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2022/09/29

SAHのストレス・インデックスは使える?(再掲)

 ※この記事は2021年2月に公開したものです


スミヨシです。


この前研修医の先生と、くも膜下出血の話になりました。
で、ストレス・インデックスを知らないと言われました。

先に言いますが、使わなくても臨床に影響ほとんどないですし、むしろ変に使わない方が救急ではうまくいくのかもしれません
私は一度だけ、札幌で研修医していた時に助けられたことがあって、恩があるのと、話のネタにはなるので研修医には話すようにしてます。


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症例
80代女性 
真夏に、道ですわっているところを通行者に発見され、救急搬送
救急隊からの入電内容は、「熱中症で座っていて立ち上がれなくなった高齢者」

こんな感じの方の搬送で、ひとまず部屋を冷やして、点滴でもするか、という感じ。
なんとなく軽症な触れ込みだし、まあ採血くらいするか、みたいな感じでした。

JCS 3 BP 180/150mmHg(多分計測できていない?) HR 120/min
BT 36.8℃ RR 24/min SpO2 98%

で、へんな意識障害もあるし、血圧よくわからんし、どうしたものかね、と思っていたところ、血液ガスをみると、K 2.9 BS 180でした。


ストレス・インデックス高値でもあり頭部CTへ。。
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だいぶ実際の症例からは病歴もバイタルもいじってますが、この症例はくも膜下出血でした。
まあ、正直、意識障害もあるし、頭部CTも腰椎穿刺もするだろ、と文面みると思いますよね。私もそう思います。

ただ、一度熱中症という触れ込みできた患者さんにこの患者はやばいですよ!とエンジンをかけるときに、研修医の言葉が経験豊富なベテランの看護師に届かないときもありますよね?

たいていは看護師さんの方がやばそうエンジンの精度が高いですし、研修医だけがわめいていることが多いです。
でもこのときは、札幌の熱中症は全員おかしいと考えよ、という師匠の名言と、直前にストレス・インデックスというものがあるのを勉強していて、さらにそのことを救急の先生がかぎつけて、かなりスムーズに診断・治療をすることができました。


ストレス・インデックス

ストレス・インデックスは

血糖/血清カリウム

の値で示すもので、頭痛がある患者で、ストレス・インデックス40以上なら、脳出血とかSAHの可能性あがるんじゃないだろうか、というものです。

調べても日本の文献ばかりですが、なんとなくこの概念がひろまったのは、国立国際医療研究センターから発表された、subarachnoid hemorrhage prediction score作成のものかと思います。(この論文自体はストレス・インデックスを使用はしていませんが。)
(日救急医会誌 . 2011; 22: 305-11)

頭痛患者で
BS>130
sBP>140
K<3.5
WBC>8,000

各項目1点で、
0点ならSAH除外可能
4点ならSAH 64.9%

というものです。


これ以降、SAHと、BS、Kをからめる論文が散見されます。
近年はスコアリングよりも重症度や予後の指標としての使用が多い気がします。

原理としては、SAHは強烈なカテコラミンリリースが発生するので、血糖が上昇、同時にKの細胞内シフトが起きるので、ストレス・インデックスが上昇するというわけです。

ルールアウトに使える可能性はありますが、あまりルールインには使えないのと、日本の救急でのCT撮像の閾値の低さを考えると、そこまで重要な指標ではないとは思います。
わたしの症例もストレス・インデックスは60を超えていますが、そもそも頭痛がないですし、ラッキーパンチでしたね。。


個人的には、このK低値は注意しており、よくわからない高齢者の主訴があるときに、低Kや血圧高値があると、もしかするとカテコラミンリリースがあるのかなあと思っています。

SAHは心電図で巨大陰性T波があったり、たこつぼ心筋症や肺水腫があったりと、異常な低Na血症起こしたりと面白いなあとは思います。
私が治療するわけではないので、脳外科の先生の苦労は知る由もありませんが。。。

あと、繰り返しですが、ストレス・インデックス0点なので、頭部CTいらないと思います、ってアセスメントするのも脳外科や救急の先生に怒られるかもしれないので注意しましょうね。。

表題の件に関して、私自身は、ストレス・インデックスは過信しませんし、DMの人に使えませんから、微妙なものだとは思っています。ただ、低K高BSがカテコラミンリリースを示唆しているかも、というのは知っておくといつか役に立つかもなあ、というスタンスです。

ではまた。


結論:この時期の救急やってる研修医に適当に血ガスとったら多分みんなストレスインデックス爆増してる



2022/09/26

【症例】25歳男性 喘息治療後のうつ症状

スミヨシです。

最近、徳洲会主催の勉強会に出ています。
内容的にはMKSAPを解いていくというものです。
まあ自分で解いた方が早いのですが、実際持っていてもあまり解かないんですよね。。
そういう意味でモチベーションになっています。

この前が呼吸器のブロックで、ちょうど喘息の問題を集めた回だったのですが、そこで出た問題が面白かったです。


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25歳男性

2か月前に喘息と診断
投薬・コントロール吸入開始後は症状が落ち着いている
何日間か気分の落ち込みがあり睡眠障害がある
PHQ-2によるうつ病スクリーニングは陽性

処方はベクロメタゾン吸入、サルブタモール吸入、モンテルカスト
vital、肺の検査は正常

対応は?
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最初問題を聞いたときは、

「吸入ステロイドでもステロイド精神病を起こすとかいう問題かな」

なんて考えましたが、ステロイド精神病はどっちかというとUpperなことが多いし、どうなんだろう、みたいな感じでした。


正解は「モンテルカストを中止」でした。
恥ずかしながらモンテルカストの副作用全然知りませんでした。


モンテルカストによる精神症状


モンテルカストはうつ病、自殺念慮、攻撃的行動を起こす可能性があるようですFDAでは2020年にうつ病を示唆する患者では中止するように呼び掛けています。

(JAMA. 2020;323:1236. )

日本の添付文書でも因果関係は不明と注意書きがありますが、うつ病、自殺念慮など記載があります。

機序を調べましたが分かっていないようです。
セロトニンやノルアドレナリン阻害か、という説があるようです。
(Pharma Res Per.2017;5:e00341)


まあ、正直一般内科医がコントロールするような喘息患者ではモンテルカストは不要かと思いますが、他で出された薬剤などで同症状があれば注意はしておきたいですね。
頻度は低いようですが、知っておくといいかもしれません。

ではまた。


結論:モンテルカストとモンテカルロとモンテ・クリストは多分語源一緒

2022/09/23

Listeria monocytogenes が血液培養から検出されたときに髄液検査をすべきか?

スミヨシです。


リステリアといえば髄膜炎で忘れてはいけない起因菌の一つです。

京都に来てからはあまり見ませんが、札幌で勤務していたころは割と血液培養から検出されていました。

おそらくは酪農関係で乳製品を口にする人が多いからか、と勝手に思っています。


で、おそらく非妊婦では腸管からの侵入が多いかなと思っているのですが、実際血液培養から生えた際に、髄膜炎をどこまで除外すべきか、悩ましいと感じています。

師匠が推奨していたので、自分は必ず腰椎穿刺を施行します。

ですがどうやら全国万人が皆そうしているわけでは無さそうです。


さて、リステリアが血液培養から検出された際に、髄膜刺激徴候が無かったとしても髄液検査はすべきでしょうか。




Listeria monocytogenes菌血症

リステリア菌血症は妊婦、高齢者、免疫不全者で起こる。

25%が先行症状として下痢を呈する。

3か月死亡率は45%

(Lancet Infect Dis.2017;17:510-9.)


ただ、このLancetの論文(通称MONALISA)やUpToDate®を見ても、「リステリア菌血症は髄液検査すべき」という記載はなさそうでした。

なんなら、菌血症のうちどれくらいが髄膜炎か、というデータも無さそうでした。


Googleに聞いてみた

シンプルに「リステリア 菌血症 腰椎穿刺」で検索してみました。

IDATENの記事(発熱・意識障害で受診した90歳代女性)などはヒットします。

日本の感染症の先生の記事では「リステリア菌血症では腰椎穿刺が必須」と論じているものが多いですが、その根拠はとくにありませんでした。

「Listeria bacteremia」などで2日くらい調べましたが少なくともこのことを論じている論文はなさそうでした。


Twitterに聞いてみた

さて、マジでヒットしないのでTwitterを検索してみました。

「Listeria bacteremia」で検索すると、1件、興味深いツイートが出てきました。




NYの感染症医だそうです。

まさにドンピシャ。


このツイートにいろいろな先生が返信を返していました。

結論としては

「人によって意見が違う」

ですね。

疫学が関係するのかもしれませんが、全例に腰椎穿刺する派と、症状がなければしない派がいました


多くの感染症医が意見が違うなら、結論を出しようがないですね。


結局どうする?

私自身は、「禁忌や特別な理由がなければ全例腰椎穿刺する派」です。

そして腰椎穿刺できなかった場合も、髄膜炎に準じて3週間治療をすべきか、状態をみて考慮した方がいいかも、なんて思っています。

以前教えてもらいましたが、

リステリア髄膜炎は入院時点では42%は髄膜刺激徴候がでません。




(Medicine.1998;77:313-36)

症状もなんだか亜急性に来ることが多い印象で、血液培養が生えた際には意識障害がなくても、後で神経症状が出始めて脳膿瘍がみつかる、なんてパターンもあります。

じゃあ治療が劇的に変わるか、というとそうでもないのですが(ゲンタマイシンをどうするかとかはありますが)、説明として髄膜炎があるので治療しっかりしましょう、とかは言えるかもなんて思っています。

もし検査しなくても後から症状出れば検査をする、というのがよいとは思います。

髄液検査ではなくMRIでもよいのかもしれませんが、それも結局撮りづらい人もいるでしょうし、ケースバイケースかもしれません。

リステリアの研究はブルーオーシャンかもしれません。


あと、感染源不明のリステリア菌血症は大腸がん探しのために、内視鏡をするか、も似たような議論になるかもしれません。

私は一般的なヘルスケアもかねて勧めるかなあ、と思っています。。


ではまた。


結論:アステリアという会社があるが多分由来はリステリア


2022/09/21

【short】コリンエステラーゼの使い道

コリンエステラーゼの使い道



スミヨシです。
コリンエステラーゼ、救急で測定している先生もいますが、役に立っているでしょうか。

札幌の師匠はコリンエステラーゼを採血フォローしている研修医には注意していました。
アルブミンを差し置いて、コリンエステラーゼだけを栄養の指標として使うことはかなり少ないと思います(アルブミンも真の意味で必要かは丁寧に考える必要がありますが)。

肝臓内科の先生なんかは使用しているかもしれませんが、それも本当に必要な人はごく一部だと思っています。


そんなコリンエステラーゼをはかる場面を聞かれたことがあります。
自分は最初聞かれたとき答えられませんでした。

皆さん答えられますでしょうか?




想定の正解は「有機リン中毒」「コリン作動性クリーゼ」です。


有機リン中毒は実際に低下しているのはアセチルコリンエステラーゼなのですが、まあ普通測れないので、コリンエステラーゼ低値で代用しますね。


コリン作動性クリーゼは個人的にはよくわからないネオスチグミンパッチ貼付をずっと続けている人なんかで起こるなあ、という印象です。
使用者がコリンエステラーゼ低値になっているだけで中止すべきかはわかりませんが、消化器症状や、流涎、はたまた呼吸困難など起こるようなら注意が必要ですね。

2022/09/19

不眠症患者に対するプロポフォールでの治療について

スミヨシです。

当直明けにTwitterを見てると、自由診療で不眠症に対してプロポフォールを使用しているクリニックがあって、話題になっていました。

もちろん悪い意味で。


いろいろ考えるなあと思いましたが、まあやはり調べないことには始まらないので、いろいろ見てみました。


不眠症×プロポフォール

Propofol-Induced Sleep: Efficacy and Safety in Patients with Refractory Chronic Primary Insomnia

(Cell Biochem Biophys.2011;60:161-6.)


28-68歳の少なくとも3か月続く、ベンゾや非ベンゾなどの薬物療法が無効の原発性不眠症患者103名

プラセボ群(n₌39) vs プロポフォール群(n₌64)

プロポフォール群は3.0g/L 2h持続点滴を5日間(ここの投与量の記載が良くわかりませんでした)


治療の朝と6か月後にLSEQというスコアリングで自己評価

また、ポリソムノグラフィーも使用し睡眠時間などもろもろ計測


結果

LSEQ

プロポフォール投与群で、入眠のしやすさ、睡眠の質、覚醒のしやすさ、覚醒後の行動の正確さにおいてプロポフォール投与群に改善がみられた

ポリソムノグラフィー

睡眠時間の増加(277.59±52.76min vs396.32±66.37min)

入眠後の覚醒回数の減少(10.12±5.62 vs3.38±2.14)


副作用

プロポフォール群で傾眠が4例、めまいが2例、軽い吐き気が2例

6か月後には有害事象なし


機序は割愛、ですが6か月後にも効果がありそうに見えるのは意外でした。

プロポフォール投与後も多くの患者は睡眠薬を併用していた、ということもあるので、データに本当にバイアス抜きの有意差があるのかちょっと微妙なのと、6か月以降の評価は不明なところと、n数が少ないので重篤な副作用が今回は無かったところの評価のしづらさはありますね。


Pharmacological interventions to improve sleep in hospitalised adults: a systematic review

(BMJ Open.2016;6:e012108. )

睡眠に対する薬剤介入のレビュー

・プロポフォールvsベンゾジアゼピンで睡眠に対する質の差は無し。中途覚醒のデータはプロポが少ないというものも、変わらないというものもある。

(挿管患者やICU患者が入っていそう。)


今回の議論は重症患者は入れない方がよいですね。


プロポフォールは不眠症治療によい?

で、タイトルに戻りますが、自分は反対ですね。

おすすめできません。


極論、眠れなくても死なないのです。

不眠症は治療可能であればすべき疾患ですが、命を懸けて治療せねばいけないものかは不明です。

もちろん薬剤が効きづらい方が多数いるのだと思います。

QOLに著しく響きます。

そのような方でもプロポフォールは確実にその場で睡眠可能です。

しかしながら血圧低下や窒息のリスクがあるわけです。

クリニックで使用した時に、まま起こるこれらリスクをどう回避できるのか、また、人工呼吸器や昇圧剤がどれほどそのクリニックで使用されているかを考えると万が一のイベントに対応できないのでは、なんて思ってしまいます。

6か月後のイベント改善といわれても、じゃあ1年後は、2年後は?

どれくらいの頻度でプロポフォールを投与するのか?


当然、保険診療ではないという点もあります。

国は認めていないわけです。

自由診療はなんでも自由、はよくないと思いますけどね。


マイケル・ジャクソン氏はこれで命を落としていますので。

Medical manslaughter

(Ir Med J.2013 ;106:26-7.)


GLP-1作動薬によるダイエットとか、筋トレにステロイドみたいなもんですよね。

効果があったとしても、実臨床で使用していいか、推奨されているかは、また別です。

多くはデメリットとコストパフォーマンスが度外視されていることでしょう。(そもそもメリットから怪しいものもあるが)。


それを分かったうえで、熱い気持ちで不眠症治療をされているなら、何も言うことはないんですけどね。


最後に件のクリニックのホームページを見てみましょう。

(https://light-clinic.co.jp/service/intravenous-anesthesia/)






なんでウリがダイエットなんや!!!!

値段も お高いな!!!!

さよなら!!!!


2022/09/17

化膿性筋炎について

スミヨシです。


いそうでいない、昔対応したことあるけど珍しいと知らずに診ていた疾患があります。

タイトルの化膿性筋炎です。

最近も診る機会があり調べてみました。


化膿性筋炎

(NEJM.2000;342:1614-5)


気候が発症頻度に関連しており、古典的には熱帯性(tropical)

ただ、非熱帯性(temperate)のものも様々な要因で増加しているらしい


トロピカルとかいう分類なかなかお目にかからないですね。。


リスクファクター

骨格筋は細菌に対して抵抗性であり、敗血症での筋膿瘍形成は稀である。

なんらかの素因がある患者が多い


外傷関連が多い

他はHIV、臓器移植などの免疫抑制

栄養失調

IV drug user(上記のCTはまさにIV drug userの症例のようです。)


UpToDate®によると化膿性筋炎の25-50%が外傷関連


微生物

S. aureusが最多

tropicalの90%およびtemperateの75%

血液培養は10-35%で陽性とのこと


治療

一般的な膿瘍と同じく、可能であればドレナージ+抗菌薬

S. aureusや溶連菌を意識してCEZ±CLDMとか、場合によってはVCMでしょうか。


実際には外傷後の疼痛発熱があると血腫として対応になって治療が遅れるかもしれませんし、内科が対応しないことも多いと思います。

外科からのコンサルとして対応する日をスタンバイしています。


ではまた。


結論:トロピカルとトロフィーには何か似通った語源的由来があると俺はにらんでいる。

2022/09/14

バンコマイシンによる好中球減少

スミヨシです。

Slackのデータ保存期間が90日間に短縮になってしまいました。
チーム内での論文共有をほとんどSlackで行っていたので、最近は泣きながら読み返して保存しまくっています。

で、昔、バンコマイシンの血球減少を学んだantimicrobeの資料が出てきたのでまとめます。




バンコマイシン誘発性好中球減少

疫学

バンコマイシンによる好中球減少症は2-8%
(Pharmacotherapy. 2002;22:783-8.)
(Ann Pharmacother. 2007;41:891-4. )

イベントの多くは投与20日以降に起きている。
1日投与量、累積投与量、VCM濃度高値などには関連していないが、7日以上の投与に関連している可能性がある。
(Ann Pharmacother. 2011;45:629-38. )

病態

antimicrobeの記載によると、抗体を介した好中球の破壊であり、免疫学的なものである、とのこと。

治療

基本はバンコマイシンの中止が必要。
上記のように抗体を介した免疫学的機序でおこるので、再投与すると再発する。
ケースレポートではG-CSFが有効化もしれない。
(Ann Pharmacother. 2004;38: 1855-9.)

テイコプラニンとの交叉反応があるかもしれない
(Ann Pharmacother. 2007;41:891-4.)



というわけで機序はともかく、バンコマイシンによる血球減少が起きたらあきらめて別薬剤使用、再使用は結構厳しいんじゃね?みたいに思っておけばよいかもしれません。
バンコマイシン投与時にはとにかく副作用起きないように毎日お祈りをしましょう。

ではまた。





結論:晩餐館の焼き肉のタレのこいつの名前は、バンコ

2022/09/12

気胸に対しての酸素投与は改善を早くする?(再掲)

※この記事は2021年2月22日に公開したものです。

Covid-19の気胸の方がちらほらいたので復習を兼ねて。


スミヨシです。

カンファで、気胸の人は酸素化が問題なくても酸素投与を行った方が治療がはやくなる、というのを聞いたので調べてみました。

UpToDate®での気胸に対する酸素投与

ひとまず医学はUpToDate®をみとけばだいたい大丈夫という説があるのでしらべてみました。
原発性気胸のページには以下のようになっていました。

Since patients with PSP have no underlying lung disease, oxygenation is generally within normal limits or low normal; thus, oxygen is administered to promote resorption of air (mostly nitrogen) from the pleural space. However, the optimal target fraction of inspired oxygen (FiO₂) or peripheral oxygen saturation (SpO₂) is unclear. 

SpO₂の目標値はよくわからないけど、胸腔の窒素の吸収が促進されるから酸素投与を行う、という内容です。
(Br Med J 1971;4:86)

まあ後述するガイドラインなどの、気胸に酸素投与したらいい、という内容の元文献は、すべてこの文献にたどりつきます。
1971年のものなので、再度検討してもよさそうかなあ、という印象はあります。

アルゴリズムのところには、重症ではない、2cm以内の小さな気胸では、酸素6L投与を、SpO₂>96%を目標に6時間行うとあります。
それで悪化なければ酸素offにしてもよさそうです。

続発性気胸のページでは、COPDの患者のことがおおく、慎重に酸素投与をするような記載でした。

2020年のNEJMの、自然気胸に対する保存的療法vsドレナージで、大きな差はないかもよ、という論文がありますが、ここでは、保存的加療の方は、SpO₂<92%で酸素投与開始されていましたが、そうでなければ酸素投与はされていなさそうでした。

(N Engl J Med 2020; 382:405-415)

BTSガイドラインでは続発性気胸の保存的加療は高流量の酸素を流し、24時間経過観察と書いていました。
(Thorax2010 Aug;65 Suppl 2:ii18-31.)

ドレナージ中の酸素投与

ドレナージ中にSpO₂保たれている人に酸素投与が必要であるかはUpToDateでは不明でした。
元文献の各国ガイドラインでも、あまりドレナージ中の酸素投与のことは記載が見つけられませんでした。あったらすいません。。
日本のは有料なのでわかりませんでした。。



実は個人的には気胸の方にたいして高流量の酸素投与ってそんなにしてなかったです。。
気胸を管理する場面もあまりなかったですので、勉強になりました。
実臨床では結構されているんでしょうかね。

若い男性の気胸なら、低酸素なくても6L酸素投与、とかでみててみいいかもしれませんし、血液ガス問題なければですが続発性の気胸の方やドレーン入れた方でも、投与は考慮かもなあと思いました。もちろんNHFやCPAPは気胸悪化のおそれあるので使用しない方がいいと思います。
まあ、それでも酸素化もんだいなければ一晩などでoffでもいいのかなあ?

pubmedでも調べましたが、酸素投与をした方が気胸の改善が早かった、という質のいいデータはみつけることができませんでした。。
タイトル回収できず。。
窒素吸収の話があるのでおそらく少しは早くなるとは思いますが。。


コロナで肺が荒廃→気胸、というのに最近であったので、注意してみておきたいです。
コロナの患者の呼吸増悪は肺塞栓も、二次性肺炎も気胸もあっていやになりますが。。

ではまた。



結論:「桔梗 犬夜叉」で調べると予測変換に、「嫌い」がついてくるのでちょっとかなしい。

2022/09/10

上部消化管出血による鮮血便や下部消化管出血による黒色便

スミヨシです。

・黒色便=上部消化管出血
・鮮血便=下部消化管出血


というのは医学生でも知っている知識で実臨床でもほぼその通りかと思います。
しかしながら世に例外はつきものです。

上部消化管出血による鮮血便

鮮血便のおよそ14%が上部消化管出血
(Am J Gastroenterol.1997;92:231-5.)

⇀大量の出血で鮮血便になる可能性がありバイタル不安定な鮮血便や起立性低血圧がある場合、BUN/Creの上昇は上部消化管出血も考慮か。
(UpToDate®"Approach to acute lower gastrointestinal bleeding in adults")

下部消化管出血による黒色便

上部消化管出血における黒色便は感度77-95 特異度81-87 LR5.1-5.9
⇀やはり基本は上部消化管出血を疑う
(JAMA.2012 Mar 14;307(10):1072-9. )

小腸、右側結腸の出血で黒色便になることがある。
(Dig Dis Sci.1995;40:1614-21.)s

消化管出血が疑われる上下部内視鏡で陰性の患者、黒色便のある患者は無い患者に比べて、小腸近位に出血源が見つかることが多い(56.1% vs 34.8%)
多変量解析では約2倍(OR 1.97, 95% CI 1.17-3.33, p = 0.010)
⇀じゃあ残りはどこから出ているんだ、となりますが。。
(Dig Dis Sci. 2018;63(5):1280-1285.)

おまけ:鉄剤、サリチル酸ビスマス(整腸剤、日本には多分ない)、いかすみ、ブルーベリー、ダークチョコクッキーなどで便が黒くなることがある。

とはいえ、これらを服用している患者の下部消化管出血が黒色便になるという記載はありませんでした。

じゃあ、これを実際に臨床に落とし込めるか、というとまあ非消化器内科医はあんまり考えなくてよいのかもしれません。
強いて挙げるなら鮮血便を起こす上部
消化管出血はやばいので、そのあたりは意識できるといいかもしれません。

この前久々にイカスミパスタを食べた後の自分の便をみてふと黒色便のどれくらいが上部消化管出血以外なのだろうと思ったのがきっかけで調べてみましたが、黒色便だけを取り扱ったデータはさすがに少なそうでした。。

ではまた。


結論:赤と黒で対比になっている最古のものは雛人形の右大臣と左大臣


2022/09/07

Listeria monocytogenes感染はアスペルギルス抗原偽陽性の原因になる

スミヨシです。

なんやかんやあってリステリアに思いを馳せていることがあったんですが、その時に見つけました。


Cross-recognition of aspergillus galactomannan caused by Listeria monocytogenes infection


アスペルギルス抗原 偽陽性といえば、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)やオーグメンチン(AMPC/CVA)なんかが有名です。


内容的には、61歳 白血病患者がListeria monocytogenes菌血症を起こしたがその際のアスペル抗原が陽性だったというもの。

TAZ/PIPC投与歴がありますが数日前にoffになったうえでの抗原陽性。




Listeriaの治療とともに抗原も陰性化。
ただ、肺浸潤影があり、アムホテリシンが投与されています。
ほんとに偽陽性でいいのか微妙ですが、臨床所見と経過からはListeriaとアスペルギルスの共感染は考えにくい、という結論になっています。

本患者のListeria株を遠心した上清液でも抗原陽性になったようです。

役に立つ場面があるかはわかりませんがトリビア的に知っておくといいことがあるかもしれませんね。

ではまた。

結論:Listeria monocytogenesの中にいる動物は?と聞かれるとほとんどの人がリスと答えるが、実はサイもいる。


2022/09/04

研修医は「症例当てクイズ」な総合内科カンファに出ない方がいいのでは?

※読み返しても私見たっぷりのグチだらけで、医学の役に立つ内容ではなくなってしまいました。悪しからず。



スミヨシです。

総合内科カンファ、GIMカンファという名前のカンファが全国いろいろなところで開かれています。
最近はオンライン開催されて、いろいろな場所で開催されているものに参加できるので楽しい限りです。

総合内科医に求められるものはどこで働くかによって異なります。
その病院に足りない部分の対応、社会的に難しい患者の対応、複雑なプロブレム患者への対応、外科入院患者の内科的プロブレムのフォローなどなど。。

いろいろ重要な役割があると思いますが、「診断が難しい症例への対応」はやはり求められている事が多いでしょう。
実際にこれが総合内科のある種、花形的役割なのだと思います。

だから、カンファの花形も必然的に「症例当てクイズ」のコーナーがメインになります。
当たり前といえば当たり前です。
これが一番面白いですし。

若手の総合内科医を増やすにはどうしたらいいかと言われたら、こういったクイズで釣る、というのは一つの戦略でしょう。

研修医向けの総合内科カンファ

全国の多くのGIMカンファの対象って、多分研修医では無くって内科ガチ勢に向けて作られている事が多いです。
難易度設定も高く、うなる症例も多く、「カンファ慣れ」していても難しい内容のものが多いと思います。

ただ、一部研修医・学生向けのものもあったりします。
昔あった「ドクターG」みたいな内容のものです。
この前、研修医・学生向けの某カンファを視聴したのですが、なかなか気に食わない内容でした

40歳女性の関節痛+浮腫

この時点で鑑別は?とプレゼンター
参加している研修医は半数が「RS3PE症候群」と答えていました。

「伝染性紅斑」「蜂窩織炎」と答えている人には何故そう思ったか聞いていましたがRS3PEと回答した人には「いいですね」とコメントしてスルー

そのあと次々情報が出ますが、プレゼンターは「伝染性紅斑」と「蜂窩織炎」の研修医にばかり話を振り、どこが違うかなどを聞きます。
さらっと蜂窩織炎ぽくはない、ということになってしまいました。

で、研修医から「浮腫の性質は?」とコメントされpittng edemaであると回答。
そこでプレゼンターが「RS3PEならどう?」と誘導。
なんかごにょごにょなって話が終了

鑑別が伝染性紅斑しかあがってないけど他には?と質問で、甲状腺機能低下とかリウマチとかあがりましたが、急性なので違う、で話が終了。

まあ、結果はパルボウイルスB19感染
Take Home Message「四肢むくみ・関節痛の鑑別にヒトパルボウイルスB19感染症を含める
めでたしめでたし

僕はこのプレゼンが終わったときにやるせない気持ちがこみあげてきました。

やるせないポイント

まあ、時間制限があったことで本来のプレゼンをする余裕が無かったのかもしれません。でもやるせない。

まず最初、「RS3PE症候群」が挙がったときに、もうやるせないですね。
なんでしょう。研修医がこういう疾患を知っている必要があるんでしょうかね?
むしろ研修医はcommonなものを挙げられた方がいいとおもうんですよね。

勿論、どこのカンファにいっても、実臨床でその疾患から考えないだろ、カンファだから言ってるだけだろ、って意見はまま出ます。
研修医がこういう病名を知っているのはすごいと思いますが、結局実臨床、初期研修ではなかなか役に立たないでしょう。
むしろ危険なものを除外していかなければいけないことをメッセージにしなければなりません

当てつけかもしれませんが、こういうドクターGとか疾患当てクイズのせいで研修医がよくわからない病名を知ってしまって情報過多になっていませんかね?

で、この意見を出した研修医に対してプレゼンターが無視するという最悪な展開でした
いったい何故この疾患は違うのか、どこが合っていてどこが合わないのか、そういうところでさらっと否定したらいいのに、肯定も否定もしないまま、無かったことにするのは良くないですね。
もしかしてプレゼンター、RS3PE知らないんじゃなかろうかとかあらぬ疑いがでるわけですね。

あと、急性の多関節炎で、なぜIEを考えないのか、否定するアプローチが大切だということをプレゼンにいれないのか、もうこれもやるせない。
スライドには「急性多関節炎の鑑別」の中に書かれていましたがなぜ本症例では違うのか、もっと強調していいと思いました。

てか関節炎からのアプローチの方向にもっていくなら浮腫の情報必要か?みたいなことも思っちゃうのです。

まとめると、このプレゼンターの先生、実際にこの症例見てないんじゃないかと思っちゃうわけです。
実際にプレゼンターがその患者を診ている必要は無いといえば無いんですけどね。
そしてプレゼン用に情報を圧縮しているんだと思いますし、当てつけだとは思います。

ただ、臨場感が無いというか結果論で疾患が当たったからよかった、ではなくて今後同じような患者が来た時に正しくアプローチできる必要があるんですよね。
似たような患者が来てもあの研修医たちはパルボウイルス以外鑑別に挙げられない気がするんです。
結局薄い内容のカンファになっちゃっている、なんて思いました。

実際は研修医向けにカンファ作るのが難易度設定だとか、メッセージとか、難しいと思うんです。
カンファに出席するような内科医は血液培養をとることはルーチンでやるでしょうけど、初期研修医にはそのメッセージが大切なんですよね。

逆にいうと、真に初期研修医向けの総合内科カンファってのは少ない・難しいので、個人的には初期研修医は総合内科カンファとか出ない方がいいかもと思いました。
出てもいいですけど、本当に初期研修医にためになるカンファは少ない、と知っておいた方がいいかもしれません。
割り切ってクイズに参加するにはよいと思いますけどね。

ではまた。


結論:初手に伝染性紅斑をあげた研修医は優秀すぎるのでこいつもカンファ出入り禁止にすべき

2022/09/02

【short】治療すべき無症候性細菌尿

治療すべき無症候性細菌尿
(Clin Infect Dis.2019;68:e83-e110. )


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① 妊娠に伴う無症候性細菌尿

② 泌尿器科手術前

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青木先生のレジデントマニュアルでは先天性奇形に関する小児のものも含まれていますね。

逆にここに無い無症候性細菌尿は治療しなくてもいい!(実際に治療しない、というのは難しい。。)