というニュアンスでしょう。


で、正直いろいろ調べると丸太町病院のブログを見つけてしまいました。

「尿中トリプシノーゲン2はリパーゼに勝てず」なんてタイトルです。

おおむね同意です。ここまで書いといてなんですがこれ読めばいいと思います。


というわけで、採血、画像検査ができるならわざわざトリプシノーゲンの検査はしなくてもいいのかもしれません。


ERCP後の膵炎は拾える?

他に使い道を探してみましたがさすがにバリエーションはなさそうです。


ERCP後4時間で、腹痛のある患者の場合、尿中トリプシノーゲン2は感度60%、特異度99%、陽性的中率64%、陰性的中率98%

24時間後は感度100%、特異度98%、陽性的中率71%、陰性的中率100%

とのこと。

(J Clin Gastroenterol.2021;55:361-6. )

小規模な研究だし、ERCP後に腹痛あった時点で膵炎疑うようなあ、とか思っちゃいましたが、夜中とかだと使えるんですかね?

消化器内科の先生がどんなテンションで使用しているかは気になりますが。。


まとめ

・クリニックとか採血ができない場面では、大きな病院に転院する際に使えるかもしれない(維持コストとかは知らん)

・非消化器内科医はあんまり使わなくてもいいかもしれない。


ではまた。


結論:キモトリプシノーゲンとかキモトリプシンって名前的にトリプシンたちに嫌われてそう。

2024/01/15

研修医だけの診察は不要な検査が増える?

スミヨシです。


今の職場になってから少し忙しかったり、感染症に関するクリニカルクエスチョンが多くなったりで、商業誌を読む機会が減っているなあと感じています。


そんな中、積み本の中の一つを読みました。



中外医学社から、増井先生の「上級医が教えてくれないコト」です。


自分はこの先生のもとで働いていた経緯がありますので、あまり身内を褒めるのは良くないのですが、確かに今まで無かったタイプの本で、読み物として面白いなと思いました。


で、この内容の中で気になる部分がありました。


研修医だけの診察は不要な検査が増える?

「後輩を教育する時には、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか?」

という項があります。


"①一緒にベッドサイドへ行こう

上級医がベッドサイドに行くと、無駄な検査が減るメリットもあります。

研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない。"


いい内容ですよね。

どの学年になっても自分もベッドサイドに行く、というのは続けたいと常々思う所です。

ただ、その中で、「研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない」の部分が気になりました。

引用文献を調べてみました。


A Comparison of Laboratory Testing in Teaching vs Nonteaching Hospitals for 2 Common Medical Conditions


テキサス州の11の主要教育病院、12の小規模教育病院、73の非教育病院の細菌性肺炎または蜂窩織炎と主に診断された入院患者43,329人(女性20,493人、男性22,836人)が対象。

細菌性肺炎の場合: 主要な教育病院では 1 日あたり平均 13.21 件の検査が行われたが、非教育病院では 1 日あたり平均 8.92 件の検査。
蜂窩織炎の場合: 主要な教育病院では 1 日あたり平均 10.43 件の検査が行われたが、非教育病院では 1 日あたり 7.29 件の検査。

一応重症度は調整されておりますが、研修医のいる病院に重症患者や複雑な病態の患者が多い可能性がありますね。。

でもこれだけで「研修医だけの診察は不要な検査が増えるがスタッフドクターが診察すれば検査は少ない。」はちょっといいがたいかな。。

この文献の引用文献(Postgrad Med J.2017;93(1102):476-9. /JAMA Intern Med. 2016;176:708-10. )も見ましたがそんなに上記の内容に見合う記載はなさそうです。


救急では研修医の検査は多い?

じゃあまったくもってそんな話がないかというとそうでもなくて、救急ではこんなのがありました。


すっごく雑にまとめると、指導医のみが診るより、指導医のもと研修医が診る方が、入院、画像検査、救急の滞在時間が長い、というものです。
まあ、なんとなく理解はできますね。
コンサルするために画像とる、みたいなのは少なからず日本でも存在するかと。


まとめ

指導医がベッドサイドに行くことで検査が減るかは不明。

ただ、指導医がベッドサイドに行くことと患者情報や状態を共有することが重要という点には変わりは無いので、別にこの部分の修正は不要

ということでいい本ですので皆さま是非。


結論:こういうことすると献本は来なくなる



2024/01/07

猫ひっかき病の人に心エコーしたほうがいい?

スミヨシです。





明らかに病歴と身体所見が診断の頼りになる、総合内科医が好き好き疾患の一つに、猫ひっかき病がありますよね!



最近、なぜかあまり診なくなりましたが、

「よくわからない腋窩や鼠経の単リンパ節炎は動物暴露歴を聞け」

という師匠の言葉はなかなかに金言と感じています。


多くは軽症ですむ猫ひっかき病ですが、播種型など、ときに重症な場合もあります。

(敗血症性ショック,比較的徐脈を伴った猫ひっかき病の1例 J-GLOBAL ID:202302285305267006 )


で、起因菌はお馴染みBartonella henselaeが多いですが、これは培養陰性感染性心内膜炎を引き起こす菌としても有名です。


とするならば、猫ひっかき病の患者は心エコーしたほうがいいのか?という疑問が出てきたので調べてみました。


弁膜症や先天性心疾患患者、高齢者はエコーを行う?

調べた範囲ですが、

「明確にこのパターンの猫ひっかき病は心エコーすべし!」

というコンセンサスはないと思います。


UpToDate®には以下のように記載がありました。


A significant proportion (approximately 40 to 60 percent) of persons with Bartonella endocarditis have prior cardiac valvular disease, particularly when B. henselae is the cause of the endocarditis.

Multiple cases of Bartonella endocarditis have been reported that involved children, adolescents, and adults with congenital heart disease.


(UpToDate®:Endocarditis caused by Bartonella)

ざっくり、バルトネラの心内膜炎は、40-60%に弁膜症の既往があり、先天性心疾患をもつ患者で報告がある、といった内容です。

これらの既往のある患者はエコーの閾値は下がりそうです。


また、猫ひっかき病のバイブルの「Cat-Scratch Disease in Elderly Patients」もみました。

(Clin Infect Dis. 2005;41:969-74. )

これによると、イスラエルの免疫正常な猫ひっかき病患者846人中、9人がIE

60歳以上のOR 61.6( P<.001)と偏りがありそうです。

また、これらはすべてDukeを満たしていた、7人が既知の弁膜症あり。

なお、若年者は94.4%に局所リンパ節腫脹があったのに対し、高齢者は76.5%にしか存在しなかったようです。

どうやって診断したのやら。。


猫ひっかき病と感染性心内膜炎

実際に猫ひっかき病患者が感染性心内膜炎に進行するのか、という事例はあまり報告がありません。


From cat scratch disease to endocarditis, the possible natural history of Bartonella henselae infection

(BMC Infect Dis. 2007; 7: 30.)

43歳男性

19歳でS.aureusによる僧帽弁のIEを起こし、生体弁に(その後再度交換もしている)

僧帽弁逆流が増悪し、手術。

⇀発熱など無かったが、摘出した人工弁からB. henselaeが検出

dukeは小基準2つ

実はX-7月に野良猫にひっかかれた

X-6月には鼠経リンパ節炎を発症、病理では微小膿瘍を伴う壊死性リンパ節炎であった。


これはCSD→IEに進行した症例、なのかもしれないですね。もちろん当初からIEが成立していたけど症状が顕在化しなかったのかもしれませんが。


Visceral cat scratch disease with endocarditis in an immunocompetent adult: a case report and review of the literature

(Vector Borne Zoonotic Dis. 2014 Mar;14(3):175-81.)

免疫不全患者の肝or/and脾に病変のあるCSD患者

18例中6例が心エコー、1例がIE(このケースレポート自体は健常者のIE)


症例数が少なくてなんともいえないですが、IEでなくとも肝脾に病変を作るCSDがそこそこあるんだなあ、と思いました。

自分なら起因菌のよくわからない肝膿瘍や脾膿瘍と思ったらIEを検索するかもなあ、と思いました。


まとめ

よくわからん!文献的には猫ひっかき病の症候にIEを含めるか含めないかがそもそもあいまい。。

高齢者や弁膜症の既往や弁手術をしているCSDは心エコーの閾値を下げるかも。

そもそもそういった人たちはQ熱みたく積極的に治療を行ってもよいのかもしれない。

もちろんCSD患者がDukeを満たすようなら心エコーを行う


てなところですかね。

ではまた。


結論:日本では南に行けば行くほど猫ひっかき病が多い